『しっぽり』の意味や使い方！しっぽり飲むってどんな飲み方？

日本らしい情緒溢れる表現『しっぽり』は、どことなく古めかしく感じて、日常会話で使用する機会があまりないと思っていませんか？実は、『しっぽり』は、いろいろなシチュエーションで使えるとても便利な言葉。この『しっぽり』の意味や語源や使い方をご紹介しますので、是非、日常でも使用してみましょう。

『しっぽり』という言葉は、具体的なものを表したものではありませんが、その状況は目に浮かんできますよね。この『しっぽり』は「ばっさり」「すべすべ」といったオノマトペ（擬態語や擬音語など）のひとつです。

日本語には、『しっぽり』以外にも『しっとり』『ゆったり』などのように、オノマトペを使って状況を表します。日本語の音節はアイウエオの50音と「ガ」などの「濁音」、「パ」行の半濁音、「ニャ」などの拗音を合わせて「112」個。それに対して英語の音節は「3万」とも言われています。言語学者の分析によれば、少ない音節の種類を補うために、漢字では表現しにくいオノマトペを使用するようになったといわれています。

『しっぽり』という言葉には、「しっとりと全体的に十分ぬれるさま。また、雨が静かに降るさま。」という意味があります。同じぬれている状態を表す『びっしょり』は、ただ単にずぶぬれだという「状態」を表す言葉ですが、『しっぽり』は少ない水分から徐々に染み渡っていった「状況」を含んだ言葉になります。

男女間のロマンチックな様子を表して『しっぽり』を使う場合もあります。情を交し合った二人には、言葉はいりません。静かに見つめ合うだけで心が通いあっているのです。この静かに愛を育んでいる様子や情交、男女の秘め事を『しっぽり』と表現します。

日常的に使用しやすい意味は、この「落ち着いて静かなさま。しみじみ。」という意味で使う『しっぽり』。鄙びた風情ある温泉、静かなバーなど、大人がゆったりと和やかに過ごせるときに使うのにぴったりの言葉です。

では、『しっぽり』の語源を探ってみましょう。『しっぽり』は、享保の改革を実行した徳川吉宗が江戸幕府将軍だった1739年(元文4)4月に初演された人形浄瑠璃『ひらかな盛衰記』の中ですでに使われています。

「ひと精出してあとでの煙草。『しっぽり』と先づやりませうぞや（一生懸命仕事をしたあとのタバコ。まず『しっぽり（しみじみ）』とやりましょうか）」というセリフで、『しっぽり』が使われています。

『しっぽり』の語源は、「①十分ぬれるさま。しっとり。②情がこもって、しめやかなさま。」という意味の『しっぽ（と）』の語尾を変化したものと思われますが、この説以外にも次のような説があります。

・「しっとり」から『しっぽり』に変化した
・「しぼる」から『しっぽり』に変化した

このように『しっぽり』の語源ははっきりしていませんが、「じとじと→じっとり」「しとしと→しっとり」というように語尾の変化があることから「しぽしぽ→しっぽり」が語源という説が濃厚だと思われます。
「男女の愛情」と「しみじみ」といった意味で用いる『しっぽり』の語源は、「湿り気のある」ということから。「潤んだ瞳」には愛情を感じますし、「心が潤う」とリラックスしますよね。

①湿っているさま
②男女の愛情の細やかさ
③しみじみ
の意味を持つ『しっぽり』とよく似た言葉や対義語はどのような言葉があるでしょうか？①から③の『しっぽり』意味をふまえてご紹介します。

「しっとり 」「そぼそぼ 」「 しょぼしょぼ」

そぼぬれる（びっしょりぬれる）様子を表す『しっぽり』と同じ意味を持つ言葉です。この中でも「しょぼしょぼ」は、「疲れなどで、目をはっきりあけられず、しきりにまばたきをするさま。」「見るからにわびしそうなさま。」といったイメージが強いかもしれませんが、「雨が（あまり激しくなく）降りつづくさま。」を言い表す言葉でもあります。

「深間（ふかま）」「懇ろ（ねんごろ）」「ちんちんかもかも」

日本語の中でも少し古びた表現を使うと、男女間を表す『しっぽり』とよく似ている言葉になりますね。今風にいうと「いい仲」といったところでしょうか。どの言葉も時代劇や時代小説には出てきますが、現代の日常会話で使用する機会は減っています。

「ゆったり」「ゆらり」「じんわり」「ゆるり」

このような言葉が「しみじみ」の意味で使われる『しっぽり』に近い表現です。どの言葉も、ゆっくりと和やかで気張らることなく、おだやかな様子を表しています。

「ばさばさ」「からから」「ぱさぱさ」

水分がなく乾いた様子を表す言葉が『しっぽり』の対義語にあたります。潤いがなく、無味乾燥といったイメージですね。

「さばさばとしている」「ドライな」

「関係性が希薄」という意味を持つ言葉が、男女間を表す『しっぽり』の対義語にあたります。どちらの言葉も相手や物事にさほど興味を示さない様子を表した言葉ですから、愛情が豊潤な『しっぽり』とは、対義語といえるでしょう。

では、「しみじみ」を表す『しっぽり』の対義語にはどのようなものがあるでしょうか？物静かで落ち着いている『しっぽり』の反対の意味は、にぎやかで騒々しいということ。

「がやがや」「ワイワイ」「和気藹々（わきあいあい）」

といった言葉が「しみじみ」の意味を持つ『しっぽり』の対義語にあたります。

『しっぽり』という言葉をあまり使い慣れない人から見ると、この言葉はどこかの地方の方言のように思われるかもしれません。さきほど「『しっぽり』の意味」でもお伝えしたとおり、この意味での『しっぽり』は、方言ではありません。しかし、同じ音ですが違う意味を持つ『しっぽり』は北関東地方群馬県の方言にあるようです。

この方言『しっぽり』の語源は、「尻尾、切れ端」という意味。「しっぷり」ともいうとのこと。東北の方言は「いもっこ（いも）」などのように、名詞に「っこ・こ」を語尾につけますが、この名詞の語尾につく方言が、群馬の方言では「り」になっていると思われます。

方言『しっぽり』の使い方の例①
「ねこっこの『しっぽり』ふんだ。」（猫の尻尾をふんだ）

方言『しっぽり』の使い方の例②
「おさいがこーこのしっぽりか、こんなちっとんたべたりねーよ」
（おかずが漬物の尻尾か、こんな少しじゃ食べたりないよ）

群馬県のほかにも方言として『しっぽり』は使用されているかを調べましたが、『しっぽり』を方言で使用している例はみつかりませんでした。やはり、『しっぽり』は基本的に方言ではないようです。

段々と日本情緒豊かな言葉『しっぽり』を日常会話でも使ってみたいと思われた方もいるのではないでしょうか？『しっぽり』の使い方を例文でご紹介しますので、是非、ボキャブラリーに取り入れて日常にも取り入れてみて下さいね。

例文
・通り雨に傘も持たずに歩いたため、『しっぽり』と濡れてしまった。
・誰もいない公園の遊具が『しっぽり』濡れそぼって、どことなく寂しげにみえた。
・緊張していたせいか、気がつけば握り締めていた手の平が『しっぽり』と濡れていた。

このように、湿っている様子を表す『しっぽり』の使い方は、「濡れる」と一緒に使う場合が多いです。

 

例文
・例の二人は、人目のつかない場所で『しっぽり』といったようだ。
・さては、これから口説いた上に『しっぽり』しけこむ気なんだろう。
・あの二人は飲み会のあと、二人きりで『しっぽり』よろしくやっていたようだ。

大人のカップルが親密な様子や、二人きりで出かけるときに、『しっぽり』という使い方をします。

例文
・たまには一緒に『しっぽり』と差しで飲もうじゃないか。
・先週の休日は、鄙びた温泉で『しっぽり』してきました。
・急な仕事が入らなければ、今頃はおでん屋で『しっぽり』と飲んでいたのに。
・冬は、やっぱり、『しっぽり』こたつに入ってみかんでも食べるのがいい。

「しみじみ」「ゆったり」とくつろぐ様子や落ち着いた様子を表す『しっぽり』の使い方は、日常会話の中に取り入れやすいですね。

この情緒あふれる日本の言葉『しっぽり』を、ひとつの英単語で表現するのは難しいですが、『しっぽり』の持つ①湿っている②男女の愛情③しみじみの3つの意味に分けて、英語での表現をご紹介します。

・be wet throgh （しっぽり濡れる・ずぶ濡れになる）
例　"You are wet throgh." 「しっぽり濡れたな。」

・drip wet　（ずぶ濡れになる・しっぽり濡れる）
例　"She is dripping wet."「彼女はずぶ濡れだ。」

単純に濡れている様子を表す言葉"wet"が『しっぽり』に近いようです。

実は、『しっぽり』とよく似た意味を持つ言葉が英語にもあるんです。それは「親しい」「じっこんである」という意味の"intimate"。”intimate "の語源は、ラテン語で「最も内側の」という意味。最も内側といは、とても近しい関係で心を許せる仲ということ。

家族や友人、物に対しても使いますが、男女のロマンチックな関係を匂わす『しっぽり』と同じ意味で使うことが多いようです。また、"intimate"は、『しっぽり』と同じく「しみじみ」「くつろげる」「落ち着ける」といった意味にも使います。

・be on intimate terms with A（Aと親密な関係である）
例　"I am on intimate terms with her. "「彼女とは親密な関係だ。」

この例文を女性が言ったのなら、友人関係という意味になりますが、男性が言ったのなら、「性的な関係がある」の婉曲として使う場合が多いため、「しっぽり」という表現に近い言葉になります。

・be intimate
例　"She and I are intimate.”「彼女と私(男性）は『しっぽり』いっている仲だ。」

"intimate friends"といった場合は、ただ単に「親しい友人（ 男女の関係ではなく）」となるので、『しっぽり』する仲でない場合は、"friend(s)"をつけましょう。

・intimate （隠れ家的な）
例　"I know an intimate restaurant downtown."「『しっぽり』できるレストランが繁華街にあるよ。（知ってるよ。）」

男女間の関係と同じ”intimate "は、小さくて、満足できる、くつろげるようなものを指す使い方ができます。この”intimate "という言葉の語源は、ラテン語で「最も内側の」という意味。最も内側ということは、とても近しい関係で心を許せる仲ということ。「親しい」という意味で使われたり、「しみじみ」「くつろげる」「落ち着ける」といった意味にも使います。『しっぽり』とよく似た表現ではないでしょうか。

日本情緒豊かな『しっぽり』という言葉は、ゆったりと大人の時間を過ごすお酒を飲むシーンにぴったりの言葉です。たまには「しっぽり飲み」をして、大人の時間を静かに楽しんでみてはいかがでしょうか？

「しっぽり飲み」は、大勢集まって賑やかにお酒を飲む居酒屋とは違い、しみじみと飲む場合に使う言葉です。一人おだやかに日本酒を飲んだり、焼酎を飲んだりと好きな肴を愉しみながら飲む、大人ならではの遊びです。

「今夜は『しっぽり飲み』しませんか？」
もし、好きな人からこんなセリフを言われたらドキッとしてしまいますよね。カップルで『しっぽり』と飲むといったら、お互いに好意を持っているもの同士が、時間を気にせずに楽しく過ごすということ。恋する二人には、たとえ賑やかな居酒屋であろうとも、そこは落ち着けてくつろげる場所なのではないでしょうか。

学生時代の友人や同僚など、仲間と昔話をしながら飲むお酒も格別なもの。たとえ当時は苦しい思いをしていたとしても、今になっては懐かしい思い出に感じることでしょう。時にはしみじみと物思いにふけりながら、過去を語れば、昔の力が再びみなぎって明日への活力を養えます。

賑やかな居酒屋で一人きりで飲んでいると、『しっぽり』飲むというより、「ぽつん」とわびしく飲むというイメージになりがち。『しっぽり』飲むなら、静かに過ごせる場所が適しています。

最もくつろげる場所といえば、やはり自宅。いわゆる「宅飲み」が、『しっぽり』飲むのに一番適した場所といえるでしょう。日本酒やビール、ワインなど、好みのお酒をそろえて、時間を気にせずにゆっくりと飲める場所としても、「しっぽり飲み」に最適な場所です。

仕事や日常生活に疲れていれば、たまにはいつもと違う場所で現実逃避したくなるものです。おしゃれなバーで日常を忘れて、静かに『しっぽり』と飲めば、リラックスできるのではないでしょうか。

カップルで『しっぽり』飲むにも、おしゃれなバーはぴったりな場所です。非日常的な場所は、ロマンチックな舞台でもあるのです。

お酒を飲む以外にも、落ち着いてくつろぐ様子を表す『しっぽり』には使える場面が多々あります。日本の情緒たっぷりの『しっぽり』を使えるシチュエーションをご紹介します。

温泉大国日本には、ゆったりとくつろげる温泉地が数多くあります。温泉に『しっぽり』とつかって、リラックスする。そして温泉旅館で土地の美味しい食べ物とお酒を飲みながら、また『しっぽり』と過ごす。大人の休日の楽しみ方ですね。
 

お互いをよく知っている夫婦で、大人の旅をするのもいいですね。家ではなかなか話す時間もとれない二人でも、ゆったりと旅をしているうちに出会ったころを思い出していくのではないでしょうか。

日々の生活に追われていると、なかなか思い通りに自分だけの時間をとることが難しくなってきます。時にはひとり静かに『しっぽり』読書したり、お酒をかたむけながら映画をみたりなど、自分だけのための時間を作って『しっぽり』過ごしてみてはいかがでしょうか。