「バクテリオ・ファージ」とかいうウイルスの構造が奇妙すぎる【画像】

「バクテリオファージ」は、高校までの授業で誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?その、人が作った機械のような姿から模型としても製作されているウイルスですが、実際はどのようなウイルスなのでしょうか?今回はバクテリオファージについて調べてみました!

「バクテリオ・ファージ」とかいうウイルスの構造が奇妙すぎる【画像】のイメージ

目次

  1. 1機械のような姿をしたウイルス「バクテリオファージ」
  2. 2バクテリオファージってどんなウイルス?
  3. 3ウイルス「バクテリオファージ」の種類とそれぞれの構造
  4. 4ウイルス「バクテリオファージ」の2種類の増殖形式
  5. 5ウイルス「バクテリオファージ」の応用①:ハーシーとチェイスの実験
  6. 6ウイルス「バクテリオファージ」の応用②:形質導入など
  7. 7バクテリオファージの中でも人気の「T4ファージ」の構造
  8. 8ウイルス「T4ファージ」の感染経路①:大腸菌への結合
  9. 9ウイルス「T4ファージ」の感染経路②:大腸菌へのDNA注入
  10. 10ウイルス「バクテリオファージ」のまとめ

機械のような姿をしたウイルス「バクテリオファージ」

出典: http://usaginonedoko.shop-pro.jp

T4ファージの3D模型

「バクテリオファージ」という名前は、中学から高校までの授業で誰もが一度は耳にしたことのある単語ではないでしょうか?教科書に載っていたその、人が作り出した機械のような印象的なフォルムを覚えているという人も多いと思いますが、どんなウイルスかということは忘れている人も多いのではないでしょうか?そこで今回はバクテリオファージの種類や特徴、性質、構造から細菌に取りついて食い殺すまでのメカニズムについてご紹介したいと思います!

バクテリオファージってどんなウイルス?

出典: https://twitter.com

細菌(大腸菌)の画像

バクテリオファージは、細菌に取りついて感染するウイルスの総称で、単純にファージと呼ばれることもあります。バクテリオファージの基本構造は非常にシンプルで、遺伝物質である核酸(DNA)とそれを覆う外殻のタンパク質のみで構成されています。

出典: http://soilshop.webcrow.jp

T4ファージの紙でできた模型画像

T4ファージはペーパークラフトやアクセサリーにもなっているほど人気

バクテリオファージに感染された細菌は、細胞壁を破壊され、溶菌してしまいます。溶菌した後は死骸が残らず、まるで細菌(バクテリア)が食べられたように消えてしまうことから、ギリシャ語で食べる(ファージ:phagos)、バクテリオファージ(bacteriophage)という名前が付けられたそうです。バクテリオファージの中でも、構造が複雑なT4ファージやゲノム解読に使われたラムダファージ(λファージ)などが有名です。


※溶菌とは、細菌の細胞壁が分解されて崩壊するように死滅することを言います。死骸もなく溶けるように消えることからこの名前が付けられたそうです。

ウイルス「バクテリオファージ」の種類とそれぞれの構造

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T2ファージの画像

バクテリオファージには様々な種類が存在しています。種類によって大きさや構造も様々で、大きさは小さいものだと25nm程度ですが、先ほどのT2やT4ファージなどは200nmもあり、小さなもの比べると約9倍もの大きさがあります。

出典: http://www.zdnet.com

エイズウイルスの画像

ウイルスは基本的に、画像のような球体をしており、タンパク質の外殻の中にDNAが入っています

バクテリオファージの種類のほとんどはDNAが中に入っているたんぱく質のカプセル、通称カプシドを頭部として持っており、そこから尾が伸びているような構造をしています。ただし、バクテリオファージの中にも尾を持たずに真核生物に取りつくウイルスのような、頭部のみの構造をしたものもいます。

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※画像はイメージです

バクテリオファージについている尾部は、細菌の細胞壁を突き破るための役割をしているのですが、種類によって尾の構造が違っており、尾の長さは長いけれど収縮するタイプ、尾の長さは長いが柔軟性があるタイプ、尾の長さが短く収縮しないタイプの3種類に分けられます。

ウイルス「バクテリオファージ」の2種類の増殖形式

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T2ファージもビルレントファージ

バクテリオファージには、ビルレントファージとテンペレートファージという2種類の増殖形式が存在しています。ビルレントファージは、感染すると細菌の中で増殖し、溶菌を起こして宿主を最終的に死滅させてしまいます。バクテリオファージの多くの種類はこの増殖形式です。

出典: https://ja.wikipedia.org

しかし、中には宿主を殺さず共存していく増殖形式があります。それがテンペレートファージです。テンペレートファージでは、細菌が感染したとしても、一部を除いて細菌の中では増殖せず、溶菌も一部にしか起こりません。この時細菌の内部では細菌のDNAにバクテリオファージのDNAが挿入される、もしくはプラスミド(染色体以外のDNA分子)として存在します。

出典: https://ja.wikipedia.org

そのため、細菌が増殖する時もバクテリオファージのDNAは引き継がれたまま伝達されていきます。この状態は溶原化といいます。ラムダファージなどはテンペレートファージの代表です。また、テンペレートファージは、毒素遺伝子を持っていることもあり、大腸菌O157のベロ毒素はバクテリオファージを介して赤痢菌から渡ってきたものだと考えられています。

ウイルス「バクテリオファージ」の応用①:ハーシーとチェイスの実験

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DNAの3D模型画像

1952年に行われた、アルフレッド・ハーシーとマーサ・チェイスの二人の実験では、DNAが遺伝物質であるという事実を裏付けるために、大腸菌とT2ファージが使われました。現在でこそDNAが遺伝物質であることは誰もが知っている事実ですが、当時はたんぱく質が遺伝物質であるという説が有力となっていました。

出典: http://keio-saiki-lab.com

DNAの3D模型画像(2)

そこでハーシーとチェイスはたんぱく質とDNAだけで構成されているバクテリオファージ(T2ファージ)に目をつけ、T2ファージをたんぱく質とDNAに分けて物質ごとに色分け(正確にはラベル)し、大腸菌に感染し増殖する経路を追跡していった結果、細菌に感染していたのはたんぱく質ではなくDNAであると証明することができたそうです。また、この実験によってウイルスの増殖方法についても明らかになりました。

ウイルス「バクテリオファージ」の応用②:形質導入など

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形質導入に利用される大腸菌の3D模型画像

また、現代では、テンペレートファージを用いて大腸菌の中に任意でDNAを挿入し、大腸菌に新しい形質を導入するという方法が、ラムダファージを使って分子生物学で広く応用されています。また、そのほかファージは細菌の選別などにも利用されています。

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ファージは宿主とする細菌が種類によってかなり細かく決められており、またそれぞれの種類によって宿主とする細菌も異なっています。そのため、同じ種の細菌の中でもさらに細かく株ごとに分けることなども可能になります。これはファージ型別と呼ばれています。また、近年では細菌の治療薬としての研究も進められているそうです。

バクテリオファージの中でも人気の「T4ファージ」の構造

出典: http://blog.goo.ne.jp

T2ファージ

T4とほとんど見分けがつきません

バクテリオファージの構造や細かい感染過程について、授業でなじみ深いT4ファージでみていきましょう。因みにファージの中でもTファージとは、大腸菌を宿主とするファージの総称で現在T1~T7まで見つかっています。その中でも特に構造が複雑で機械のようだと一番人気があるのがT4ファージです。ただし、ここまで上げた模型画像などを見ても分かる通り、T2ファージも外見は頭部にほんの少し歪みの差がある程度でT4ファージとほとんど変わりはないようです。

出典: http://blog.goo.ne.jp

T4ファージの3D模型

T4ファージの構造は主に頭部、尾部、基盤、尾繊維から成り立っています。T4ファージの構造は他のファージに比べてもきわめて安定しており、一度取りつけばほぼ100%感染させることができると言われています。頭部は正20面体を少し引き伸ばした形をしており、中に約172kbのDNAが入っています。

出典: http://seiga.nicovideo.jp

T4ファージの基盤の裏側

尾部は二重構造になっており、外側の筒が尾鞘、内側の筒が尾管と呼ばれています。尾部に接続している基盤は正六角形の形をしており、それぞれの角の頂点から6本の尾繊維が伸びています。

ウイルス「T4ファージ」の感染経路①:大腸菌への結合

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T4ファージが大腸菌に感染するまでは、2段階に分けることができます。まずは大腸菌への結合です。T4ファージはまず尾繊維を使ってこの大腸菌が自分の宿主となりえる大腸菌かどうかを判別します。宿主となりえる大腸菌だと判断されると、基盤の構造が変化します。傘の様に広がった基盤の下から基盤の中に収納されていた小尾繊維と呼ばれる部位が出てきて大腸菌の表層に固く結合されます。ここまでが第一段階です。

ウイルス「T4ファージ」の感染経路②:大腸菌へのDNA注入

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第二段階では、基盤が元の形の六角形から星形に構造が変化したことを引き金にして尾鞘が元の100nmから40nmまで大きく収縮します。それに伴って中に収納されていた尾管が露出され、基盤の外に突き出す形となります。尾管の先端は、大腸菌の細胞壁を突き破れるよう鋭い針のような形になっています。

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この針は大腸菌の外膜、細胞壁(ペプチドグリカン層)を突き破っていきます。また、この鋭い針の付け根には、リゾチームドメインと呼ばれるたんぱく質を分解する酵素が付いており、鋭い針が大腸菌の外膜や細胞壁を突き破るのと同時に細胞を溶かして小さな穴を開けます。針が大腸菌の内膜まで到達すると、頭部に入っていたDNAが尾管を通って大腸菌の内部に注入されます。

出典: https://www.nig.ac.jp

左がビルレントファージで右がテンペレートファージのサイクル

ただし、これは注入というよりも、大腸菌側がDNAを引きこんでいるという見方が強いようです。侵入を果たしたDNAは、大腸菌のDNA複製や転写、翻訳を行う装置を利用して頭部・尾部・尾繊維を製造してから体を結合させ、感染性のあるT4ファージとなります。一つの大腸菌では約100個ものT4ファージが増殖し、溶菌現象を起こして最終的に外に放出されることとなります。

ウイルス「バクテリオファージ」のまとめ

さて、一度は耳にしたことがある「バクテリオファージ」が一体どんなウイルスなのか調べてみたところ、バクテリオファージとは、宿主である細菌に取りつき、自分のDNAを注入して増殖し、内側から分解していき、食べるように細菌を消し去ってしまう恐ろしいウイルスであることが分かりました。また授業などでなじみ深いT4ファージについては、その構造の複雑な美しさや感染までの経路を見ると、人が作り出した機械ではないのかと疑われるのも無理はないようでした。また、バクテリオファージには、T4ファージ以外にも様々な種類がいます。興味のある方はこれをきっかけに調べてみてはいかがでしょうか?

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