【西山事件とは?】事件の概要|毎日新聞の記者・西山太吉のその後

2012年に「運命の人」としてドラマ化もされた西山事件。日本政府とアメリカ合衆国の密約から始まった、昭和の日本を大きく震撼させた事件の一つですね。「報道の自由」と「人道」と「政治」が混ざりい今も尾をのこの事件を、この記事では振り返っていきましょう。

【西山事件とは?】事件の概要|毎日新聞の記者・西山太吉のその後のイメージ

目次

  1. 1西山事件とは?
  2. 2西山事件の概要・詳細
  3. 3西山太吉と蓮見喜久子が逮捕へ
  4. 4西山事件における世論の声は?
  5. 5西山事件の中核・西山太吉について
  6. 6西山太吉の裁判の行方は?
  7. 7西山事件に対する世間の反応、社会への影響
  8. 8西山太吉や女性事務官…西山事件関係者のその後
  9. 9西山事件はまだ終わっていないのかも

西山事件とは?

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西山事件とは、1972年に発生した毎日新聞社の歴史に残る不祥事の一つとされている情報漏えい事件です。沖縄密約事件及び外務省機密漏洩事件とも呼ばれています。

またこの事件は、数々の物的証拠や当時は暴かれなかった情報が2000年を過ぎた頃に次々と発覚している状態であり、21世紀になった今でも注目されているのが現状です。世紀をまたいで世間で注目されている案件の一つですね。

今日はそんな西山事件についてお伝えしていきます。

西山事件の概要・詳細

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第63代内閣総理大臣の佐藤栄作氏が総理大臣を勤めていた頃。通称第三次佐藤内閣の時代であった1971年。この時代はまだ沖縄県は日本に返還されておらず、世間は沖縄返還の話題で持ちきりでした。

なぜかと言えば、この時代はアメリカ合衆国と日本の間で沖縄返還協定が結ばれる直前であり、アメリカと日本の動向が世間のみならず世界で注目されていたからです。

沖縄返還協定の情報が漏洩?


この沖縄返還ですが、公式発表では地権者に対し400万ドルを土地原状回復費としてアメリカ合衆国が払うことになっていましたが、実際は日本が肩代わりをしてアメリカ合衆国に支払うという密約があると、毎日新聞社の政治記者である西山太吉記者が日本社会党の議員に情報を漏洩。

当時、この密約に対しても世間は不審の目を向けましたが、世間で一番の話題となったのはこの密約の情報を入手するにあたり、西山太吉記者が取った手段でした。

西山事件(にしやまじけん)は、1971年の沖縄返還協定にからみ、取材上知り得た機密情報を国会議員に漏洩した毎日新聞社政治部の西山太吉記者らが国家公務員法違反で有罪となった事件。別名、沖縄密約事件(おきなわみつやくじけん)、外務省機密漏洩事件(がいむしょうきみつろうえいじけん)。

情報入手のために関係者に性交渉!?


西山太吉記者はこの密約の情報を入手するために、既婚の外務省事務官である蓮見喜久子さんに接近。西山太吉記者も妻帯者であるにも関わらず泥酔させた上で半ば強引に性交渉におよび、その関係を盾にして外務省から機密文書を持ち出させ、西山太吉記者に提供させたと当時の検察側は主張しています。

第3次佐藤内閣の1971年、日米間で結ばれた沖縄返還協定に際し、「アメリカが地権者に支払う土地現状復旧費用400万米ドル(時価で約12億円)を日本国政府がアメリカ合衆国連邦政府に秘密裏に支払う」密約が存在するとの情報を、検察側の主張に拠れば西山は女性事務官に酒を飲ませて泥酔させた上で半ば強制的に肉体関係を結び、その関係を基に外務省極秘電文の複写を盗み出させ、これを得た。これは蔵相福田赳夫と米財務長官デヴィッド・M・ケネディとの会談内容であった。

密約の発覚により政府批判の流れに


こうして不当な手段で入手された情報は日本社会党に渡り、佐藤栄作総理大臣は国会で密約について追求される事となりました。当然、まだこの時は世論は西山太吉記者の情報入手の経緯を知らないので、政府への不信感が強まり批判される形となりました。

しかし佐藤栄作総理大臣はこの密約の内容を認めつつも、情報源を把握。把握後は社会党に対し強気に出て、西山太吉記者と蓮見喜久子さんを国家公務員法の疑いで起訴します。

西山太吉と蓮見喜久子が逮捕へ


国家公務員法で逮捕される形となった蓮見喜久子さんと西山太吉記者。それぞれ機密漏洩の罪と教唆の罪が罪状となります。

しかし当時、西山太吉記者はもとより毎日新聞社も報道の自由を主張し、政府批判を続ける形に。ただ、先程述べたような強引に性的関係に及んだという事実は、逮捕当時はまだ世論には知れ渡っていませんでした。

西山事件に対し当初の世論は?


毎日新聞社は西山太吉記者が性的関係に及んだ上で、脅しをかけて情報を入手したことは把握していたそうですが、この事実が表に出ることはないと考え、西山太吉記者の逮捕を言論弾圧であると武器にして更に政府に対して批判を展開。

この時は毎日新聞のみならず他の新聞社も政府批判を展開。世論が政府批判一色に染まりかけていましたが、事実の暴露によって風向きが変わります。

西山太吉の行動暴露で風向きが一変


しかし1972年の4月8日に週刊新潮が西山太吉記者の不倫関係をスクープ。東京地検特捜部の検事であった佐藤道郎検事が起訴状に性的交渉に及んだ事実を記載。こうして情報入手手段として強引に性的関係に及んだことが暴露され、世論は毎日新聞者批判の動きへと手のひらを返すこととなりました。

『週刊新潮』によって不倫関係がスクープされ、当時の東京地検特捜部の検事佐藤道夫が書いた起訴状に2人の男女関係を暴露する「ひそかに情を通じ、これを利用して」という言葉が記載されて、状況が一変したといわれる。

西山事件に対し毎日新聞社が謝罪へ


まさかこの不貞関係が表沙汰になると予測していなかった毎日新聞社。起訴状が提出された日に毎日新聞社としての見解とお詫びを掲載し、西山太吉記者の手段について謝罪すると共に、報道の自由に対する追求は変えないと表明。

以降、この西山事件は毎日新聞社で取り上げることはなくなりましたが世論はそれを許さず、毎日新聞社と西山太吉記者は引き続き批判を浴び続ける形となりました。

西山事件の争点は二人の問題へ


西山事件は確かに密約と言った政治的問題もあったのですが、それはまた別の話。以降、裁判においては男女関係の問題及び、性的関係に及んだ上での密約の入手の手段に争点が中心となり長く裁判で争うこととなりました。

以上が西山事件に対する詳細・概要となります。

西山事件における世論の声は?


この時代はネットもなく一般人の声が今の時代と違い非常に伝わりづらい時代。当時の世論の声は殆ど残っていませんが、今でも西山事件を知る人物や後年に知った人物の声を見ることはできます。


今の時代に西山事件の真相を知って不快になる人は大勢いらっしゃいます。やはり女性に対し強引に性交渉を行うということは批判もやむなしでしょう。たとえジャーナリズムの正義があったとしても、許されることではありません。

西山事件の中核・西山太吉について

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それではこの西山事件の中核となった毎日新聞社の西山太吉記者とはどんな人物だったかを見ていきましょう。

西山太吉記者は山口県下関市出身で、山口県立関西高等学校を卒業後、慶應義塾大学の大学院で法学研究科で政治を学んだ後に毎日新聞社政治記者に政治記者として入社。しかし西山事件をきっかけの1974年に退職され、実家の西山製菓株式会社で1991年にまで働いたのちに退職。それ以後はジャーナリストとして活動されています。

当時はネットも発達しておらず、西山事件に対する関与部分以外の情報は多いとは言えません。

西山太吉の裁判の行方は?

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裁判が始まる頃には政治的な意味ではなく、西山諭吉記者が蓮見喜久子さんに取った行動が世論の注目点となったこの西山事件ですが、女性事務官と西山太吉記者で全面的に争うこととなり、1972年に始まった裁判は1978年まで争うこととなりました。

西山太吉は無罪から有罪へ


一審で蓮見喜久子さんは懲役6ヶ月・執行猶予1年の判決を受けたものの西山太吉記者は無罪に。蓮見喜久子さんはこの有罪判決後に離婚に追い込まれ職を失う結果に。しかしこの夫妻は離婚後にも、週刊誌で西山太吉記者に対する批判を続けていました。

世論もここまでの経緯と蓮見喜久子さんが今回の案件でほぼすべてを失ってしまったことから、同情と西山太吉記者に対する批判を生む結果に。蓮見喜久子さんはメディアで西山太吉記者への批判を繰り返しているので、その効果も絶大でした。

こうして世論への批判の声が高まる中、二審では一転して蓮見喜久子さんの起訴内容の一部を有罪とし、西山太吉記者は懲役4ヶ月、執行猶予1年の有罪判決がくだされることとなりました。

西山事件の真相は不明のまま?


先程触れましたとおりに世論もメディアも争点が西山太吉記者と蓮見喜久子さんの展開に注目が集まっていて、事の発端となった密約に関しては当時は有耶無耶のままとなりました。検察側承認もこの裁判で「記憶にない」「守秘義務」を盾に密約については一切答えないままに終わっています。

女性事務官の証言では情報を漏洩させた後は、西山太吉記者は態度を急変し関係を解消したともありますが、西山太吉記者側の弁護士は最終弁論で女性事務官とは対等な関係であったと反論するなど、ハッキリしないままに現状に到っています。

しかし最高裁は西山太吉記者と蓮見喜久子さんの肉体関係に対し事実を認めています。

最高裁は「原判示対米請求権問題の財源については、日米双方の交渉担当者において、円滑な交渉妥結をはかるため、それぞれの対内関係の考慮上秘匿することを必要としたもののようであるが、憲法秩序に抵触するとまでいえるような違法秘密といわれるべきものではなく、実質的に秘密として保護するに値するもの」「当初から秘密文書を入手するための手段として利用する意図で女性の公務員と肉体関係を持ち、同女が右関係のため被告人の依頼を拒み難い心理状態に陥つたことに乗じて秘密文書を持ち出させたなど取材対象者の人格を著しく蹂躪した本件取材行為は、正当な取材活動の範囲を逸脱するものである」「報道機関といえども、取材に関し他人の権利・自由を不当に侵害することのできる特権を有するものでない」と判示し、秘密の正当性及び西山の取材活動について違法性と報道の自由が無制限ではないことを認めた。


こうして密約の真相は隠されたままに、西山事件は西山太吉記者の有罪を以って騒動は収まる形となったと思われましたが……。

2010年に西山事件の発端の密約の真相が発覚!?

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2010年3月に民主党政権が、西山事件の発端となった密約に対して事実であると公表し、再び西山事件に注目が集まりました。毎日新聞はこの密約に対する批判や、当時の西山太吉記者の正当性を主張するような動きを見せています。

しかし西山事件はその情報入手の手段が「既婚の女性事務官に酒を飲ませて強引に情報を漏洩させた」ことに批判が集まっていた事件であり、それは到底許されることではないし正当化できるものでも無いという声も根強いです。

西山事件に対する世間の反応、社会への影響


西山事件により世論の敵となった西山太吉記者の有罪を以って有識者の怒りはやや収まりましたが、西山事件をきっかけに毎日新聞に対し不買運動が起こり、発行部数が激減。それは1977年に到っても改善には至らず、債務超過により倒産へと追い込まれました。

その後保有していたTBS株の放出や進級分離方式などの様々な対策を打って経営再建を行っていますが、西山事件が残した傷跡は大きかったと言われています。

西山事件と西山太吉をモデルにした「運命の人」

2010年の再盛り上がりも影響したのか、西山事件をモデルにしたドラマ「運命の人」2012年1月15日から同年3月18日までTBSで放送されています。このドラマの原作は2005年から2009年にかけて5年連載されていた、山崎豊子さんによる同名の小説が原作となっています。
 


あらすじとしては当時の密約の暴露もあったからか、西山太吉記者寄りで描かれている物語のようですね。このドラマ「運命の人」に対し、西山事件を真相を知る方は快く思っていない人も存在しています。

そりゃあの「西山事件」の西山太吉を反権力のヒーローみたいにテレビドラマまで作って復活させたんだからwhttps://t.co/5lnC7dse3s
— pxf03241 (@pxf03241) 2019年1月16日

西山太吉や女性事務官…西山事件関係者のその後


蓮見喜久子さんは西山事件が終息後はメディアへの露出はなくなり、現在は既に亡くなられているようですね。一般人の方なので、没年はハッキリとしていません。

西山太吉記者は一審の後に毎日新聞を退社し故郷の家業を継いだ後に、1991年にジャーナリストへと転身。そして2005年に西山事件に対して一つの動きを見せます。
2000年にアメリカ合衆国側は密約の存在を示す文書を公の文章として公開しており、密約の存在が立証される形になりましたが、日本政府がその存在を認めたのは先に触れました通り、2009年となります。

しかし西山太吉記者は2005年に「密約の存在を知りながら違法に起訴された」と国家賠償請求訴訟を起こしていますが、判決は「20年経過で請求権なし」がくだされ、訴えを棄却しています。

2005年4月25日に西山は「密約の存在を知りながら違法に起訴された」として国家賠償請求訴訟を提起したが、2007年3月27日の東京地方裁判所で加藤謙一裁判長は、「損害賠償請求の20年の除斥期間を過ぎ、請求の権利がない」とし訴えを棄却、密約の存在には全く触れなかった。


直接西山事件とは関係がない案件ですが、西山太吉記者は政治に関わる講演も行っていますし、今も西山事件に対してテレビで弁舌を振るうこともあります。

西山事件はまだ終わっていないのかも

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現代においても西山太吉記者は政府批判を繰り返したり、西山太吉記者を支持する有志たちが情報公開や文章開示を日本政府に訴えたりと動きを見せています。

しかし裁判所はこの訴えに対し棄却を繰り返している状況で、その度に西山太吉記者は政府への批判を繰り返しているのが現状のようです。上記の講演で触れました通り、今も政治に関心が高いことも伺えます。また今も西山太吉記者は政治関係の番組に西山事件の件でゲスト出演されることも多いです。

西山事件はもう終わった事件ではなく、現代まで続いている事件なのかもしれませんね。

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