『致し方ない』の意味とは?正しい意味や使い方・注意点を紹介!
ビジネスシーンや時代劇で、致し方ないという言葉を耳にすることがあります。けれど実際に使ってみようとしても、正しい意味や注意点を知らないと、失敗してしまうことも。致し方ないの類語や対義語、英語表記を見ながら、正しい意味を学んでみましょう。
目次
『致し方ない』の意味とは?
『致し方ない』という言葉は、「仕方ない」や「やむを得ない」の意味を持ち、致すという謙譲語を使うことで、丁寧にした言い回しです。具体的にどのような意味があるのか、3つに分けて見ていきましょう。
意味①避けること/逃れられないこと
致し方ないの意味を調べると、「避ける、もしくは逃げることができない」が出てきます。いくら望んでいないことだとしても、そうせざるを得ない。避けることができない、不可避である、という場面で使われます。
意味②他に方法がないこと
致す方法がない、つまり「そうするしか他に方法がない」という意味の使い方ができます。致すは「する」の謙譲語であり、「方」は「方法」の意味合いがあります。他の選択肢がなくやむを得ず、というニュアンスを含むため、前向きな意味としては捉えられません。
意味③改善の見込みがないこと
致し方ないの3つ目の意味として、「改善の見込みがない」が挙げられます。有効な手段がなく、打つ手が他にない。これ以上どうすることもできないため、改善の余地がない、となるわけです。
『致し方ない』の語源とは?
致し方ないの語源は、仕方がないだと言えます。「致す」は「する」の謙譲語(敬語の一種、自分がへりくだる表現)です。するの連用形が「し」なので、し方がない、つまり「仕方がない」の丁寧な使い方をした表現であることが分かります。「仕方がない」は致し方ないの類語でもあり、語源ともなっているのです。
『致し方ない』の使い方を例文を使って紹介!
『致し方ない』の使い方を、2つの例文を出して解説していきます。まず1つ目は、「残念ではあるが、そのような事情であれば致し方ないかもしれない。」他に打つ手がなく、不本意ではあるけれど仕方ない、という意味が含まれます。
2つ目の例文は、「セクハラ行為をして、反感を買うのは致し方ないことだ。」非があるのは行為をした者だから、避難を浴びるのはしょうがない、ということになります。どちらの例文も、仕方ないから、しょうがないから、と諦める場面で使われています。
『致し方ない』はどんな場面で使うの?
諦めるとき
自分のベストを尽くしたが、諦めざるを得ない場面で、致し方ないを使います。やはりポジティブな印象は受けませんが、致し方なく、次の新たな一歩を踏み出すきっかけにもなり得ますね。
妥協するとき
妥協とは、対立していた一方が、他方もしくはお互いに譲ることで、物事や意見をまとめることを意味します。言い合っていても埒が明かないため、しょうがないから相手に譲ろう、と妥協する場面で、致し方ないを使うことができます。
良い案がないとき
良い案やアイデアが思いつかない時も、致し方ないが仕える場面です。仕事を進めていく際に、名案があれば良くない状況を打破できることがあります。しかし苦しい局面で、毎回良い思いつきがひらめくわけではありません。そのような時には、しょうがないと言い聞かせることもあるはずです。致し方ないを用いる場面と言えますね。
選択肢がないとき
他に選択肢がない場面では、しょうがない、つまり致し方ないと受け入れるしかありません。例え不本意で、納得のいくものでなくても、選択の余地がないのであれば、仕方ないと思うしか他にありませんよね。
八方ふさがりなとき
まず八方ふさがりとは、「どの方角に向かって事を成そうとしても、不吉な予想がされる」「手の打ちようがない」という意味がある言葉です。厄年と並んで、八方ふさがりの年にお祓いに行く人もいるようです。八方ふさがりでどうしようもない状況では、致し方ないこともたくさんあるでしょうね。
『致し方ない』を使う際は注意が必要!
致し方ないという言葉は、決して目上の人に使ってはいけません。なぜなら前述の通り、「致す」は謙譲語であり、自分がへりくだった言い方だからです。注意すべきなのは、上司や年上の方には、尊敬語を使わなければいけないという点です。例文を挙げるならば、「○○部長がそのようにおっしゃるのは、致し方ありません」になりますが、致し方ないは尊敬語ではないため、使わないよう注意しましょう。
『致し方ない』の類語を9つ紹介!
普段頻繁に使うことがない「致し方ない」という言葉。類語を見てみると、意味が把握できますし、上手く使えるようになるかもしれません。致し方ないの9つの類語を、語源も合わせて意味を解説していきます。
類語①仕方ない
致し方ないの類語として、まず「仕方ない」が挙げられます。この言葉の意味には、「他に方法がなく、やむを得ない」「改善の見込みがない」があります。致し方ないより仕方ないの方が、現在でもよく使いますよね。
類語②やむを得ない
他に方法や選択肢がない、という意味を持つ単語を検索すると、「やむを得ない」がヒットします。例文を挙げると、
雨が降っているので、中止もやむを得ない
中止が仕方ないという意味で、前述した仕方ないとも類語であり、つまり致し方ないと同義語であると言えます。
類語③よんどころない
「よんどころない」は、あまり聞き馴染みのない単語かもしれません。漢字で書くと、「拠ん所ない」となり、よりすがる所がないという意味をイメージすることができます。よんどころない事情で、などの使い方があり、他にどうすることもできない、仕方ないの意味を持ちます。
類語④余儀ない
辞任を余儀なくされる、などの使い方がありますが、「余儀(よぎ)」とは他の方法という意味で、つまりそのようにせざるを得ないということになります。やむを得ないや仕方ないも、類語ですね。
類語⑤是非ない
是非ないという単語は、現代ではあまり聞き慣れません。語源を辿っていくと、本能寺の変において、織田信長が明智光秀に追い詰められた際に口にした、「是非も無し」が出てきます。是は良いこと、非は悪いことを示し、織田信長の置かれた状況から、善し悪しを議論している場合ではない、という意味があると解釈されています。是非ないは、仕方ないややむを得ないの意味があります。
類語⑥不可避
不可避(ふかひ)も、致し方ないの類語のひとつです。漢字から推測すると、避が不可能、つまり意味は「避けることができない」となります。検索をかけると、よんどころないと似たような意味が出てきます。
類語⑦不可抗
不可抗(ふかこう)とは、「避ける、逃げることが不可能であること、人の力ではどうしようもない」という意味があります。使い方としては、天災や不慮の事故で用いられます。不可抗より、不可抗力の方が使うことが多いのではないでしょうか。
類語⑧逃げられない
致し方ないの意味を調べると、逃げられないが多く目につきます。パッと思いつく類語かもしれませんね。
類語⑨必至
必至(ひっし)は、必ずそうなる、避けることができないという意味を持ちます。類語には、致し方ないの他に、よんどころないや不可避が挙げられます。英語で訳すと「must」「inevitably」となり、必死とは異なるため注意が必要です。
『致し方ない』の対義語はあるの?
致し方ある、という単語はありませんし、これといって致し方ないの対義語は存在しません。敢えて挙げるとしたら、「なんとかなる」や「どうにかなる」といった、ポジティブな意味のある言葉でしょうか。
「致し方ない」と「仕方ない」の違いとは?
「仕方ない」は、仕方とないの間にがを入れて、「仕方がない」という使い方もされます。仕方とはやり方や方法を意味するため、他に方法がないことを示すことが分かります。冒頭で説明したように、致し方ないの意味にも「他に方法がない」があります。つまり「致し方ない」と「仕方ない」は同じ意味だと言えます。致し方ないのくだけた言い方が、仕方ないだと捉えると分かりやすいですね。
「致し方ない」と「しょうがない」の違いとは?
しょうがないの語源を辿ると、仕様がないから派生していることが分かります。さらに仕様がないの意味を調べると、「他に良い手段がない」が出てきます。仕様がないの類語を検索したら、仕方ないややむを得ない、また致し方ないも類語として紹介されていました。「頼まれたししょうがない」と言うと、諦めのニュアンスを含みますね。
『致し方ない』を英語で表記すると?
『致し方ない』が避けることができない、逃げられないを意味することから、逃げる(escape)の対義語であるinescapable(形容詞)や、避ける(avoid)の対義語のunavoidable(形容詞)が致し方ないの英語です。また、他に選択肢がないから英語を考えると、I have no choice. もシンプルで分かりやすいです。
『致し方ない』の意味を正しく理解して使おう!
『致し方ない』という言葉は、普段なかなか使う機会がありません。対義語や英語表記を考え、致し方ないの意味を知ると、少しは使いやすくなるかもしれません。目上の人に使う際には注意が必要ですが、正しく理解して使用してみてくださいね。