『蔓延』の意味・使い方とは?類語や対義語も紹介!
『病気が蔓延する』『悪者が蔓延っている』なんて言葉をよく耳にするけど、正確な意味は分からないという人も多いのではないでしょうか。そこで今回は「蔓延」の言葉の意味や語源、類語・対義語や使い方、さらには英語での言い方まで詳しくみていきましょう。
目次
『蔓延』の意味とは?
まず、「蔓延」の基本的な意味や使う時のルールを見ていきましょう。「蔓延」はこの後に紹介する語源を知ると意味が一気に覚えやすくなる言葉ですので、しっかりチェックしてみてください。
好ましくないこと
「蔓延」という言葉を使う時は、風邪や悪習など、基本的にあまり好ましくない事柄が社会に広がっていることを指す意味として使います。病気や火事など人を困らせる言葉と一緒に用いられるのが特徴です。逆に、好ましい事柄に「蔓延」という言葉を使うのは誤りですので、気をつけましょう。
伸び広がること
「蔓延」の意味は大きく分けて2つあります。ひとつめの意味は「草などの植物が伸び広がること」。もうひとつの意味は「病気や悪習などが広い範囲で社会に影響を及ぼすこと」を指します。また、悪いものがある場所に留まって周囲に害を及ぼす時にも使う言葉ですので、これも覚えておきましょう。
『蔓延』の語源は?
では「蔓延」の語源は何なのでしょうか。「蔓延」という言葉を分解してみると、「蔓」と「延」という二文字になります。それぞれの意味を見てみましょう。
・蔓
植物の一種で自立できずに他の樹木を支えの茎を伸ばす植物の意味。フェンスや家の壁にぐるぐる巻き付く緑色の植物を見たことはありませんか?あの植物の意味です。
・延
意味はのびる、ひろがる。これは「延長」という類語もあり、意味がわかりやすい漢字ですね。
一説によると、『蔓延』の語源とは『蔓草(つるくさ)が延びる』と書くことから、蔓草があっという間に伸びるのと同じように物事が社会に広がっていく意味になったと言われているそうです。
『蔓延』の使い方と例文10選!
さて、ここまで『蔓延』の意味や語源を見てきましたが、実際どんな時に使うのかは例を見てみないとイメージしづらいと思います。
ここからは、さまざま例文と一緒に使い方と色んな意味を確認していきましょう。
①悪が蔓延る
この例文では、「蔓延」に「る」という言葉がついています。この形になると『蔓延る(はびこる)』という読み方に変わります。少し難しいですが、見かける場面も多い言葉なので読めるようにしておきましょう。この例文での「蔓延」の使い方は、犯罪者があふれ、悪いことがたくさん起きている社会という意味を表しています。
②よくない遊びが蔓延する
この例文の言うよくない遊びは、ギャンブルなどの違法だったり社会的に好ましくない遊びという意味です。それが広がるのはあまりいいこととは言えないため、「蔓延」という言葉が使われています。
③結核の蔓延を防ぐ
「蔓延」は病気と一緒に使われることが多い言葉です。特に風邪や結核など、人から人に伝染する可能性がある病気が広がる意味を表す時に「蔓延する」という言葉がよく使われます。逆に、人に伝染する病気でない時はあまり使いません。「骨折が蔓延している」という使い方はしませんので、これも覚えておきましょう。
④睡蓮が他の水草を次第に圧迫して蔓延する
「蔓延」の語源と似た意味の例文です。モネの睡蓮に描かれたような、一見美しい情景に見えますが、「蔓延」という言葉が使われていることにより、睡蓮の生命力が強く、他の水草を追いやってしまっているという好ましくない意味で使われていることが分かります。このように「蔓延」は生命力の強い植物が繁殖する意味にも使われます。
⑤火事を起こし蔓延させる
ある場所で火事が起こって、それが病気が蔓延するようにどんどん広がっていくという意味です。類語としては「延焼する」という言葉も同じ意味で使えますが、「蔓延」を使うことによって、ツルクサが家の壁にぐるぐる巻き付いていくように、勢いよく火が広がるような意味が浮かんできます。
⑥熱病が欧州にまでも蔓延した
この例文の「熱病」というのはマラリアやチフスなど、高熱を出す病気という意味です。上述のとおり、「蔓延」は感染症のような病気が広がるという意味で使われることがとても多いです。なので、もし熱病がわからなくても、「蔓延」という言葉を見れば、熱病の意味は感染力のある病気であることが予想できます。このように、意味を知っている単語が増えることで、他の言葉の意味も推測できるようになるのは、情報を得る上でとても役立ちます。
⑦知識階級のある一部まで蔓延している事は事実である
「知識階級」とは、高等な教育を受けて、知的労働に携わる人の意味で、いわゆる「インテリ」と呼ばれる人々のことです。この例文には主語がなく、なにが蔓延しているのか分からなくなっていますが、「蔓延」という言葉が使われていることで、何かよくない事柄が主語であることが分かります。
⑧社会全体に蔓延させる
これも上の文と同じく、主語がなくてもよくない事柄が主語になっていると分かる文になっています。このように、「蔓延」の意味を知っておくことで、文の意味がずっと分かりやすくなります。
⑨コレラが蔓延する
コレラの意味は細菌性の感染症で、下痢と嘔吐を繰り返す病気。コレラに汚染された食料や水を食べたり飲んだりすることで発症します。よって、結核やインフルエンザ同様、「蔓延」と一緒に使われる事が多いです。
⑩インフルエンザがクラスで蔓延している
最後は誰もが耳にしたことがあるフレーズです。ご存知の通り、インフルエンザも立派な感染力をもった病気という意味ですので、「蔓延する」という言い方が正しいです。
『蔓延』の類語を3つ紹介!
行き渡る
まずひとつ目の類語は『行き渡る』です。
この類語は社会全体に対して、広い範囲で影響を及ぼす時に使う「蔓延」と似た意味を持っていますが、『行き渡る』は「蔓延」と違い、良い影響を与える意味でもよく使われる類語なので、その違いを覚えておきましょう。使い方の例としては、「食料が行き渡る」「支援物資が難民キャンプに行き渡る」などがあります。
著聞
2つ目の類語はもしかしたら「蔓延」よりも聞き慣れない類語かもしれません。「著聞(ちょぶん)」とは『世間によく知られていること』という意味の言葉です。耳慣れない方も鎌倉時代の説話集である『古今著聞集』という作品は聞いたことがあるのではないでしょうか。『古今著聞集』は世間でよく知られているお話をまとめた本だということを覚えておけば、この言葉の意味も覚えやすくなりそうです。
広がる
最も簡単な類語です。「蔓延といわれても意味がどうにも覚えられない…」という方はこの類語を思い出して、「よくないことが広がる」という意味だと覚えておいてもよいでしょう。
『蔓延』の対義語を紹介!
類語の次は対義語の意味を学びましょう。上述のとおり、「蔓延」は「草などの植物が伸び広がること」と「病気や悪習などが広い範囲で社会に影響を及ぼすこと」の意味があります。よって、対義語は「物事がある所にたまってとどこおること」と表す「滞留」や「調子よく進行しないこと。また、不活発で進歩しないこと」を表す「停滞」となります。対義語の2つは、「台風で荷物が港に滞留する」「梅雨前線が南の海上で停滞している」という使い方をします。
『蔓延』を英語で言うと?
「蔓延」を英語にすると「spread(スプレッド)」という単語になります。この英語は他にも「体を伸ばしてくつろぐ」という意味もあります。では、早速英語での例文をいくつか紹介しますね。
・インフルエンザが学校で流行する。
Influenza spreads in the school.(インフルエンザ スプレッズ インザ スクール)
・医者は病気の蔓延を食い止めようとした。
The doctor tried to stay the spread of a disease.(ザ ドクター トライド トゥー スプレッド オブ ア デジーズ)
・ハエによって蔓延する病気もある。
Some diseases are spread by flies.(サム デジーズ アー スプレッド バイ フライズ)
海外でも「アウトブレイク」など、病気の蔓延を取り扱った映画が数多くあります。英語の意味や例文を知ると、そんな映画を見る時に聞いたことのあるフレーズや単語が英語で出てきて、より一層楽しめるかもしれませんね。
『蔓延』の意味を知って、知識を増やそう!
「蔓延」の意味や語源、類語と対義語、さらに英語では何と言うのかまでを学んできていかがだったでしょうか。今までよく知らないまま見聞きしていた「蔓延」という言葉ですが、これからはしっかりと意味を理解した上で使うことが出来そうですね。さらに、英語での言い方も学んだことで、海外の人に「日本は冬になるとインフルエンザが蔓延するんだ」なんて世間話も出来てしまいます。
他にも意外と知らない言葉や、知っているけど類語・対義語や英語で何というか分からないという言葉はまだまだあるはずです。もし疑問に思ったらすぐに調べて、自分の知識をどんどん増やしていきましょう。