『下男』の意味や由来とは?色々な読み方や『下女』との違いも!
『下男』という言葉をご存知でしょうか。現代社会ではあまり使わない言葉『下男』は実は、ある時代においては頻繁に用いられていました。『下男』の意味や由来や読み方などと『下女』との違いなどを知ることは当時の時代背景を知ることにも繋がり得ます。
目次
現代でも下男は存在するの?
結論から言えば現代社会において『下男』は存在しません。なぜならば、『下男』はある時代において頻繁に用いられていた用語だからです。
『下男』の意味とは?
『下男』には2つの意味があります。『下男』の有する2つの意味をしっかりと捉えておくことにしましょう。
意味①雇われて雑用をする男
雇われて雑用をする男『下男』が多く存在した時代と言うのは、江戸時代です。江戸時代には身分の低い人間が身分の高い人間に仕えることはそう稀ではありませんでした。言い換えると身分の高い人間に雇われて雑用をする男を『下男』といいます。
『下男』は言わば奴隷のような存在です。雑用係と言い換えることもできます。大切な業務とは言うものの日々雑用ばかりをこなさなくてはならないと言うのは正直キツイ仕事とも言えます。
もちろん身分の低い人間に身分の低い人間を雇うことなど不可能です。身分の低い人間は雑用など自分でこなさなくてはなりません。故に、『下男』と呼ばれ、雇われて雑用する男は身分の高い人間ありきの存在なのです。
意味②江戸幕府の職名
もう1つの意味である雇われて雑用をする男にも職業としての意味は込められています。ただし、こちらは江戸幕府に限定された職名です。単に仕事をさせる意味で男を雇うこともあるでしょう。それならば、今の時代と何ら変わりありません。
『下男』の意味に雇われて雑用する男の他に江戸幕府の職名という意味があるというのは、それほどまでに江戸幕府の身分の高低差の意味合いが色濃いことまでをも意味します。単に雑用をさせるために男を雇うだけならば何も、職業にする必要はないのです。
古語としての『下男』の意味とは?
『下男』は『をとこ』や『をのこ』が有する意味の1つでもあります。『下男』の読み方に関しては古語読みでも現代語読みでも殆ど変わらないと言えますが、『男子』や『男』は異なります。『男子』や『男』の古語読みは『をとこ』や『をのこ』です。
『男子』や『男』の古語読み『をとこ』や『をのこ』は若い男、男、男の子、殿上人、夫、在俗男性など複数の意味を有します。その中で『をとこ』や『をのこ』と古語読みし、『下男』の意味で捉える場合の意味は『召使い』と同様と言えます。
ちなみに、『をとこ』に対応する言葉が『をとめ』や『をんな』です。『をとめ』は『少女』や『乙女』の古語読みで『をとめこ』とされる場合もある言葉です。『をんな』は『女』の古語読みで老女を意味する『おんな』とは別の言葉です。
『下男』の語源や由来は?
語源や由来は様々な役割を担います。言葉の語源や由来を知ることは『下男』という言葉に精通した人間になるための近道と言っても過言ではないのです。語源や由来を把握することから始めて『下男』の起源的な意味、現代まで経てきた筋道などたどります。
いつ頃使われていた言葉なの?
『下男』は江戸時代の後期に使われていた言葉です。『下男』とよく似た言葉、『下女』に関しても同様です。『下男』や『下女』の言葉の由来は江戸時代の初期、前期、中期にまで遡ります。
江戸時代の初期、前期、中期にも、『下男』や『下女』と同じ意味合いを有する言葉が存在しました。『奉公人』や『下人』です。『奉公人』や『下人』が廃れて『下男』や『下女』という言葉が誕生した、これが『下男』や『下女』の由来であり、語源です。
どんな職業だった?
現代では雑用と聞けばコピー取りやお茶くみなどを連想するのが常ですが、実際には違います。『下男』という職業は今の時代で言うところの雑用専門の肉体労働です。
職業である『下男』ですが、江戸時代に最低賃金は存在していません。給料の支払い義務が雇用主にあるわけでもありません。『下男』という職業に就いているもかかわらず給料がもらえないことを訴える先もありません。
『下男』の色々な読み方を9つ紹介!
ところで、『下男』の読み方はご存知でしょうか。『下男』と言う言葉自体目にしたことがあるものの読み方まではと言う方も少なくはないのではないでしょうか。そこで、『下男』の読み方について紹介します。『下男』への理解も、より一層深まることでしょう。
①げなん
結論から言えば『下男』の読み方は『げなん』が正解です。意味を変えれば他の読み方もできますが、雇われて雑用をする男、江戸幕府の職名、の意味を有する言葉『下男』の読み方は『げなん』です。
『下男』に用いられている漢字『下』の音読みには『か』、『げ』、『男』の音読みには『だん』、『なん』という読み方があります。『老若男女』の『なん』と同じ読み方です。
②しもべ
『下男』を『しもべ』と読むためには『男』を『べ』と読む必要があります。ですが、残念なことに『男』の音読みには『だん』や『なん』という読み方しかありません。そのため、『下男』を『しもべ』と呼ぶことは物理的に不可能です。
③しもをとこ
『下男』は江戸時代に用いられた言葉ですが、江戸時代よりも前の平安時代には『をとこ』と言う言葉が存在していた記録があります。そのため、『下男』の『男』を『おとこ』と読む場合には『しもをとこ』と言う読み方でもおかしくはないと言えます。
ただ、先に述べた通り、雇われて雑用をする男、江戸幕府の職名の意味を持つ『下男』の読み方は、『げなん』が一般的です。あくまで『しもおとこ』と読める場合の古語読みが『しもをとこ』であると、認識しておけば良いでしょう。
④あなた
『下男』は『あなた』とは読めません。キラキラネームではないので『下男』という言葉に『あなた』という言葉を当てはめることは不可能です。ただ、『下男』の雇用先のオーナーがマダムで『下男』のことを『あなた』と呼ぶケースなどは否定できません。
⑤げだん
『下男』を『げだん』と読むのは小説などの中だけの話で実際に『げだん』と読むことはできません。確かに『下』は『げ』、『男』は『だん』と読むことができますが、残念ながら『下男』の読み方は『げだん』ではありません。
⑥でかん
『でかん』は、『下男』の読み方の一つとされています。多く南九州地方において『下男』は『でかん』と呼ばれていました。これは今で言うところの方言のようなもので単に読み方が異なるだけであり、意味までは変わりません。
そもそも『下男』は江戸時代に用いられていた言葉です。江戸と言えば東京、東京の身分の高い人間や身分の低い人間により、使用されていた言葉と見て取ることは可能です。にもかかわらず南九州地方において『下男』の別の呼び名が存在していたのです。
⑦しもおとこ
『下男』を『しもおとこ』と読ませる場合には少し意味が異なります。『しもおとこ』の意味は下働きの男、召使いの男などです。『しもおとこ』と言う読み方が、江戸幕府内において流通していた訳でもありません。
では、どのような『しもおとこ』と言う読み方がどのような状況下で用いられていたかと言うと奉公人です。江戸時代には江戸幕府以外にも、武家や商家などに奉公に出る人がいた訳でそのような男のことを『下男』、『しもおとこ』と呼び示していました。
⑧ジヨンゴス
そのままの読み方で『下男』を『ジョンゴス』と読むことは不可能です。ただ、小説などでは『下男』を『ジョンゴス』などと読ませることがあります。『下男』を『ジョンゴス』と読ませたのは林芙美子著の「ボルネオ ダイヤ」で明治時代の作品です。
軍醫や兵隊が去つてゆくと、酒田が下男ジヨンゴスを
⑨ボオイ
『下男』の読み方が『ボオイ』な作品は芥川龍之介著の「母」です。わずか11歳の時に母を亡くし、養子として育てられた芥川龍之介がどのような想いで「母」というタイトルの小説を書き、『下男』を『ボオイ』と読ませたか、おすすめです。
『下男』の類語や言い換え表現を5つ紹介!
『下男』はどのような言葉へと言い換えることができるでしょう。『下男』と似たような意味合いを有する言葉を沢山頭に入れておけば、語彙力の強化に繋がります。ボキャブラリーは少なくて困ることはありません。
下人
先に述べた通り、『下男』は『下人』や『奉公人』が転じて生じた言葉です。故に、『下男』と『下人』とは殆ど同じ意味を有します。『下人』が『下男』の類語であるわけではないので『下男』を用いる場合に『下人』を用いることは可能と言えば可能です。
ただし、『下人』が『下男』と呼ばれる前の言葉であること、『下男』にも『下女』にも該当する言葉であることは頭に入れておくと良いでしょう。
奉公人
『奉公人』に関しては『下人』と同様です。『奉公人』は他人の家に召使われている人、『下人』は特に召使やしもべなどの身分の低い者を意味する言葉です。『下男』の類語ではないですが、ともに『下男』の語源となる言葉です。
下僕
『下僕』とは『召使い』、『下男』などを意味する言葉です。故に、『下男』は『下僕』へと置き換えることが可能です。
また、『下僕』とよく似た言葉『僕』は『下男』の類語です。類語と言うからには『僕』は『下男』と殆ど変わらない意味を有します。『下僕』と『僕』とは似て非なるものです。取扱には十分に注意しましょう。
召使い
『召使い』は雑用をするために雇われている者を意味する言葉です。故に、『下男』の類語と捉えられています。『下男』の類語であるからには、雑用をするために雇われている者を意味する場合に用いることが可能です。
『召使い』はシンデレラの立場としてよく知られている言葉です。プリンセスのヒロイン感に酔い痴れるならばディズニーの映画「シンデレラ」のサウンドトラックがおすすめです。
お手伝いさん
『お手伝い』とは手伝いをするために雇われる人という意味を有する言葉でもあります。『下男』がするのはお手伝いではなくて雑用ですが、雑用も手伝いのうちと捉えれば『下男』の『お手伝い』への言い換えも強ち間違いではありません。
『下男』と『下女』の違いとは?
『下女』は『下男』の類語で対義語です。『下女』と『下男』とは同等の意味で用いられることもあれば、真逆の意味を有する言葉として捉えられることもある言葉です。なお、『下女』の類語は『下男』の他に下働き、召使い、僕などです。
『下女』はどんな職業だった?
『下男』と同じ意味で用いられる『下女』は雇われて雑用をする女を意味します。『下女』が個別に有する意味『女中』にはその他の意味もあります。武家の殿中に奉公する、旅館や料理屋で客への雑用を担う、現代で言うところの『お手伝いさん』などです。
『下女』の読み方とは?
『下男』は『げなん』や『でかん』と読めますが、『下女』にはただ1つの読み方しか存在しません。『下』も『女』も音読みで『女』は『にょ』や『にょう』ではなくて『じょ』、詰まる所『下女』は『げじょ』と読むのが正解です。
『下男』の恋愛事情は?
『下男』の恋愛は基本的にはフリーダムです。『下男』だから恋愛をしてはならないなどの掟は設けられていませんでした。故に、『下男』が江戸時代の職業であれども、恋愛を禁止される事態には陥り得ない訳です。
自らが『下男』であることが恋愛の妨げになることもあれば反対に恋愛を後押しする場合もあり、『下男』の恋愛事情に関しては本当に人それぞれです。恋愛を楽しむ『下男』も恋愛は女性がするものだと決めつけてかかる『下男』もいたことでしょう。
『下男』の意味や由来を知って豆知識を増やそう!
『下男』を豆知識として捉えることは当時の人間からしてみれば、『下男』を見下す行為に値するでしょう。とは言うものの今は江戸時代ではありません。『下男』という言葉の由来や意味を理解しておくことは、今を知るために昔を知る上でも役立ちます。