「目的」と「目標」の違いとは何か?
子供の頃からよく使われる言葉に「目標」と「目的」がありますが、その違いはご存知ですか?なんとなく雰囲気は理解できていても、その違いまで意識することはそうないかもしれません。「目標」と「目的」にある関係や違いについて解説します。
目次
辞書に書かれている目標と目的の違いとは?
言葉の意味は辞書で調べるのが一番です。では早速、目標と目的それぞれの意味を見てみましょう。
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「学級目標」「今月の目標」など、小さいころから見たり聞いたりする「目標」という言葉。漢字を分解すると「目指す道標」になりますが、辞書には何と書かれているのでしょう?
1 そこに行き着くように、またそこから外れないように目印とするもの。「島を目標にして東へ進む」 2 射撃・攻撃などの対象。まと。「砲撃の目標になる」 3 行動を進めるにあたって、実現・達成をめざす水準。「目標を達成する」「月産五千台を目標とする」「目標額」
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では、「目的」とはどのような意味でしょう?「使用目的」「目的地」など、こちらも良く見聞きしますが、「目標」との違いはあるのでしょうか。
1 実現しようとしてめざす事柄。行動のねらい。めあて。「当初の目的を達成する」「目的にかなう」「旅行の目的」 2 倫理学で、理性ないし意志が、行為に先だって行為を規定し、方向づけるもの。
いかがでしょう?二つの言葉の関係性や違いを理解できたでしょうか。
辞書の説明だけではいまいちパッとしない方も多いと思いますので、これから具体的な例を見ながらその違いと関係を理解していきましょう。
旅行気分で違いがわかる!目的はゴールで目標は通過点
「目標」と「目的」の違いについて、まずは一番わかりやすい例えで説明しましょう。
旅行でも普段の外出でも構いませんが、どこかへ出かけるというのは何かしらの目的があるでしょう。
たとえ「ただふらっと散歩」だったとしても、「出かける目的は?」と訊かれたら「散歩」と答えることができますし、それによって気分転換をしたいという目的があるのではないでしょうか。
そして、外出という行動には「目標」も存在しています。
行きたいところが「目的」でその為の経由地が「目標」
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例えば「東京から札幌へ旅行する」としましょう。これだけで目的地はゴールの札幌になっているのがわかります。
そして、移動手段を飛行機にした場合、まず羽田空港まで行き、そこから新千歳空港を目指すことになりますが、羽田空港も新千歳空港も目的の札幌へ行くための経由地でしかありません。
「札幌(目的)へ行くために、まずは羽田空港を目標に進み、次に新千歳空港を目標に飛行機へ乗り込む」
これでなんとなく目的と目標の違いが見えてきませんか?
記録?健康?走ることの目的は?そのための目標は?
それでは、もう少し具体的に「目的と目標の違い」を見ていきましょう。
ある男性がジョギングを始めました。健康診断で太りすぎによる悪影響が発覚したためで、健康を取り戻すためにダイエットをしようと思い立ったのでした。
このとき、彼がジョギングをする「目的」は明らかに「健康を取り戻すこと」ですね。
目的のために彼は目標を作った
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彼は「ジョギングという手段」を使い、「半年で-10kgという目標」に向かって走り続けました。
彼にとって「10kg痩せる」はあくまでも【目標】でしかなく、【目的】は「健康を取り戻す」だということはおわかりいただけるでしょうか。
目的に向かうためなら目標は追加も変更もできる
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3か月が経過した頃、彼の体重は7kg減っていました。つまり、あと3か月で3kg痩せれば「目標は達成できる」状況です。
そこで彼は「あと3か月で5kg痩せる」という新たな目標を立てます。つまり半年で12kgのダイエットに目標を変更したわけですね。
しかし、彼の目的は「健康を取り戻すこと」に変わりありません。
半年経過!目標達成で彼の手段は目的を果たした
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その後も彼は目標を達成するためにジョギングを続け、スタートから半年後に見事12kgの減量に成功しました。
これを周りの人たちは「半年で12kgも痩せたの!?すごいじゃない!」と評価しますが、彼にとっての目的は「健康」。
折角目標を達成しても、肝心の健康診断で異常と判定されてしまっては目的と違う結果となってしまいます。
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その後行われた健康診断で、彼は「異常なし」と数値的にも健康を取り戻すことに。
ここではじめて、「ジョギングをして健康を取り戻す」という目的を果たすことができたと言えるでしょう。
目的と目標の違いは「目標は目的を果たすためのもので、目標を達成すること自体は途中経過でしかない」ということになりますね。
目標は達成したが目的は果たせなかった歴史上の偉人
目標と目的の違いや関係性は歴史からも知ることができます。その中の1つとして、「三国志」の英雄・劉備をご紹介しましょう。
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三国志の英雄・劉備(161~223)
今から1800年ほど昔の中国は「漢」という王朝が末期的状態でした。そんな中で劉備は漢王朝の再興を目的に旗揚げをします。
劉備は30年以上も中国全土を転戦した後、50歳目前で一つの目標を設定することになります。
皇帝即位は目的と違い目標達成が生んだ経過のひとつだった
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西暦214年、劉備は益州(今の四川省一帯)を支配下に治め、その後も順調に勢力を伸ばしていきます。
さらに220年に目的としていた「漢王朝」が滅んでしまったため、翌221年に皇帝に即位。後世の人はそれまでの漢王朝を「後漢」と呼ぶのに対し、劉備が支配していた地域と漢の名を合わせて「蜀漢」と分けています。
しかし、劉備にしてみれば目的は皇帝になることではありません。あくまでも漢王朝の再興という目的を果たすための経過で、皇帝即位はやむなく採った手段のひとつだったわけです。
中国全土の漢王朝再興という目的は果たせなかった
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若き頃から荒廃した漢王朝の再興を目的とした劉備でしたが、蜀漢皇帝に即位して2年後の西暦223年、志半ばで世を去ります。
一介の庶民から一大勢力の長にまでなったことを考えれば凄いことなのですが、劉備自身は目的を果たせずに終わっています。
その目標があまりに大きいものだったため「目的=目標」のような関係になりがちですが、劉備の場合は目的を果たすためのステップとして目標を1つクリアしたに過ぎなかったわけですね。
名将といわれたプロ野球監督から目標と目的の違いを学ぶ
歴史上の偉人に続いて、身近で活躍をされた人物からも目標と目的の違いを学んでみましょう。
2004年から2011年までプロ野球・中日ドラゴンズの監督として采配を振るい、4度の優勝・1回の日本一・在任中の8シーズン全てでAクラスという「強竜時代」を築いた落合博満さんです。
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選手としても監督としても一流だった落合博満氏(1953~)
「オレ流」という言葉で知られるプロ野球の落合博満さん。選手時代には三冠王を3回獲得し、日本プロ野球初の1億円プレイヤー、初のFA権行使をした選手など、日本を代表する名選手でした。
監督となってからも任期の8シーズンで一度もBクラスになることなく、その個性も相まって常に注目を集めていました。
監督としての目標は「優勝&日本一」
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落合監督が常に目標として掲げていたのは「セ・リーグ優勝と日本一」でした。8シーズンで4回のセ・リーグ制覇を達成したことから名将と言われることも多い落合さんですが、ご本人は「4回しか優勝できなかった」と振り返ることがあります。
監督と球団に目的の違いはあったのか…
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落合監督は中日球団初のリーグ連覇を成し遂げた2011年に職を去りましたが、球団から「来シーズンの契約延長はしない」とされた解任に近い形だったと言われています。
チームが最も強かった時期に契約を延長しなかった背景には、落合監督と中日球団経営サイドの目的に違いがあったのではないかと考えられます。
落合監督はあくまでも契約内容であった「中日というチームを優勝に導くこと」を目標として、忠実かつブレずに任務を遂行しました。その結果として「勝つことが最大のファンサービス」という目的に到達するという信念も持っていたようです。
しかし、経営サイドの目的は「営業収益を上げること」であって「勝つこと・優勝すること」ではありませんでした。
目的と違いが生じる目標も目的を果たす役割になる!?
ここまでは目的と目標がほぼ同じ方を向いているお話をしましたが、次は「目標が一時的に目的と違いが生じることもある」という例をご紹介します。
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左のイラストは猫にエリザベスカラーをつけたものです。
御存知の方も多いと思いますが、エリザベスカラーは猫が傷に塗った薬や手術の縫合痕などを舐めようとするのを防ぐ役割で取り付けます。
猫にとっては傷を治す目的で傷口を舐めたいわけですが、あえてその目的を邪魔することを目標にすることで本当の目的である「傷の完治」を目指すわけですね。
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猫にしてみれば不愉快極まりない存在のエリザベスカラーですが、だからと言ってそれを外して自由にさせることが正しいとは限りません。
ゴール(目的)に早くたどり着くためには、あえて目的を阻害する目標に向かうこともあり得るわけです。
企業にも目的と目標がある!「ISO14001」のおはなし
次は個人ではなく企業が設定する目標と目的のお話です。
いつの頃からか「弊社はISO14001を取得しております」というような文言を見るようになりました。なにやら大層な何かなんだろうという想像はできるものの、一般市民には「それって何?」ですよね。
そもそも「ISO14001」って何?
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では、「ISO14001」とは何かを簡単に説明しましょう。
ざっくり言うと、企業がその事業を行うときに起きる環境への影響を把握し、悪影響にならないようにマネジメントをする。そのために目的と目標を明確化して文書にすることです。これを「環境マネジメント」と言います。
「ISO14001」は申請があった企業の環境マネジメントが妥当なものかを審査・認証する資格のようなもので、これを掲げることで「弊社は環境に対しての影響を理解し、取り組みを行っています」ということをアピールできるわけですね。
「ISO14001」の中にある目標と目的の関係性
では、「ISO14001」が目的と目標の違いというテーマにどう関係しているのでしょう?
「ISO14001」には数々の【要求事項】と呼ばれる項目があり、その中に「環境目的」と「環境目標」の項目があります。
まず、企業が環境に関するビジョンを明確にするために企業活動によってどのような影響が出るのかを分析し、その分析から「環境目的」というゴールを設定することがファーストステップとして求められます。
次に「環境目的」を達成するためにどのようなアプローチを行うのか「環境目標」を設定することになります。
つまり、「ISO14001」では『最初に目的を明確にし、それに付随して目標を立てる』ことによって企業のビジョンを描きやすくするわけですね。
因みに、この「ISO14001」の要求項目ですが、2015年度から目的と目標を「目標に一本化」しています。
何のために働くの?人生において必要不可欠な「働くことの目的と目標の違い」
今の日本において、ほとんどの人が「働く」という行動をしなければいけません。
では、働くことの目的とは何でしょう?人生において重要な「働く」という項目は自分のビジョン(未来像)を大きく左右することになるだけに、目的と目標の違いをしっかりと理解しておかなければいけないでしょう。
夢と希望の新入社!目標は一人前になること!?
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初めての人も何度目かの人も、新たな仕事に就くときは少なからず夢や希望を抱くものです。自分の特技を活かせる職場であればなおのことでしょう。
ここで多くの人が「早く一人前になること」を目標とするでしょう。しかし、それは働くことの第一目標に過ぎません。
まだ学生の方も既にお勤めをされている方も、「働くことの目的」とは何かを考えたことはありますか?
目的を見失った?仕事が人生のビジョンを狂わせるとき
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先程「夢と希望の新入社」と書きましたが、現実はそんなに甘いものではなかったりします。
理不尽な人間関係で心が病んでしまったり、「社畜」と呼ばれるような環境でプライベートのない過酷な労働を続けることも、今の世の中には沢山例が存在しています。
「うつ病」「ブラック企業」「過労死」「セクハラ・モラハラ・パワハラ」…。働く上で多少のストレスと向き合わなければいけないのは誰も同じですが、自分の健康や生命まで犠牲にして働くことは果たして「働くことの目的」に見合ったものなのでしょうか…?
会社の目標と働くことの目的が違いすぎる場合どうする?
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多くの会社には「ノルマ」や「営業目標」という企業側の都合に合わせた目標が設けられることが多いでしょう。そして、その目標を達成するために社員は懸命に働くわけです。
しかし、その社員にとって働く目的は「自分の人生を豊かにすること」に他なりません。
人それぞれに違いはあれど、人生のビジョンを狂わされるようなことがないように「働くことの目的」を見失わないようにしたいものです。
会社の目標が自分の目的とあまりにも違いすぎる場合、より自分のビジョンに見合う仕事場を探すのも大切な時代なのかもしれません。
究極の問題!人生における目標と目的の違い
最後は人における究極のテーマについて考えてみましょう。
「人は何を目的に生きるのか」と「人は何を目標に生きるのか」。この違いは何でしょう?
人は豊かに生きる手段を得るため多くの目標を設定する
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私たちは小さなころから様々な目標を達成することを繰り返しています。立つ・歩く・言葉を話すなど乳幼児からそれは始まり、ピアノやギターなど楽器の演奏、英語などの言語を話す、サッカーや野球などのスポーツ、絵を描くなどの特技をマスターするなどの高度な目標が設定されます。
それらの特技や技能、知識や教養は将来のビジョンを描き夢を追い求める上で非常に有用な手段となります。
どの手段を選択するかは個人の特性によるでしょう。例えば運動は苦手でも音楽の才能がある人、勉強は苦手でも車の運転は上手いし好きと言う人、絵を描くことに秀でている人など、それぞれが何かをきっかけとして最良な手段を見つけ、無意識のうちに夢のある毎日を過ごすための目標を定めるわけです。
例外ない人生のゴールに着いたとき、目的は果たせたかが決まる
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人間にとってのゴールは誰もが例外なく「死」です。不老不死の薬でも開発されない限り、それは変わりようのない人生の終着点ですよね。
そして、ゴールテープの前に立った時、自分の目的は果たせたのかが決まると言っていいでしょう。
素晴らしい人生だったと思えれば「生きることの目的」は果たせたでしょうし、辛い事ばかりでなぜ生きてきたのか分からないと思うなら自分の夢や目標を達成できなかったことから目的を果たすこともできなかったということでしょう。
人によって夢も違えばビジョンも違い、夢の実現に必要な手段も異なるのは当然のことです。しかし、人生のゴールは誰もが同じ「死」です。
そのゴールに到着する時まで人生の目的があり、我々は何かしらの目標を持って毎日を生きるわけですね。
大小に関係なく多くの目標や夢をクリアできた人が、「幸せに一生を終える」という究極の目的をクリアできるのかもしれません。
まとめ
「目標」と「目的」の違いについて、いくつかの例を使ってお話してきましたがいかがでしたか?
目的のために目標があり、その目標をクリアしていくことで自分が目指していたゴール(目的)にたどり着く。「目標」と「目的」にはこんな関係性があるんですね。