『即物的』の意味とは？即物的な人の特徴3選も！【恋愛・仕事】

「哲学」と聞くと抽象的で難しいイメージがあり、実際に、わかりにくい言葉が多用されています。哲学の語源は「知を愛すること」つまり哲学とは、人間の賢智を愛し、探求する人間のための学問なのです。哲学用語である『即物的』の語源や背景を知ることにより、用語の意味や理解が深まっていきます。

主観を排して実際の事物に即して考えたり、行動したりするということを即物的な表現とし、物質的なことや金銭的なことを優先して考えることを即物的な生き方という意味とします。辞書では「物に即するさま」と記載されていて、掘り下げると「他の要因にとらわれずに、対象となる物事の本質そのものを活かすこと」となっています。

『即物的』の語源とは、ドイツ語の「ザッハリッヒ（sachlich)」の訳語で哲学用語でもあります。倫理的な客観性を重視する、ドイツ精神を象徴するような言葉のようです。『即物的』という意味にはネガティブなニュアンスのイメージがありますが「ザッハリッヒ」で意味を調べてみると「実務的な」「本質的な」「要を得た」などのポシティブなニュアンスも含まれています。

『即物的』とはどのような使い方ができるのでしょうか。『即物的』の使い方と、例文を紹介します。

日常会話で『即物的』の使い方は『即物的』の本来の意味から派生して「夢や理想を追い求めることなく、物質的、金銭的な利害を重要視する考え方」という批判的な意味での使い方をしています。生き方や人物像として『即物的』という言葉は「思いやりがない」「現実主義者」などの批判的な意味を含んで使われることが多いようです。

また、機械的や無機質という意味も表現できるので、家や車、建物などを表す時にも即物的なという表現を使うことができます。何に対して即物的と表現したいのか、表現したい対象の言葉を加える事で『即物的』という言葉の使い方ができます。

例文を小説の中から紹介します。山田詠美さんの『姫君』に書かれた一節。

「わたくしは、このような即物的な理由でなくような人物ではないのだ」

『即物的』という言葉を自分自身に対して、批判的な意味を含んで使っています。この作品は5篇の短編集になっていて、刹那的な感情の世界へ引き込まれるような物語となっています。興味のある方は、是非、読んでみてください。

例文2つ目は、松本清張氏の『迷走地図』の一節。

「佐伯昌子が「恋」という言葉を口にしても、まるで包丁とか茶碗とかの即物的な響きにしか聞こえなかった」

こちらの『即物的』の使い方はこの女性を、他人から見て心が伴っていないという批判的な意味で表現しています。

例文の3つ目は西村京太郎氏の『特急「富士」に乗っていた女』の一節。

「亀井は、即物的ないい方をした。二人の人間が、殺されたから、二日間と考えれば、亀井のいう通りかも知れなかった」

『即物的』本来の意味である、主観を排して、事物に即した表現で使われています。

「即物的な表現」とは主観的、観念的な表現を避けて事実そのままを、飾り気なしに表すことを言います。1920年代から1930年代にかけて「即物的な表現」を突き詰めようとした芸術運動が「新即物主義」と呼ばれました。それまでの主観的ともいえる表現主義への反動として、合理的、客観的な表現をした芸術家たちの運動として知られています。

客観的とは、「特定の立場にとらわれずに物事を見たり考えたりするというさま」を意味し「客観的な意見」「客観的に描写する」などの使い方をします。

リアリズムとは、美術・文学においては写実主義のことをいい、政治学においては現実主義、哲学では実在論と訳されます。

現実主義とは、現実を最重視する態度のことを意味します。

具体的とは、はっきりとした実体を備えていることをいい「具体的な方法」「具体的に指示する」などの使い方をします。

唯物論的とは、「物質を根本的実在とし、心や精神をも物質に還元して捉えて考えるさま」を意味します。

主観的とは、「自分ひとりの物の見方、感じ方によっての見方のことで、判断が個々の人間や人間間の心理的性質に依存しているというさま」を意味します。

観念的とは、「具体的事実に基づかずに頭の中で組み立てられただけで現実に即していないさま」を意味します。

理想主義とは、現実にとどまるのではなく理想の実現をめざそうとする立場のことを言います。

抽象的とは、「いくつかの事物に共通なものを抜き出して、それを一般化して考えるさま」を意味します。

観念論的とは、「非物質的なものである心や精神を究極のものとするさま」を意味します。

即物的な人の特徴としてまず、挙げられるのが現実主義な考え方の人です。人生において現実を最重視し、夢や理想はあくまでも抽象的なものとして捉えています。自分に対する利益を感じないと価値を見出せず、実現可能なものだけ、あるいは可能性の高いことを優先的に実行していく人です。

現実の利害を中心に考えている即物的な人は、他人の感情に影響を受けることもなく、自分の感情に左右されることもありません。そのため思いやりの感情が欠如していて、冷たい印象を受けます。更に、自分の意見が正しい時は絶対に折れません。他人が間違っているときは批判的で、否定を繰り返すこともあるので他人からは思いやりがなく冷たい人だと思われる傾向にあります。

現実的に考えてあり得るかどうかが物事の判断基準となる即物的な人。よって、そこには物質的なことや金銭的なことを最優先するために、根拠のない感情論や理想は含まず、それまでの過程や繋がりを無駄だと判断しています。

ある程度、即物的な考えを持っていた方が男性の場合、人生のプラスになっていくこともあります。即物的な考えで目標を立てて頑張ることで、仕事の上で結果を出し、地位を高めて行くことにもつながるでしょう。

女性の場合も、仕事面では男性と対等に渡り合う職場ではプラスと考えてよいのではないでしょうか。もちろん、人間関係の中での感情を無視して考えた場合です。ただし、それ以外においては現実主義であることが男性よりも如実に現れます。男性よりも女性の方が、現実からかけ離れた理想を求める傾向が強いので、他人から見て特に即物的に映る場合が多いでしょう。プライベートな部分においては女性の方が即物的な考えの人が多いと言われています。

恋愛で得られるメリットは、当然、即物的な考え方で自分に得のあることだけを選択をし、望んだ地位や名誉、財産のある恋愛相手と付き合うので物質的に豊かな人生を得られるでしょう。お互いが割り切って望む利害の価値観が一緒ならば、問題ではないと言えます。

恋愛で生ずるデメリットは、損得勘定で行動し周囲の反感を買ったり、付き合う恋愛相手が即物的な考え方でない場合は、行き過ぎた現実主義に付き合うことが難しくなり心が離れていってしまうでしょう。また、物の豊かさも永遠ではありません。即物的な判断基準だけの恋愛関係はそれが無くなると、関係も簡単に終わるとも言えるでしょう。恋愛に関しては即物的な恋愛をすることの方が難しいかもしれません。

思いやりが必要な仕事で事務的な対応をしたり、事務的な態度で接した場合に、即物的な仕事をしていると言われます。即物的な仕事をする人は、計画的に物事に取り組む姿勢が強く実現可能なもの、可能性の高いものを優先的に実行するという特徴があります。危機管理能力が高く、主観的ではなく客観的なデータを重視する仕事の仕方をし、そこには他人の感情や思いに左右されることはありません。しかし、どんな仕事でも、そこにはなんらかの形で人間関係が必ずあります。即物的な仕事のやり方だけでは通用しないということなのです。

良好な人間関係とは、社会や組織の場あるいはプライベートにおいてもお互いを高めあうような人間関係のことです。人間関係が上手くいくというのは、他人の気持ちを理解するという感情的な面も含まれます。理想を追うことなく、現実の事態に即して人生を歩んでいる即物的な人は、感情に左右されることはなく、また感情に左右される関係はむしろ無駄だと思うので、即物的な面をポシティブに理解してくれる人以外とは難しいでしょう。

ある程度の年齢を重ねてから人が考えを変える時、いつからか変わった時というのは、自身の人生において余程、影響力をもった人との関わりや出会い、または後悔してもしきれない、というような出来事がなければ変わることがないのです。それが、家族であったり職場であったり避けて通れない人間関係を持たなければならない相手なら、即物的な人に合わせて付き合うしかありません。

感情に流されることのない即物的な人なので、良い意味で私情を挟まずに人との関わりを保ちます。思いやりが感じられないことや、冷たい態度に感じることも、そのことを理解して、割り切って付き合うと仕事の上で上手く付き合えるでしょう。

相手の意向に合わせることによって、他人に迷惑がかかることでないならば即物的な人に合わせてみましょう。相手が変わってくれることに期待するより、自分が相手に合わせられる対応力に期待しましょう。

即物的な人に、考えを理解してもらおうとか、望んだ答えが得られないと失望するよりも即物的な人だと感じたら相手に期待しないことです。期待しなければ、落胆することもなく良い関わりで付き合うことが可能です。

人との関わりをあまり重要視しない現代では、即物的な考え方をする人は珍しくない傾向にあります。また、このような中立的な言葉は解釈次第でポシティブにもネガティブにもとれます。そこに、思いやりの気持ちを意識してもつことで、仕事でもプライベートでも良好な人間関係を築いていくことができます。