2021年05月10日公開
2021年05月10日更新
ウルトラセブン第12話とスペル星人について。なぜ放送禁止に?欠番解禁は?
ウルトラセブン第12話「スペル星人」が登場する回は、永久欠番となった幻の回として知られています。1967年12月17日の本放送や再放送時までは特に何の問題も起きなかったウルトラセブン第12話「スペル星人」が永久欠番とされるまでの経緯について調べました。
目次
放送禁止になった?ウルトラセブン第12話とは
ウルトラセブン第12話:「スペル星人」が登場する回は、「遊星より愛をこめて」という副題が付けられ、現在も永久欠番扱いで放送禁止になっています。
スペル星人が登場する「ウルトラセブン」シリーズとは
「ウルトラセブン」シリーズの基本的なストーリーは、同シリーズの原点ともいえる「ウルトラマン」シリーズと同様に、正義の味方の主人公(ウルトラセブン)が、巨大な怪獣や宇宙人に(巨大化して)対抗し闘い、最後には勝利して危機一髪で地球と人類の安全が守られるという、シンプルな勧善懲悪ストーリーで、ある意味子供向けの水戸黄門ともいえるものでした。
そんな"正義の味方"の宇宙人「ウルトラセブン」が、第12話「遊星より愛をこめて」で戦った相手が、「スペル星人」です。
ウルトラセブン第12話に登場するスペル星人とは?
「スペル星人」は、スペリウム爆弾の実験失敗で被曝し、放射能の影響でカラダに異常が生じた宇宙人という設定で、青白いカラダのところどころに火傷のようなケロイド状の黒い傷跡が残る、見るからに痛々しい姿をした宇宙人でした。
(「スペル星人」は、人間によく似た外見をしているので、それがかえって見るものに痛々しいイメージを与えることになったのでは?と想像します。)
また、「スペル星人」が青白いのは、血液が汚染されて欠乏しているという設定を強調するための効果を狙ったものだったのかも知れません。
ウルトラセブン第12話登場の「スペル星人」のスペック
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の「スペル星人」の項によれば、「スペル星人」のスペックは下記のとおりです。
・身長:1.7メートル - 40メートル ・体重:60キログラム - 1万5千トン ・出身地:スペル星 ・スーツアクター:中村晴吉
ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回のあらすじ
「スペル星人」は吸血宇宙人だった
スペリウム爆弾の実験失敗で被曝して放射能の影響でカラダに異常をきたした宇宙人…そんな「スペル星人」がはるばる地球にやって来た目的は、地球人の血液を集めるためで、自分(達?)の被曝して汚染された血液の代わりとして、人間の血液に目を付け、それを奪って治療するためにやってきていたのでした。
(※自分(達?)と書いたのは、スペル星人で被曝したのは、ウルトラセブン第12話の中で登場したスペル星人一体だけではなく、スペル星という星全体が被曝して汚染されていたという設定だからです。)
具体的なやり方(採血手段)は、地球人の血液を吸い取って奪う、怖ろしい機能がある腕時計(風の道具)を、たくみに人間の男性に化けることで女性に手渡し、彼女たちに装着させて血液を奪う、というもので見事に成功していました。
地球人の血液を奪う手段に腕時計風の吸血道具を使用したことを見ても、大掛かりなプロジェクトとして周到な準備をして人間の血を奪いにやってきたことが伺えますね。
そんな「スペル星人」の悪巧みが露見したのは、原爆病に似た謎の貧血症状で倒れた女性の全員が、地球上には存在しないスペリウム金属という物質で作られた腕時計を身に付けていたことがキッカケでした。
さらに、ウルトラ警備隊のアンヌ隊員の旧友である「山辺早苗」が、恋人の「佐竹三郎」からこの謎の腕時計をプレゼントされていたことで、佐竹の本性(地球人の血液を奪いに来た「スペル星人」)が露見することになります。
ちなみに、当初「スペル星人」に狙われたのは女性でしたが、途中で女性より子供の血液の方が純度が高いことが判明し、ターゲットを女性から子供に変更し「ロケットを書いて宇宙時計を貰おう」というキャンペーンを企てたりもしています。
また、もともとのシナリオ段階では「スペル星人」は甲虫型の宇宙人という設定で、その後の製作段階で人類に似た設定に変更されたんだそうです。
もし、当初の設定のまま「スペル星人」が甲虫型の宇宙人として制作されていたら、後に「放送禁止」や「永久欠番」という事態を招いたりしなかったのかも知れません。
昆虫が被曝しても今の地球では誰も問題としないですから…
さらには、包帯巻のミイラ姿で描かれた「スペル星人」のデザイン画の存在も噂されていたりします。
ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回が欠番になった経緯
ウルトラセブン第12話「スペル星人」が登場する「遊星より愛をこめて」の回が欠番になり放送禁止扱いになった経緯について、分かりやすく説明します。
ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回が、テレビで初めて放映されたのは1967年の12月のことですが、
その際、放映が行われてもとくに視聴者から苦情が殺到するようなことはなく、何のトラブルも発生していません。
また、その後行われた再放送でも、とくに視聴者からの苦情が放送局に寄せられるようなことはありませんでした。
問題は発生したのは1970年になってからでした。
事件の発端となったのは、「小学二年生」の付録として作成された「かいじゅうけっせんカード」です。
このカードの「スペル星人」の部分に、「スペル星人・ひばくせい人・(おもさ百キロ~1まんとん)・目からあやしい光を出す」という文言が説明文として記載されました。
(※"ひばく"は被曝の意)
この付録の「ひばくせい人」という文言を見かけた女子学生が、このことを自身の父親に報告し知らせます。
この女子学生の父親は、被爆者関係団体の関係者で、「小学二年生」の編集部に抗議文を送りました。
この後、この事件が新聞各社で報道され抗議運動は全国的な動きになりました。
そして、1970年10月21日に円谷プロが謝罪の意を表明して、今後「スペル星人」に関する資料を公開しないことを発表しました。
また、円谷プロの謝罪を受けて、出版各社も今後「スペル星人」を取り扱わないこととしました。
これ以降、ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回は、欠番扱いとなり映像・出版物共に封印されることになってしまいました。
以上がウルトラセブン第12話「スペル星人」が登場する「遊星より愛をこめて」の回が欠番になった経緯です。
つまり本放送が放映されて約3年間は放送禁止になることもなく再放送も普通に放映されていたということになります。
また、欠番扱いとなるキッカケとなった「ひばくせい人」という文言を作成したのは、円谷プロとは無関係の「小学二年生」という雑誌の付録の作成担当者でした。
つまり、円谷プロが一切関知しない場所で作成された文言が理由で、「スペル星人」は欠番扱いとなり映像はもちろん出版物も封印されることになってしまったことになります。
ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回の評価
肝心の、ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回の評価はどうだったのでしょうか?
番組の視聴率を参考にすれば、この回の視聴率は、1967年12月17日の本放送では"32.8%"もの高視聴率をマークしました。
ちなみに、この数字は、ウルトラセブンシリーズ全49話中なんと第4位の高い視聴率を記録していました。
ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回の映像流出
解禁?ウルトラセブン第12話が出回り視聴可能に!
永久欠番となったハズの、ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回ですが、1980年代の初頭~半ばの間、この回の海賊版映像が流出し、マニアの間で広く出回り、もし見たいと思えば視聴可能な(解禁?)状態がしばらくの間続くことになりました。
しかしDVDではなくダビング録画が繰り返されたビデオテープなので画質は劣化したものが殆どだったそうです。この頃はまだDVDが出回ってなかったんでしょうね。
(※ちなみに、流出した海賊版のビデオテープは、1本10万円前後という値段で販売されていたらしいです…。)
また、ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回の海賊版映像の流出元は不明とされています。
幼女誘拐殺人犯とウルトラセブン第12話「スペル星人」の関連
ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回の海賊版映像の流出元は不明とされていますが、あの幼女誘拐殺人犯の「宮崎勤」との関連が取り沙汰されたこともあります。
具体的には、
・ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回の海賊ビデオを流出させたのは幼女誘拐殺人犯の「宮崎勤」では?
・幼女誘拐殺人犯の「宮崎勤」は、ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回の映像と引き換えに死体ビデオの製作を依頼されたのでは?
という俗悪な噂以下のレベルのものですが、この噂がウルトラセブン第12話「スペル星人」の回に取り付いた負のオーラを強め、さらに謎めいた存在にした感は否めないと感じます。
ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回の海外版DVD
ウルトラセブンシリーズは、海外でも人気があり海外で放映された第12話がDVDに収録されて販売されることもあったりします。
以前、ハワイで第12話が放映された際に海賊版DVDが出回ったことがありました。
このDVDは、上で紹介した(ダビング録画が繰り返された)海賊版ビデオテープに比較してDVDなので画質も綺麗なものでした。
ただし、北米盤のウルトラセブンDVDBOXが販売されたときには、第12話はやはり収録されていませんでした。
ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回の解禁の可能性は?
1980年代の初頭~半ばの間には海賊版映像が流出し、もし望めば視聴可能な(解禁?)状態が続いた、ウルトラセブン第12話「スペル星人」の回ですが、放送禁止が解禁される可能性は無いのでしょうか?
解禁を望むファンは決して少なくないと思われますし、1本10万円前後というバカげた値段で売買されることも、放送禁止が解禁されれば無くなります。
ちなみに「怪獣ウルトラ図鑑復刻版」が復刊された際にも、第12話は欠番のままでした。
じつは、円谷プロは2009年に経営者が変わり、放送禁止となった当時と環境も変化したことから、封印が解かれ解禁の可能性もあるのではと考えたあるジャーナリストの方が、円谷プロに改めて解禁予定について取材をしていますが、同社の返答は、
「1970年当時の当社発表内容から方針の変更はございません。」
というものでした。どうやらスペル星人が解禁され再び日の目を見る機会は望めないようです。
ただ、「スペル星人」のフィギュアは今でもヤフオクなどで出展されていて入手可能です。(値段は198000円ですが…)
まとめ
ウルトラセブンは、M78星雲から地球観測に来た恒点観測員340号で、「スペル星人」のような侵略の危機にさらされた地球を守るため地球に留まってくれました。
人類にとってはありがたい救世主ですが、彼の故郷の星にもそれなりの問題(被曝や放射能のような)があったりするのかな?などと考えてしまいます。
もし何の問題もないとしたら、逆にウルトラセブンが、もの凄く薄っぺらな存在に感じます。
「スペル星人」の悲哀を感じながら人類のために戦ってくれる…ウルトラセブンはそんな存在でいて欲しいです。