2021年10月05日公開
2021年10月05日更新
コロンビアの「メデジン」とういう町が色々ヤバい!治安や観光ガイドまとめ
2016年11月、コロンビアのメデジンで旅行中の一橋大学の学生井崎亮さんが強盗に射殺され、世界でも強盗・誘拐・殺人など危険なイメージが付きまとうメデジンですが、殺人発生率が2011年は世界14位だったのが今は圏外。ユニークな建築の観光都市を見てみましょう。
目次
「世界で最も革新的な都市」メデジン
2013年、米紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal、WSJ)とシティグループ(Citigroup)が実施した「最も革新的な都市」コンテストで、南米コロンビアのメデジンが1位に輝きました。
メデジンには、おしゃれな公立図書館、市民のスペース、アートギャラリーが貧民街の多い丘の上に作られ、スラム街と学校に設置したエスカレーターやロープウェイ(Metrocable)で貧民街の人が街に仕事に容易に行けるようになりました。2012年にはMetrocableが「持続可能な輸送機関」の賞も受賞しました。
そのようなメデジン市などの努力が「社会統合に貢献している」と評価され、インターネットによるアンケートで選ばれたとのことです。
出典: http://www.y-o-u.co.jp
コロンビアの地図
地図をご覧いただくと、メデジンは首都ボゴタの北西420㎞に位置しています。
都市計画
コロンビアの第2の都市であるメデジンが過去20年間に行ってきたことは、世界の都市でもほとんど例がありません。その結果、メデジンの殺人率は1991年から2010年にかけて80%近く急落し、治安が改善されました。
2004年にメデジンの市長に就任したセルヒオ・ファハルド氏は、建築家アレハンドロ・エチェベリ氏を採用し、都市計画を推進しました。
ファハルド氏は治安を改善に警察を増強し上から押さえつける方法ではなく、貧困層への教育やインフラの整備・充実に重点を置きました。
出典: http://seecolombia.travel
Metrocable
Metrocableはメデジンの貧困地域の人々のための交通網として採用されました。貧困地域は丘の上にあり、街へのアクセスが困難となり、それが治安悪化につながっていました。このMetrocableによって、人々は都市から隔絶されることなく、仕事で通勤や買い物などできるようになったのです。
このインフラ投資は、貧困地域の人が疎外させないという連帯感を重視した結果といえます。
ここからのメデジンの夜景も美しいです。
出典: http://www.colombia-politics.com
Metro medellin
メデジンでは最新式の電車が走っています。SUICAのようなチャージ式の磁気カードで改札を通ります。
出典: https://helixator.wordpress.com
巨大エスカレーター
メデジンの街と丘の上を結ぶ巨大エスカレーターです。多くの人の足となっています。
出典: https://www.pinterest.jp
自転車のシェアリングサービス「EnCicla」
メデジン市内の主要な駅や公園などでは、自転車の公共貸し出しサービス「EnCicla」の駐輪場が置かれています。ここでは無料で1時間、自転車をレンタルすることができます。
出典: http://localcode.org
公立図書館「El Parque Biblioteca España 」
貧困地域の人に本に触れてもらおうと、貧困地域に建てられた図書館です。都市部の市民も前述のケーブルカーで簡単にアクセスできます。
メデジンのランドマークともいえる独特の建築物です。
出典: https://www.domusweb.it
現代美術館(Museo de arte moderna)
元々は製鉄所だった地に2015年に建てられた美術館です。1300点の作品が展示されています。
出典: http://www.colombia.travel
植物園「Joaquin Antonio Uribe」
メデジン市民に無料で開放されている植物園。憩いの場となっています。
出典: https://es.wikipedia.org
スポーツ集合施設「Unidad Deportiva Atanasio Girardot」
非常に大きなスタジアムが立ち並び、サッカー、陸上、武道、器械体操、ハンドボール、水泳など、ほぼすべてのスポーツができるスペースがメデジン市民に提供されています。そうした場所ではそれぞれのスポーツに指導員がいて、安価にスポーツを習う機会も提供されています。
出典: http://www.mappery.com
メデジンの市内地図
地図を見ると、他の中南米諸国の大都市と比べても交通網が発達していることがわかります。
地図中央には空港もバスターミナルもあり、国内の移動もしやすい街だとわかります。
世界一「国民が幸せ」と感じている国 コロンビア
コロンビアといえば、かつてはテロや麻薬密売など、負のイメージが付きまといました。
W杯予選でオウンゴールをした選手が撃ち殺されたニュースもインパクトがありました。
ところが2016年にアメリカの世論調査会社ギャラップ・インターナショナルとWorkdwide Independent Network of Market Researchの共同調査となる世界幸福度ランキングで、1位にコロンビアが選ばれました。
(日本は26位)
国民性が楽観的という部分もあるのかもしれませんが、明らかに我々の持つ先入観とは状況は変わってきているようです。
出典: https://en.wikipedia.org
コロンビアの国旗
三本の帯によるミランダ三色旗だが、黄色が幅が大きく、旗の上半分を占めている。黄色はかつて産出し、スペイン人の目的であった金を示し、青は面する二つの海(太平洋とカリブ海)を意味する。赤はスペインからの独立の際の流血を表す。(WIKIPEDIAより)
出典: http://www.worldatlas.com
世界地図上でのコロンビア
地図を見ると、南米大陸の最北部に位置して、エクアドル、ペルー、ベネズエラ、ブラジル、中米パナマと国境を接しています。
コロンビアの首都はボゴタ。メデジンは第二の都市となります。面積は日本の3倍、人口は日本の半分以下の5千万弱となります。
言語はスペイン語です。
コロンビアの産業
コーヒーはお馴染みですが、他にはバナナやさとうきびなど農業や、石油、金、エメラルドなどの鉱業などの一次産業が主な産業です。
出典: https://coffeemecca.jp
コロンビアといえばコーヒー
酸味が少なく、バランスの良い味が特徴です。
メデジン・カルテル
出典: http://nairobinews.nation.co.ke
伝説の麻薬王 パブロ・エスコバル
世界最大の麻薬消費国であるアメリカをはじめ世界中でコカインを密売し世界有数の大富豪の一人に上りつめた。エスコバルの命令によって400人以上の警察官を含む人間が殺されたと言われている。自身はコカインはいっさい嗜まず大麻を愛用したと伝えられる。(WIKIPEDIAより)
1970年代後半、アメリカでコカインがブームになると、コロンビアでマフィア組織がコカイン生産を始めました。メデジンやカリを中心に動いていた犯罪組織でした。彼らは豊富な売り上げ資金を元手に、コロンビアの大手企業や銀行、新聞社などを次々と買収し、政治家や警察を買収し、応じない人間を暗殺して勢力を拡大しました。組織のボスのパブロ・エスコバル地元では貧困街に寄付するなど、絶大な支持を受けていました。
70年代はアメリカの流通網を白人が牛耳って利益が少なかったところ、米国内の流通までを自分たちで牛耳ろうとして、米国組織と殺し合いに発展しましたが、手を打って両国の組織の連合体になり組織を拡大させ、その連合体を「カルテル」と呼びました。
米国政府はコロンビア政府に命じ、掃討作戦に出ますが、メデジンカルテルは要人を買収しているため、情報戦では一枚上手で、FARCなどの左翼ゲリラと、双方の利害を一致させ手を組んで失敗させます。
しかし、コロンビア政府は徐々に攻勢を強め、幹部の度重なる投降や殺害、カリカルテルなどライバル組織との抗争激化もあり、組織は弱体化、1993年12月エスコバルはメデジンで、コロンビア軍の銃弾を受けて死亡し、麻薬戦争に一応の終止符が打たれました。
かつての犯罪都市から脱却したメデジン
かつて人口10万に対し260人が殺されるという世界最悪の殺人事件発生率だったメデジンの治安ですが、現在は日本ほどでは無いにしても、9割以上を削減しました。
政府や自治体、民間が一体となり、貧困街の住宅を立て直し、交通インフラや公共施設を作り、都心にアクセスできることで、雇用を生み出すなどの努力をしてきました。
定期的な収入を得た人たちが増えたことで、犯罪を大きく減らすことができました。
観光客も増え、ホテルの建設も次々に進んでいます。
メキシコの非営利団体『Seguridad, Justicia y Paz』が2011年から実施している世界各地の “殺人発生率” を調査し、数字の高かった上位50都市を「世界の殺人多発都市」として発表するものがあるのですが、2011年度には14位に入るほどの治安の悪さだったメデジンは2016年には圏外へと大きくランクダウンしています。
日本人観光客殺人事件
このように治安が回復したメデジンですが、2016年11月、日本人観光客の井崎亮さんが殺害されるという痛ましい事件が起こりました。
井崎亮さんは一橋大学の大学生で世界一周旅行中でした。
犯行現場はメデジンの閑静な住宅街で、決して治安の悪い地域ではありませんでした。
メデジン市内の日本人宿シュハリのオーナーの話では、実は日本での報道とは異なり、携帯電話は盗られておらず、タブレットは所有しておらず、現場の防犯カメラでは携帯は出していないことが確認されており、財布の入ったバッグを強奪されたというのが真実という話です。井崎さんに、フードをかぶった男2人が襲い掛かりバッグを盗んで逃走を図りました。それを追った井崎さんが犯人に追いつくと、どこからか現れた2人組の仲間が井崎さんに発砲しました。井崎さんは即死だったとみられています。
メデジンでは同様の事件は数件起きており、安全とはいえ、日本と比較したらまだ危険です。
貴重品は表に出さない、夜は男が複数でも出歩かない、危険地帯には入らない、強盗に遭ったら抵抗してはいけないという原則を守り、危険を回避することが大事のようです。
メデジンの日本人宿シュハリ
メデジンには日本人が経営する、伝説の日本人宿がありました。
シュハリ(守破離)というホテルで、内装がおしゃれで、自炊用のキッチンがいくつもあるなど、多くの日本人バックパッカーが悉くブログで絶賛するほどの宿でした。
シュハリではさらにコロンビア人と日本人宿泊者の交流会なども積極的に行い、イベントにはJICAの職員なども集まったり、宿を利用しないコロンビア人にも、宿に気軽に足を運んでもらうために、シュハリにはギャラリールームも併設していました。
シュハリのオーナーは「メデジンは麻薬の町というレッテルを貼られているので、これから新しいメデジンの情報を発信したい。当面の目標は地球の歩き方にメデジンのページを載せてもらうこと!」とインタビューで仰っていました。
ところが、日本人観光客強盗殺人事件をきっかけに休業し、翌年再開したものの、
危ない地域を聞かずにふらっと出ていってしまうお客様が居て、たくさんの宿泊者がいると「お客様に安全に楽しんで頂くことができない」と考えたユウスケさん本人が落ち着かなくなってしまい、閉鎖という道を取ったという。
現在シュハリは、コロンビア人向けの日本語教室を開講しているとのことです。
シュハリ周辺はメデジン市内でも安全な地域であり、地元の人も驚いたということ。
たまたま起こってしまった不幸な事件がきっかけで、伝説の宿「シュハリ」には泊まることができません。
メデジンがより安全な街になり、復活されることを願ってやみません。
メデジンの観光スポット
そんな事件もあり、メデジンは負のイメージが先行しがちですが、実はあか抜けた街です。
写真で見るだけでも行ってみたくなる観光スポットばかりです。
慎重に、常識的な行動に気を付ければ、問題はありません。
夜景の美しさにも定評があります。
出典: https://parquearvi.org
アルビ公園
サンタ エレナ村にあるアルビ公園へは、メデジンからメトロケーブルで行くことができます。ウォーキングやバイキング用のコースがあるエコツーリズム保護区があります。この場所では日曜日にファーマーズマーケットが開かれ、フルーツ、野菜、地元の手芸品が売られます。
出典: https://pixabay.com
ボテロ広場とアンティオキア博物館
地元の生んだ芸術家フェルナンド・ボテロの彫刻が多く展示される広場と博物館です。
出典: http://www.colombia.travel
エクスプローラパーク
体験型施設「エクスプローラパーク」は人類の発展に貢献してきた発明について学ぶことができます。
プラネタリウムや水族館などもあります。
出典: http://miexperienciacervecera.blogspot.jp
3 Cordilleras ビール工場
コロンビアのビールメーカー「トレス コルディジェラス」のビール工場見学です。中にはレストランもあり、ビールを楽しめます。
出典: http://www.colombia.travel
シスネロス広場
シスネロス広場は「光の公園」とも呼ばれ、ユニークな都市風景を作り出します:300本もの細長い反射光の柱。キューバ人のエンジニア、フランシスコ・ホセ・シスネロスにちなんで名づけられたこの公共スペースは、16,000平方メートルの敷地面積を持ち、敷地内には噴水や人々が座って休憩するためのベンチが設けられています。
出典: https://www.expedia.co.jp
エルカスティージョ博物館
ヨーロッパ風の建物を楽しめます。知る人ぞ知るメデジンの穴場スポットです。
出典: http://aventurecolombia.com
エルぺニョルの巨大岩とグアタペ湖
景色はぺニョル巨大岩から見たグアタペ湖です。
メデジンから1時間半の郊外にあります。
出典: http://mitsuko-yamada.com
何といってもメデジンの夜景
プエブリートパイサという場所から見るメデジンの夜景は絶景です。丘の上にはレストランや屋台があり、夜景を見ながら食事を楽しめます。
出典: http://tabichin.dtp.to
ケーブルカーから見る夜景も良い
ケーブルカーから見る夜景は、プエブリートパイサからみる夜景とはまた違った美しさがあるそうです。
メデジンのホテル
メデジンのホテルはインターコンチネンタルのような5つ星ホテルから1泊680円のホステルまで幅広くあります。
料金は4つ星でも1万円を切るホテルがあるなど、全体的に割安です。
出典: https://www.booking.com
チャーリーホテル
メデジンらしい、ユニークなデザインの建築の5つ星ホテルです。
メデジン名物
出典: https://www.degusta.com.co
バンデハパイサ
豆のシチューのようなもの、
ごはん、豚の皮と脂身のフライ?、チョリソー、アボカド、プラタノフリート(緑の巨大バナナのフライ)、ひき肉炒め、目玉焼きに、アレパというとうもろこしの粉で作った平べったいパンが乗っている定食です。
中南米はこのような1プレートの食事が多いのですが、日本人で言えばご飯に味噌汁といった、伝統的な家庭の味なのかもしれませんね。
メデジンのナイトスポット
メデジンの繁華街にはディスコ、バー、ナイトクラブなどは一通りそろっています。
夜は治安が一変する地域もあります。
ホテルマンや地元の人から地図にチェックを入れながらレクチャーを受け、意味が分からない時は曖昧にせず、安全な場所で行動してください。
Calle53は立ちんぼや怪しい店が並んでいるそうです。
ネットで検索すれば色々出てきますが、色々な意味で自己責任で。
メデジンのサッカーチーム
2016年コロンビアで発生したチャーター機墜落事故で多くの選手が事故死したブラジルのサッカーチーム、シャペコエンセと、コパ・スダメリカーナ(南米杯)決勝で対戦予定だったのが、ナシオナル・メデジンです。2016年のクラブW杯に出場したナシオナル・メデジンは、ショックからか準決勝で鹿島アントラーズに0-3で敗れて存在感を発揮することができませんでした。
クルブ・アトレティコ・ナシオナル以外にも、メデジンにはもう一チームインデペンディエンテ・メデジンが存在し、両者はライバル関係にあります。当然、サポーターも二分しています。
コロンビアはサッカーのほかに、野球も盛んでカブスのホセ・キンターナなどメジャーリーガーが何人も出ています。自転車競技、バスケも人気競技です。F1のモントーヤもコロンビア人です。
出典: http://atln2007.blogspot.jp
エスタディオ・アタナシオ・ヒラルド(ナシオナル,インディペンデンテ両方のホーム)
メデジンの生んだ世界的スター
メデジンからは各分野で世界的スターが誕生しています。
細木数子の番組にも登場したフアネス
出典: https://twitter.com
細木数子の番組にも出演
メデジン出身の世界的ミュージシャンのファネスが日本進出した際、筆者は彼のライブでステージから1mくらいの距離で見ることができましたが、中南米ならサッカースタジアムが満員になるような大スターです。
日本版発売のプロモーションで、細木数子の番組にも出演しました。
見たことあるぽっちゃり系作品のフェルナンド・ボテロ
ボテロといえば、日本でもお馴染みのぽっちゃり系作品です。
メデジンの街には、ボテロの作品を展示した広場があります。
出典: http://www.nikkanberita.com
フェルナンド・ボテロ
イラクで起きた駐留米軍兵士による刑務所でのイラク人収容者に対する暴行・虐待事件を題材にとりあげた作品を背後に。
石川遼のライバル カミロ・ビジェガス
出典: http://d.hatena.ne.jp
”スパイダーマン”ビジェガス
パットを読むときの独特のスタイルが有名です。
コロンビア出身初のPGAツアー優勝者になり、世界ランキングトップ10入りを果たした選手です。
日本人好みのポルノスター メラニー・リオス
出典: http://www.zimbio.com
美人産出国からのポルノスター
ポルノスターのメラニー・リオスもメデジン出身です。
愛嬌があり、日本人好みの雰囲気を醸し出しています。
メデジンへのアクセス
日本からメデジンへは直行便はありません。
飛行機の乗り継ぎでメキシコシティ、米国マイアミ、首都ボゴタなどから入ることになります。
メキシコからは4時間半、マイアミからは3時間半、ボゴタからは1時間で到着します。
陸路ならボゴタからバスで10時間弱です。
遠い地ですが、一度は訪れてみたい街ですね。