チェレンコフの青白い光ってなに?被曝して死ぬ放射光が福島原発にも?
絶対に見てはいけないチェレンコフ光。その青白い光を見るということは臨界に達した放射性物質に被曝することを意味します。近年起こった重大な原発事故の影響は計り知れません。今回は青白いチェレンコフ光と放射線、被曝の関係について解説します。
目次
青白いチェレンコフ光の恐怖
皆さんはチェレンコフ光をご存知ですか。
見たら死ぬといわれる青白い光です。
原子力発電所や放射性物質を取り扱う事故の際に発生するとされていす。
ブラジルでは医療装置による事故でも見られました。
今回はチェレンコフ光と放射線、被曝の関係について見ていきたいと思います。
チェレンコフ光とは
チェレンコフ光とはどんな光のことなのでしょうか。
「よくわからないけど怖い光」と考えている方が多いのではないかと思いますが、チェレンコフ光自体は研究所などでよく見られる現象です。
チェレンコフ光の発生のしくみ
チェレンコフ光とは、荷電粒子という電気を帯びた素粒子が光の速さよりも高速で移動した際に発する青い光のことです。
2002年からニュートリノを観測するために開発されたカミオカンデではニュートリノの反応を見るためにチェレンコフ光が利用されています。核分裂の止まっている原子炉でも見られる現象で、チェレンコフ光自体はそれほど珍しい現象ではありません。
何故放射性物質は青白い光を発するのか
出典: http://karapaia.com
チェレンコフ光は水やガラスなどの透明な物質の中を高速で移動した際によく見られます。
目の中の水晶体には水分が含まれているので粒子が水晶体の中を通過した時に青い光に見えるといわれています。チェレンコフ光は目の中で起きている現象なのです。
チェレンコフ光は何故青いのでしょうか。
チェレンコフ光の波長は紫外線の波長と近く、太陽の光よりも波長が短くなっています。目に見える光は波長の短い青い成分が多いので、目に含まれる水の中で乱反射することで青い光に見えます。
その青白い光を見た瞬間あなたは放射線に被曝している?
チェレンコフ光が多くの人に怖がられているのは何故でしょうか。
それはチェレンコフ光を見る=放射線の被曝を受けている、と考えられているからです。
チェレンコフ光を見たという報告は主に原子力発電所などで起きる臨界事故の際に取り上げられます。実際に国内でも臨界事故で青白い光を見たと証言した人は重度の放射線障害により亡くなっています。
そのこともあり、今日では、チェレンコフ光を見たら死ぬ、と考えられているのです。
臨界事故と放射線被曝
臨界事故は、放射性物質の核分裂の連鎖反応を意図せず引き起こしてしまう事故です。
原子力発電所や原子炉のある施設、核燃料を取り扱う施設で多く起こります。
臨界に達して放射される放射線が外部に漏れることで、人の身体に重大な被害を与えます。
一般的に放射線量はベクレル、被爆した人体への被害はシーベルトで測られます。
被曝線量の基準値を示す画像です。
シーベルトの値が高いほど人体への影響が大きいことが分かります。
原発事故と放射線被曝
実際に起きた臨界事故とチェレンコフ光について見ていきます。
動画がありますが、途中で気分が悪くなったりしたら視聴を中止してくださいね。
チェルノブイリ原発事故
出典: http://www.rri.kyoto-u.ac.jp
石棺建設中の画像
1986年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原子力発電所での臨界事故です。
世界で最も大規模な原発事故の1つとされています。現在でも原子炉建屋の半径数十キロは居住が禁止されています。そこから遠く400キロほど離れたところにも局所的に放射線量の高いホットスポットが存在し、農業や畜産業の制限があります。
事故発生直後、ソ連は近隣住民のパニックや機密保持のために事故の発生を報告せず、住民の避難指示もしませんでした。その結果、何十万人もの人が原発から漏れる放射線によって被曝しました。
出典: http://www.rri.kyoto-u.ac.jp
石棺建設中の画像
核分裂を抑えるためのホウ素投入や原子炉そのものをコンクリートで封印する作業のために多くの消防士や作業者が亡くなりました。コンクリートで覆われた原子炉は「石棺」と呼ばれるようになりました。
当時現場にいた作業員は青い光を見たと証言したといわれています。それがチェレンコフ光だったのかは今でも論争がありますが、チェレンコフ光が臨界事故の象徴のように扱われていたことに変わりありません。
JCO臨界事故
1999年に茨城県東海道村にあった核燃料加工施設で起きた臨界事故です。
国内で初めて重度の放射線被曝者を出しました。
事件の瞬間現場にいた作業員が「青い光を見た」と証言したことにより臨界事故と断
定されました。作業員の見た光は作業中に扱われていたウランが臨界状態になった時
に放射された中性子線と考えられています。その後、作業に関わっていた3人の作業員
のうち2人が放射線障害により亡くなりました。
原発だけじゃない被曝事故
臨界事故は原子炉だけで起こるとは限りません。
ブラジルでは医療施設で被曝事故がありました。
青白い光のせいで被曝者が増えたブラジルのゴイアニア臨界事故
出典: http://www.taringa.net
当時の写真を収めた画像
1987年、ブラジルのゴイアニア市にあった廃病院跡に放置されていた放射線治療装置 によって事故は起きました。放置されていた装置を業者が解体した際にガンマ線源であるセシウムを取り出し、それが放射性物質であることを知らずに親族に配るなどして被曝者は増えていきました。その際にセシウムが発した青白い光が周囲の人に関心を持たせ、結果的に被曝者は200人を超えたといわれています。この時に発生した青い光は放射性物質の発するチェレンコフ光でした。
福島原発ではチェレンコフ光は観測されたか
2011年、震災が原因で起こった福島原発事故。
日本国民にとって忘れられない、忘れてはならないものとなりました。
福島原発ではチェレンコフ光は観測されたのでしょうか。
事故の直後から様々な証言、憶測が飛び交っていますが、実際に青白い光をこの目で見たという人は今の段階では出てきていません。
福島原発での事故は原因や被害状況の全貌がまだ明らかにされていませんから、今後報告されるであろう情報に注視し、何が正しい情報なのか慎重にならなくてはいけません。
宮崎駿の描いた放射線に汚染された世界
出典: http://chuckykun.blog58.fc2.com
『On your mark』は1995年にCHAGE and ASKAが発表した曲をもとに宮崎駿監督が作ったアニメーション作品です。
放射線に汚染された近未来の都市でカルト教団を制圧した警察官2人が天使のような羽を持つ少女と出会います。その天使のような少女は政府の監視下に置かれますが、そこを2人の警官が救い出すのがアニメのおおまかな流れです。
作品そのものが観る人によって解釈が異なるように作られているため、天使のような少女が何者なのか、最後のシーンで警官がどうなったのか、具体的には語られていません。何度も繰り返される場面や天使のような少女が何の象徴なのか、みなさんもぜひ考えてみてください。
チェレンコフ光を見ずに一生を終えたい
出典: http://www.riast.osakafu-u.ac.jp
チェレンコフ光自体は原子炉ではよく見られるので、チェレンコフ光=死ぬ、と考えるのは少し短絡的かもしれません。しかし、臨界事故で実際に見たという人のほとんどが亡くなっています。見た人の中には綺麗だったという人もいますが、できればその青白い光を見ずに一生を終えたいものです。