『陽』の意味とは?四字熟語と慣用句10選も紹介!
「陽」という漢字は太陽を表すこともあり、明るいイメージを持っています。なぜこの漢字が太陽という意味を持つのか、他にどのような意味を持つ漢字なのかを説明します。さらに、類語や対義語、四字熟語と慣用句まで、覚えておくと役に立つ使い方まで盛りだくさんで解説します。
目次
『陽』の意味は何?
「陽」という漢字にはポジティブな明るいイメージがあり、名付けにもよく用いられています。明治安田生命の名前ランキングでも、男女ともによく使われることの多い人気の漢字です。明るい意味に加え、「ヨウ」「ヒ」「ハル」などいろいろな読み方ができるというのも名付けに人気の理由です。
「陽」にはどのような意味があるのか、どのような語源を持っているのかをご存知でしょうか。「陽」の漢字の成り立ちと意味、類語と対義語、さらに「陽」を使った四字熟語や慣用句まで詳しく説明していきましょう。
日の照らすことや明るいこと
「陽」という漢字は「太陽」を意味します。日の照らすことや場所も関連した意味となります。日の照らす場所は明るいため、「明るいこと」という意味も持っています。
「陽」には、中国の易(えき)と呼ばれる思想に基づいた「能動的・積極的な性質」の意味もあります。易の考え方では、活動的、情熱的、外交的といった明るい性格や性質の意味があるのです。
表から目に見えるところやうわべのこと
「陽」という漢字のもうひとつの意味として、明るい太陽の日が照らすことで明白になるということで、「目に見えるところ」「うわべ」というものもあります。
『陽』の語源は?
「陽」の語源や漢字の成り立ちについて見てみましょう。
「陽」の篇は「こざとへん」です。こざとへんは、丘や山のような小高いところを意味しています。
「陽」のつくりの「昜」は「陽」の古字です。「昜」の上の「日」は水晶玉のような丸い石を意味していて、下の部分はその玉を乗せる台座を意味しています。祭壇の上で玉が輝いている様子を表していて、「明るい玉が周囲を広く照らす」様子を意味し、その光を太陽の光とし、「太陽」そのものを意味することになりました。
『陽』の類語は?3つ紹介!
「陽」の類語と意味をご紹介しましょう。
日差し
類語のひとつめは「日差し」です。太陽の光やその照らす程度を意味する言葉です。「日差し」は「陽射し」とも書きます。
日射
類語のふたつめは「日射」です。「日光がさすこと」を意味します。また、地表面に達した太陽の放射エネルギーのうち、0.29~3.0μmのものも意味しています。
「日射」という言葉は気象の話題によく出てくるため、より科学的な「陽」の類語と言えるでしょう。
光
類語のみっつめは「光」です。光ることや光るもの、照らすもの、人の心に明るさを感じさせるようなものやことを意味しています。
『陽』の対義語は?2つ紹介!
「陽」の対義語と意味をご説明しましょう。
陰
対義語の「陰」は、日光が当たらないところや曇りを意味しています。また、物に遮られて見えないところ、内にこもって目立たないことも意味している対義語です。
影
対義語の「影」は、物体によって光線がさえぎられて暗くなった部分を意味しています。水や鏡などの表面に移った形も意味している対義語です。
『陽』を英語で言うと?
「陽」を英語で表現するとどのようなものがあるのでしょうか。「陽」の意味から、英語表現を見ていきましょう。
「日差し」の英語表現
- sunlight
- rays of the sun
「日射」の英語表現
- solar radiation
「光」の英語表現
- light
- shine
- gleam
「陽的な」の英語表現
- positive
- plus
「目に見えるところ」の英語表現
- in public
『陽』を使った四字熟語を5つ紹介!
「陽」を使った代表的な四字熟語とその意味、使い方をご紹介しましょう。
①一陽来復(いちようらいふく)
「一陽来復」という四字熟語は、冬が終わって春が来ることや信念が来ることを意味しています。また、悪いことが続いたあとで、物事がよい方向に向かうことという意味も持つ四字熟語です。
もともとは易の用語で、陰暦の10月に陰の気が極まって、11月の冬至になると陽の気がまた巡ってくることを語源としています。「易経・復・本義」の中に「此に至り、七こうして一陽来復す、乃ち天運の自然なり」と書いてあることに基づいています。
②陰徳陽報(いんとくようほう)
「陰徳陽報」という四字熟語の「陰徳」とは、陰で人に知られることなく善い行いをする言葉で、「陽報」はやがて表にあらわれる善い報いのことを意味する言葉です。
つまり陰徳陽報とは、人に知られなくても善い行為を積み重ねていれば、いつかは必ず良い報いを得られるという意味の四字熟語です。
③陰陽五行(いんようごぎょう)
「陰陽五行」は、中国で生まれた自然哲学の思想です。森羅万象すべては陰陽五行で説明できるとされ、中国文化の芯を支える重要な理論となるものです。
陰陽五行は、「陰陽思想」と「五行思想」の2つの思想が合わさってできました。陰陽思想は、すべての存在は陰と陽という相反する性質のものの調和によって成り立つという考え方です。五行思想とは、古代中国の自然哲学の思想で、すべてのものは木・火・土・金・水の5種類の元素から成っており、互いに影響を与え合って循環するという考え方です。
④衡陽雁断(こうようがんだん)
「衡陽雁断」とは、便りがなくなることを意味する四字熟語です。
「衡陽」とは、中国湖南省にある衡山の南側のことです。ここには回雁峰と呼ばれる険しい峰があります。昔の人は雁の足に手紙を付けて運びましたが、雁は南へ向かおうとしてもこの峰を越えることができずに北へ戻っていくことを語源として、この名が付きました。
つまり、雁が越えられない回雁峰より南の人たちには手紙が届かないことから、便りがなくなることを意味する言葉となったのです。
⑤高陽酒徒(こうようのしゅと)
「高陽酒徒」という四字熟語は、好んで酒を飲む人のことを指します。また、世を捨ててただ酒を飲むだけの人だと自分をあざけっていう言葉でもあります。
「高陽」とは中国の地名で、「酒徒」は酒飲みを意味します。中国秦の時代、高陽の近くに劉邦が進軍していた時に酈食其(れいいき)という者が面会に訪れました。しかし、酈食其が儒者のような恰好をしていたので、劉邦は面会を断りました。その時に酈食其は「私はただの酒飲みであって儒者ではない」と怒った故事を語源としてできた四字熟語です。
『陽』を使った慣用句を5つ紹介!
「陽」を使った代表的な慣用句とその意味、使い方をご紹介しましょう。
①陽の照っているうちに干し草を作れ
「陽の照っているうちに干し草を作れ」という慣用句は、「太陽の照らすうちに干し草を作ろう」という意味から、絶好のチャンスを逃さずに活用しよう、好機を逸するな、という意味を持つ言葉です。
干し草をきちんと乾燥させるのには、太陽の下で一定時間さらして牧草の水分をしっかりと飛ばす必要があります。晴れている間に素早く干しておかないと、天候が変わってしまって乾かすことができず、干し草がたりなくなってしまうかもしれません。
「思い立ったが吉日」「鉄は熱いうちに打て」と同じような意味を持つ慣用句です。
②陽炎、稲妻、水の月
「陽炎、稲妻、水の月」という慣用句は、形は見えても捕えがたいものをたとえた言葉です。「陽炎、稲妻、月の影」という言い方もします。
③陰陽師、身の上知らず
「陰陽師、身の上知らず」は、他人の吉凶を占う陰陽師は自分の運命については占えずに分からないという意味で、他人のことはよくわかる人物であっても自分自身のことはわからないものであるということをいう言葉です。
「医者の不養生」と同じような意味を持つ慣用句です。
④陰徳あれば必ず陽報あり
「陰徳あれば必ず陽報あり」という慣用句は、四字熟語の「陰徳陽報」と同様に、人に知れず善い行為をする者には、いずれ必ず目に見えて善い報いが得られるという意味の言葉です。
⑤洛陽の紙価を高める
「洛陽の紙価を高める」とは、著書の評判が良くて売れ行きが良いことをたとえる慣用句です。この慣用句の語源は「晋書」文苑伝にある故事よりきています。
晋の左思(さし)が「三都賦(さんとのふ)」という著書を作った時に、洛陽では評価が高くてこれを書き写す人が多く、紙の需要が増しました。このため洛陽では紙の値段が高騰しました。
「洛陽紙価」という四字熟語も同じ意味を持っています。
『陽』の意味を知って、知識を増やそう!
「陽」の語源や意味、具体的に使える四字熟語や慣用句などを詳しく説明してきましたがいかがでしょうか。「陽」には、明るい・活発なイメージがあり、たいへん馴染みのある漢字でもあります。万物を育むパワーを持つ気を指す「陽」には、心まで暖かくなるようなイメージがついています。
「陽」の持つ多様な意味を生かして、いろんな場面で「陽」を使ってみてください。