教育格差の解決策はあるの?日本の原因や子供への影響も解説!
今はちょうど通信簿の季節ですが、教育格差という言葉を耳にしたことはありませんか。もしかすると、子供の学力が伸び悩むのは教育格差が原因かもしれませんよ。原因・解決策・おすすめの本などを紹介しますので、日本の教育格差について今一度考えてみましょう。
目次
深刻な日本の教育格差問題!
日本では教育格差が深刻な問題といわれています。日本の教育格差は何が原因なのでしょう。また、具体的にどのような対策を必要とするのでしょうか。子供への影響面も踏まえて紹介します。
そもそも教育格差とは?
そもそも、日本の教育格差とはどういったものなのでしょうか。日本の教育格差の現状に加えて地域格差や経済格差による影響面を紹介していきます。
教育格差の現状
教育格差という言葉は教育の違いや差を意味します。教育格差は途上国だけではなくて日本が抱える大きな問題です。また、教育格差は単体で成り立つ訳ではなく、別の格差と影響し合って新たな問題勃発の原因となるなど、複雑に絡み合うことで起こっています。それ故、教育格差単体の現状を一言で表現するのは非常に難しいのです。
地域格差によるもの
子供の学力が地域により異なるケースが見受けられます。地域格差とは地域による違いや差を意味する言葉です。教育格差と地域格差には関連性が見受けられます。そのため、教育格差と地域格差を切り離して考えるのではなく、原因を突き止めて対策を練り、解決へと向かわせる必要性を帯びているといえます。
経済格差によるもの
貧困世帯の子供たちは小学校低学年の内には大きな学力差が見受けられなくても、中学年・高学年と学年が上がるにつれて貧困世帯ではない子供たちとの間に学力差が生じるといわれています。なお、経済格差による教育格差の原因は子供にあるとはいい難く、様々な原因が絡み合っているため貧困世帯の子供たち自身の力で解決するのは非常に難しい現状にあります。教育格差を考える際に避けては通れない経済格差には課題が山積みです。
数字で見る日本の教育格差の現状
ところで、貧困率の割合や偏差値の推移などは教育格差と関連するので気になるところですよね。ここでは主に子供に主眼を置き、日本の教育格差の現状を数字で紹介します。
子供の貧困の定義
等価可処分所得の中央値の50%を貧困線といいます。貧困線以下の所得で生活している子供たちは貧困状態にあると定義される場合が多いです。例えば、ひとり親の親子で暮らしている場合だと14万円以下の月収で暮らしている世帯の子供は貧困状態にあります。某アンケート結果における経済的な理由から断念せざるを得なかった事柄では、塾や習い事は68.8%と断トツです。後には25.3%の海水浴・キャンプ体験などが続きます。最低限の衣・食・住を満たすため、子供の教育費や将来への投資を犠牲にせざるを得ない現状なのでしょう。
子供の偏差値の推移
例えば、7~9歳の子供の偏差値は貧困ではない世帯だと、偏差値50よりも少し上の地点に集中して分布しています。一方で就学援助や児童扶養手当を受けている世帯の7~9歳の子供は、低い学力層に散らばり推移しており、生活保護世帯では更に低学力層に大きく散らばって推移しているのが特徴的です。ここでいう散らばりは格差を意味します。7~9歳の子供に限定すれば貧困ではない世帯には教育格差がそれほど存在しておらず、貧困世帯では低学力と根深い教育格差が存在するといっても過言ではないでしょう。
子供の貧困率の割合
厚生労働省調査によれば子供の貧困率の割合は1985年には10.9%だったのが、2012年には過去最悪の16.3%となりました。子供の貧困率の割合から見た日本の教育格差の現状は、2012年は6人に1人の子供が貧困であるのに対し、2015年は7人に1人の子供が貧困へと回復の兆しがほんの少し見受けられます。ただ、このような子供の貧困率の割合はOECD諸国においては平均よりも上です。貧困状態が影響し、生じた教育格差が原因となって辛い思いをしている子供は今も昔も変わらず沢山います。
日本の教育格差の4つの原因
解決策を編み出すには原因の究明が必要です。ここでは日本の教育格差の原因を4つ紹介します。
①制度が整っていない
日本では2010年度から公立高校の授業料無償化が始まり、2014年度以降には高校などに入学する生徒が対象の就学支援金支給制度が開始されています。しかし、2002年度から開始された「ゆとり教育」によって公の教育への信頼性が薄れたり学力の低下が不安視されるなど、依然として家庭での教育に熱が注がれる制度体制です。それ故、教育制度の未整備は日本の教育格差の原因の1つといえるでしょう。
②貧困家庭の増加
教育格差の主な原因とされているのが所得格差です。所得が低いと私立小学校・私立中学校・学習塾などの高度教育を受ける機会が減少し、それに伴って難関大学への進学率も減少すると考えられています。経済的に貧困な家庭の増加が日本の教育格差に影響している可能性は非常に高いでしょう。
③高額な進学費用
進学格差は2008年9月のリーマン・ショックによる深刻な所得格差から派生した格差であり、国公立大学への進学率に強い影響が見受けられます。例えば、2012年の所得階層別の国公立大学への進学率は年収400万円以下の所得層が7.4%で、1,050万円以上の所得層が20.4%です。国公立大学に進学しようと思っても高額な進学費用を支払えないことが原因で進学できず、進学率が低いとも考えられます。
④税負担の増加
税負担は教育格差の主な原因である所得格差にも経済的格差にも関連します。地方税などの増税もそうですが、保障が伴わなければ家計を圧迫し兼ねません。社会を保障するはずの税金が負担となってしまう日本の悲しい現状は教育格差の原因の1つです。
教育格差による子供への影響とは?主な5つを解説!
教育格差が子供に及ぼす影響には2つあります。1つめは自己肯定感や外向性、協調性などの非認知能力への影響で、2つめは学力などの認知能力への影響です。ここでは日本の教育格差が子供に及ぼす影響を紹介します。
①自己肯定感が育たない
たとえ親や周囲の大人が教育格差を理解して受け入れていたとしても子供たち自身が教育格差を容易に受け入れられるとは考えにくいでしょう。教育格差は子供から自己肯定感を育むために必要な要素を奪うという悪影響を及ぼします。
②職業選択の幅が狭まる
仮に子供の将来の夢がお医者さんの場合、医師という職業に就くためには医学部に入学する必要があります。ここで進学格差が生じて必要な教育を受けられなかったとすれば教育格差です。また、地方で暮らしていて希望の職業に就くためには上京が最低条件であり、経済的な理由から就業を断念しなくてはならないこともあるでしょう。そのため、子供の職業選択の幅は教育格差・進学格差・地方格差などの影響により狭まると考えられます。
③社会的な経験が不足する
一般に教育格差の影響で外向性や協調性が損なわれてしまうと、社会との繋がりが希薄になりやすい傾向にあります。社会と積極的に関わろうとしなければ社会的な経験は不足するでしょう。このようなことから教育格差は貧困世帯の子供たちの社会的な経験値にも影響を与える可能性があるといえます。
④学力不足
現代の子供の学力不足には教育格差が影響しています。勉強好きな子供と勉強嫌いな子供がいるからには学力に開きがあるのは当然です。偏差値・学力達成などは学力テストにて測定できます。ただし、必ずしも測定結果が子供の本当の実力とは限らず、教育格差や地方格差などのあらゆる格差が影響している現状があるのです。
⑤貧困の連鎖
子供の教育格差は子供の社会的・経済的格差へと繋がり、更には親となった時分の社会的・経済的格差の誘因となります。これは格差の世代間連鎖と呼ばれるもので、教育格差による影響の1つです。貧困の連鎖を防ぐには支援が必要ですが、自分たちで防げる解決策や対策も存在します。
教育格差を解決するためにできる5つの対策
教育格差を効率良く対策できる解決策があれば良いとは思いませんか。ここでは教育格差を解決するためにできる対策を5つ紹介します。
①環境の現状確認
自分がどのような環境に置かれているかを正確に認識することから対処を始めましょう。子供には教育格差を隠しておきたい親もいるかもしれません。しかし、教育格差が生じている現状と親子でしっかり向き合ってみるのも大切ではないでしょうか。教育格差だけではなくて地方格差などの他の格差に関しても子供の年齢や性格によっては理解が望まれます。
②親が受験制度を理解する
異なる世代で生まれ育った親が子供の受験制度を完全に理解するのは難しいかもしれません。それでも、理解しようと試みることは教育格差を解決するためにできる対策です。子供の現行の受験制度に目を向けてみましょう。
③子供の気持ちを理解する
教育格差の解決においては親が子供の気持ちを理解しようと努力してみるのも1つの対策でしょう。例えば、地方で暮らしている子供が上京を希望しているにも関わらず、経済的な理由から支援できない時には子供騙しで乗り切ろうなどとはしない方が懸命です。特に物心の付いた子供は自分の気持ちを蔑ろにされたと憤慨する可能性もあります。
④当事者意識を持つ
当事者意識を持つのも教育格差を解決するためにできる対策です。例えば、現在は都市部で暮らしていて子供の頃には地方の教育格差を目の辺りにしていた大人は、地方で教育格差を受けている子供の気持ちが良く分かるのではないでしょうか。きっと自分のことのように考えてくれる大人の登場を子供は切望しています。
⑤支援活動に目を向ける
子供の教育格差を支援するために様々な活動が行われています。そのような支援活動に目を向けてみるのも教育格差の対策としては見逃せません。1人で背負い込むよりは建設的な対策といえるでしょう。
教育格差に関する本3選!
日本の教育格差は根深い問題です。原因や解決策だけでは捉えきれないといっても過言ではありません。ここでは日本の教育格差に関する本を3冊紹介していきます。
①学力と階層
子供の教育格差の背景に家庭環境が関係していることが実証的に明かされています。学力問題の第一人者が説く本なのでおすすめです。
②進学格差 深刻化する教育費負担
こちらの本の主題は進学格差です。教育費が家計を圧迫し、進学できないなどの進学格差は子供の貧困による教育格差と関連性がありおすすめしたい1冊です。
③教育格差の社会学
教育格差などの問題が社会学の観点で基礎から学べます。不平等な教育の現状に疑問を持っている人は、一度目を通してみてはいかがでしょうか。
現状を理解して教育格差の是正に必要なことを考えよう!
現代は生涯学習も一般的となりつつあり、大人でも教育を受けている人は沢山います。他人事と思わずに格差教育の現状に目を向けてみましょう。そして、現状を理解した上で教育格差の是正に必要なことに思考を巡らすのも良いかもしれませんよ。