『適応』の意味を徹底解説!使い方や類語、『適用』との違いも解説!
『適応』というこの言葉をどのような時に使っていますか。生活の中では「うまくいった」と表現していますね。そこで適応の意味を生物学や、精神医学、制御工学ではどのように使っているのか、「適用」との違いも含めてその意味を捉えなおしてみましょう。
目次
『適応』の意味とは?
『適応』の意味は
イメージはある形にピッタリはまった状態でしょうか?!周囲の状況や条件などによく合うこと、よく合った行動や考え方ができる、できた場合と行動や考え方が変わった場合にも用いられる用語です。適応の意味は「状況にかなう」「ふさわしい」「あてはまる」といった表現に使える意味をもっています。使い方がとても似ている類語もいくつかあり「適用」はその一つです。
生物学用語としての『適応』の意味とは
生物学(英語:biology)とは動物?
生物学(biology)は広く動物、植物、微生物に至る生き物を対象とした学問です。話題のiPS細胞やゲノム解析も含まれています。動物、植物、微生物の現象を色々な手法を用いて研究しているのです。その手法から例をあげると解剖してみる解剖学(anatomy)や生物がどのように発生したかを観察する発生学(embryology)があり哺乳類の胎児を対象とした胎生学(embryology)も含まれています。生態学では生命の生理現象を科学的に観察する生化学(biochemistry)、遺伝子とその進化を観る遺伝学(genetics)も含みます。
生物の進化は適応した結果?
地球上に現在生存している生物は環境の変化に応じて生体の形態や機能、習性などを長い年月をかけて変化させて生きてきました。言いかえると環境に適応してきたということです。人間の祖先はネズミだとされ、哺乳類がどうして体の中で子どもを育てるようになったかという回答にもつながります。恐竜が今は鳥類になっているとされる学説も面白い適応の過程を示して興味がわきます。反対に古生代石炭紀の地層から現在のゴキブリの形態と変わりない化石が見つかったと聞くと環境に「よく合う」「よく合った」状態を手に入れている適応性の良い生体であった凄さに感動させられます。
哺乳類の英語表記:mammalian
生物学用語としての『適応』の意味
生物がある状況から違う状況に移されたとき、生物がもってる自己の特性を変えて新しい状況に合うように調節し直すことを適応したという使い方をしています。環境に慣れて生活できているとか繁殖できている場合を生物学では適応できたとして、この「適応」という用語が使われます。しかし遺伝的な変化のない1代限りの場合は適応の意味ではなく類語の「順応している」を使った方が良いようです。
精神医学用語としての『適応』の意味とは
精神医学(英語:psychiatry)とは
心はどこにあるのかと尋ねられたら、脳の働きを意味しているのだと答えられますか。古くは、精神医学(psychiatry)は精神病学と呼ばれ異常な精神状態の診断や治療、予防を目的としていた学問でした。第二次世界大戦以後は精神の諸問題を広く扱うようになって精神医学という呼び名に代わり一般化しました。中世の「魔女狩り」や「座敷牢」も精神医学に関連する逸話として有名です。日本の精神医療は19世紀になって治療が本格化し、1900年に『精神病者監護法』という法律もできています。
適応という意味のある病名
精神科領域で「適応」が使われている病名に「適応障害」があります。適応障害という病名の用語はストレスが原因で引き起こされる情緒面や行動面にでる症状によって、社会生活が著しく障害されている状態と定義(『IDC-10』,世界保健機構の診断ガイドライン)されているものです。ストレスになった出来事にうまく対処できず気分が沈んだり不安が強く社会生活に影響が出ている状況を意味していて不安症や抑うつ障害とは違いがあり区別されています。しかし他人の権利の侵害や無断欠勤、破壊行為など社会的ルールを無視するような人格の変化も目立つことがあります。
制御工学用語としての『適応』の意味とは
制御工学(英語:control engineering)とは
制御工学(control engineering)は機械を自動で動かすための動作を解析して応用する学問です。機械の動きを自動制御することで生産の効率化を図ることができます。自動制御(automatic:オートマティック)させるには動きに影響する温度、圧力、流量、位置、速度といった条件を解析して動作に適合させる制御システムを構築していきます。工場の生産ラインのような仕組みから倉庫内を移動して荷物を棚から選び出して所定の位置まで運ぶことをする機械や病院内を患者さんに付き添って案内できる移動能力を備えたものまであり、今では人工知能を適用したロボットを見る機会も増えて、愛くるしいしぐさに興味を引かれる分野になっています。
制御工学と脳機能の応用
人間の行動には中枢神経と呼ばれる脳と末梢神経と呼ばれる神経回路があるのですが生物学的に動作は筋肉と骨の動きをいいます。動作の仕組みは人に存在する感覚器(目、鼻、耳、皮膚など)が受けた感覚刺激を電気信号に変えて神経を経由して脳に伝えています。脳は受け取った情報を瞬時に処理して筋肉に伝えることで動作が成立します。
機械にこの動きを適応させるにはコントローラーとなる脳の働きと感覚器の役目をするセンサー、そして情報に応じて動く筋肉に代わるものを作り上げ適合させていきます。制御系では変数となるパラメータ値が固定されているものと目的値の変化や未知の特性を推定して適正化する適応制御と呼ばれるものがあります。これには周囲の環境条件の変化にも対応できる制御機能と環境条件の変化を検知する装置と設計基準値などを変更できるアルゴリズムを備えています。
制御工学における適応の意味
相手の動きを自分の思うように支配する意味をもつ「制御」。制御工学は機械を目的にあった動作に適合させ、動作を操る、あるいはその動作を調整する努力をしていくので動作の再現を目的にした様子を説明する場合に「適応」の意味する「状況にかなう」「ふさわしい」「あてはめる」を使っています。類語の「適用」は実際に制御機能を当てはめた時やその予定があるときに使うことになります。
『適応』の使い方と例文を紹介!
それでは、「適応」と「適用」の使い方の例を挙げてみましょう。適応は状況にあてはめた様子がイメージできれば良く。適用は使っている状態の動作がイメージできるように表現できれば完璧ですね。
<適応:実際の動作が伴わない様子をイメージできる>
・この人に生活保護を適応します。
・新しい職場に適応できるか心配です。
・メダカは新しい住家に適応してくれた。
・設計変更をこの機会に適応する。
<適用:実際の動きが伴っている場合のイメージができる>
・この人に生活保護が適用できるかを検討した。
・新しい職場に適用できるシステムを作り上げた。
・メダカの新しい住家に酸素を適用した。
・設計変更をこの機会に適用した。
『適応』の類語は?
類語①適合
「適応」のもつ5つの意義素のうち「適合」という類語は新しい状況や異なったところにぴったり当てはまっている、ふさわしい状況の場合の意味としての使い方がされる用語です。「適合」は「適応」よりも十分にピッタリという過不足なくの意味が強調された使い方がされている用語です。
類語②合致
「適応」の5つの意義素のうち類語である「合致」はある認められた基準に従う、一致する意味としての使い方がされる用語です。
『適応』を英語で表記するとどうなる?
「ある条件や状況にうまく合う」という意味をもつ言葉の類語には「適合」「該当」「適応」「相当」「即応」「順応」があります。
- 「適応」「適合」「順応」の共通の意味は、ある条件、状況にうまく合うこと。
- 「適用」「応用」の共通の意味は、あてはめて用いること。
適応の意味に近い類語は、英語のadaptationが使える「適応」「適合「順応」があり、「適用」と「応用」はapplicationの使い方をするので英語の表現では「適応」は「順応」に近い言葉になっているが、上述の生物学的な使い方において区別したように1代限りの変化については「適応」は使わず「順応」を使う決まりがあるので使い方には注意が必要である。
紛らわしい『適応』と『適用』の違いを分かりやすく解説!
適応の意味は状況にかなって、ふさわしい様子を示しています。一方、類語の適用の意味は個々の事例や現象に当てはめて使う、用いる、用いている現象までも表す用語です。違いは「用いる」という動きがイメージできる意味の現象が有るか無いかの違いです。適応は法律やルールが利用できるだけの意味ですが「適用」は「使う」「作業する」という動作のイメージが加わっています。
精神医学の病名にある「適応障害」が類語の「適用」を用いず「ふさわしい」の意味のある使い方を適合させているのも理解できるのではないでしょうか。
適応障害の英語表記:adjustment disorder
『適応』と『適合』の違いとは?
「適応」の意義素には5つあり、そのうち「適合」も状況にピッタリはまった意味をもつ用語ということですが意味の違いはどうなっているのでしょうか。「適応」より「適合」の方がピッタリ感が強い場合に適用する用語です。十分にピッタリの意味になるので過不足の違いということですね。
英語のadaptation: 「適応」「適合「順応」
『適応』と『順応』の違いとは?
適応も順応もある条件や状況にうまく合っている意味で用いる用語ですが「順応」には持続的に、自然にはまっていくような(適合)意味があります。「適応」はうまく合わせる積極的な面が強いようです。
『適応』の意味を正しく理解しよう!
ことばから湧き上がるイメージが大切ですが類語も多くあるので文章全体から受け取る方が楽かもしれません。でも言葉には比喩的な使い方をする場合もあるので助詞や動詞を変えて意図する使い方に「適応」させてみてください。素敵なコミュニケーションができるといいですね。