ステレオタイプの意味や使い方とは?類義語や対義語も知っておこう!
『ステレオタイプ』という言葉になじみのない方もおられるかと思います。一体『ステレオタイプ』という言葉はどういった意味を持つのでしょうか?ここでは、この言葉の意味やその類義語や対義語、語源、そして使い方を心理学の面からも詳しく解説していきたいと思います。
目次
『ステレオタイプ』の意味や語源とは?
『ステレオタイプ』という言葉を、耳にしたことがありますか?
「A型は几帳面だ」「大学の教授はまじめだ」「イタリア人は陽気だ」などということがこれに当てはまります。
ここでは、『ステレオタイプ』という言葉の詳しい意味や語源をお伝えしたいと思います。
『ステレオタイプ』の語源
『ステレオタイプ』の元々の語源は、「同じ鋳型から打ち出された鉛板」という意味です。
古い活字印刷の時代に「鉛板」で刷っていた際の「版」のことを「ステレオ」と呼んでいました。それが語源で、『ステレオタイプ』といった、”判で押した”ような同じイメージを持つ人々という意味合いで使われています。
今も、「鉛板」という元々の印刷用語の語源の意味もありますが、現在は、ここで紹介する社会学における意味の方がよく使われています。
『ステレオタイプ』の意味
『ステレオタイプ(英・stereotype)』とは、社会や集団の中で当たり前のように浸透している考え方や固定された物の見方、先入観や認知、思い込みのことを言います。
人は、他者をどのような人物か考える際、性別や人種、職業などのイメージから判断してしまうことがあります。
ここで言うところの『ステレオタイプ』とは、理解したい対象にあてはめる思考、典型的で固定化されたイメージのことを『ステレオタイプ』と言います。
つまり、『ステレオタイプ』とは、その文化や社会において人々が共有されているカテゴリーなのです。
『ステレオタイプ』の類義語は?
ステレオタイプの言葉の類義語は、「固定観念(fixed idea)」「既成概念(preconceived idea)」「典型的(exemplary)」というものがあります。
そもそもステレオタイプの根底には、人の偏ったイメージがあるので、こうした「固定観念」「既成概念」「典型的」は払拭することが難しく、差別につながる原因にもなります。
『ステレオタイプ』の対義語は?
英語のstereotypeの対義語としては、「counter-stereotyp(反ステレオタイプ)」「reverse stereotype(逆ステレオタイプ)」などが挙げられます。
ステレオタイプという言葉は、フランス語が語源です。日本語では、ステレオタイプ自体の対義語はなく、自由な、型にはまらないものの味方(思考、概念、観念)などと表現することがありますが、ピッタリ合う日本語での対義語はないようです。
『ステレオタイプ』と似ている言葉との違いを2つ紹介!
①偏見
「偏見」とは、特定の集団に対する否定的な”態度”のことです。
態度の三要素説によれば”認知”・”感情”・”行動”が態度を構成するといわれています。
また、偏見は認知的な要素と感情的な要素を併せ持ったもので、否定的な態度のうち、「行動的要素」に意味を限定したものが”差別”です。
偏見の「認知的要素」とは、対象集団の成員行動に関する”信念”や”期待”のことをさします。
一方、ステレオタイプは、偏見の認知的要素が集団成員全般に一般化されたものです。
偏見というと否定的態度に意味内容が限定されるのに対して、ステレオタイプは肯定的態度の認知的要素も含んでいます。
かみ砕いた言い方をすると、『ステレオタイプ』は「偏見や差別を誘発、助長する一般化された観念」
”偏見”は「断片的な(否定的な)知識や外見、自分の経験などでマイナスイメージを抱き何らかの態度に出すこと。」であると言えます。
②タブロイド思考
”タブロイド思考”(別名、周辺ルート思考とも呼ばれる)とは、複雑な物事について、皮相的に単純化、類型化して把握する志向の傾向のことです。
理解が難しい複雑な事象や出来事に直面したとき、何が原因であるかを深く考え分析せず単純化・類型化した情報のみで理解した気になることです。偏った見方といえば、ステレオタイプと共通しています。
しかし、ステレオタイプが日常のあらゆる場面で起こっているのに対して、タブロイド思考は、自分の能力では理解が難しい状況や物事に遭遇したときに陥りやすいという点が、ステレオタイプとタブロイド思考の違いと言えます。
どうやって使う?『ステレオタイプ』を使った例文10選!
では、実際『ステレオタイプ』とは、どのような時に使われているのでしょうか?
ステレオタイプ的やステレオタイプ化、ステレオタイプなイメージやステレオタイプな人物などの使い方をしますが、ここでは具体的な例文を10選あげました。以下の例文を理解の参考にされてはいかがでしょうか。
肯定的な『ステレオタイプ』の使い方
・ステレオタイプ的に物事を考えることで、思考の短縮を図り瞬時に適切な判断をすることができる。
・黒人は怖いと思っていたことが、実際関わるうちに私のステレオタイプだと気づく。
世の中の情勢で使う『ステレオタイプ』の使い方
・主に、ステレオタイプな人種描写が戦意高揚を意図したプロパガンダとなっている。
・世の中の世論が変わってきたら、○○さんのステレオタイプもそれに合わせて変わってきた。
・ステレオタイプは、時として冤罪を生む危険性がある。
・ステレオタイプ的な理解は極端な理解の仕方なので、人間を人間として見ようという視点はない。よって、偏見や差別を生み出す原因となりうる。
生活や趣味で使う『ステレオタイプ』の使い方
・せっかく入ってきた新しい情報も、今までのステレオタイプに合わせようとするので全く違った情報を受け取ることになる。
・漫画『ワンピース』は主人公ルフィーが海賊のステレオタイプのイメージから外れたところが面白い。
・このドラマに登場する教師は、熱血教師のステレオタイプのようだ。
・自ら抱いていたA型のステレオタイプと、○○さんの性格は重ね合わせることができなかった。
以上、ステレオタイプを使った例文でしたが、明日からでも使えそうな例文はありましたでしょうか?
例文のステレオタイプの使い方は、これから説明するステレオタイプの代表的な使い方と具体例を理解されたら、より意味を理解して使っていただけると思います。例文も、しっかり意味を理解して使っていただけたらと思います。
『ステレオタイプ』代表的な使い方と具体例10選!
ステレオタイプは数知れず存在しますが、ここでは、代表的な使い方と具体例の10選を紹介したいと思います。
①性別
「男性らしい」「女性らしい」という言葉で象徴されるように、男性のイメージはこうだ、女性のイメージはこうだ、あるいは、”こうあるべき”という風潮からもステレオタイプが存在します。
こうした”らしさ”や”あるべき姿”という共通のイメージが頭に浮かべられることが、性別をステレオタイプなイメージで見ているということですね。
「男性らしい」という言葉の意味には、頼もしい、力強い、威厳があるなどといったものがあります。
また、「女性らしい」という言葉の意味には、おしとやか、気が利く、愛嬌があるなどといったものがありますね。
こうした言葉以外にも、ステレオタイプ的な表現をする言葉があります。
男性の例としては、暴力的、デリカシーがない、などがあります。
女性の例としては、おしゃべり、わがまま、などがありますね。
必ずしも、男性だから威厳があったりするわけではなく、女性だから気が利くなんてことはなく、個人の性格であるのに関わらず、男性、女性というくくりで捉える見方を多くの人がしているステレオタイプです。
性別のステレオタイプの対義語は「男性らしくない」「女性らしくない」という「…らしくない」と言われています。
②血液型
血液型ステレオタイプとは、血液型と性格特性の間には関連があるということを前提に、「A型は繊細」「B型はマイペース」「O型はおおらか」「AB型は天才か変人か」…などという固定観念です。血液型によって性格を規定する見方や捉え方を助長するものであると言えます。
科学的根拠は何もなく諸外国ではあまり信じられていないのですが、日本では2004年頃にマスメディアが多く取り扱い、まだまだ、多くの人が持っているステレオタイプです。
血液型のステレオタイプの対義語は「A型のように見えない」「B型のように見えない」など、「○型のように見えない」と言われています。
③人種・国籍
人種や国籍のステレオタイプは、一昔前に比べては表面化することも少なくなりましたが、今でも根強く残り、このようなステレオタイプは数多く存在します。代表的な例では、「貪欲なユダヤ人」「黒人はギャング、貧しい」「卑劣な中国人」などがあります。
このような人種や国籍のステレオタイプはその人種や国の「印象」からイメージを作っていきます。
また、人種や国籍のステレオタイプは、悪口の常套句で偏見が多くあり、すべて個人の性格を省いたイメージであると言えます。
④地域
地域に関するステレオタイプも多くあります。下記、日本を例で挙げてみました。
名古屋:好きな食べ物は味噌カツとえびふりゃー。「んみゃ!」と言って食べる。
関西:大阪のおばちゃんは飴を持っている、笑わせ好き。義理人情がある、阪神ファン。
九州:表向きは亭主関白、実はかみさんの尻に敷かれている。西郷隆盛を尊敬している。
地域のステレオタイプは、マスメディアから大きな影響を得て、その土地柄や特産物、文化や歴史上の人物なども地域のイメージとして広がり、根強く残っているようですね。
⑤仕事
仕事に関するステレオタイプは、国や地域によっても大きな違いが見られますが、何らかのステレオタイプが存在します。例えば、看護師は優しい、女の仕事。大学教授は変わった人が多い、まじめ、理屈っぽい。スポーツ選手はスポーツ万能だが勉強はできないなどということが言われています。
このようなことは言うまでもなく、あくまでその職業の「イメージ」であり、一律にあてはまるものではありません。
⑥国の情勢
国の情勢に対しても、ステレオタイプが存在します。
例えば、イラン人に対して「みんながテロリストである」やイスラエル人は徴兵制でイスラエル軍が強いという観念があるため「すべての人間が強い」というステレオタイプもあります。スイス人は中立国であるため、自警の国のため「警戒心が強い」ということも言われたりします。
その国に対してよく知らないうちに持つ、勝手なイメージですが、一方的に決めつけるのは避けたいものです。
⑦歴史
歴史に関するステレオタイプは多くあります。言い換えれば、歴史が生み出したステレオタイプと言えます。
諸外国の例では、ノルウェーは海賊がいた歴史があるため、「荒っぽい」といわれたり、オーストラリアはイギリスの流刑地という歴史があるため、イギリス本土から揶揄される場合もあります。
歴史に関しては、あまり良い意味はなく歴史的差別に当たるものも多いので、言葉として使うべきでないものもあります。
⑧世代
世の中には、世代で分けられた考え方にも、ステレオタイプが存在します。
例えば、「バブル世代」「氷河期世代」「団塊の世代」や「ゆとり世代」という言い方で区分されたりします。そして、最近は「さとり世代」という言葉でも表されています。
これらは、その時代の社会情勢や政治、経済状況を反映されたステレオタイプです。これらのほとんどが、マスメディアが作りあげた世代の名称で、固定概念であります。
⑨年齢
”ジェネレーションギャップ”という言葉にも表されるように、年齢にもステレオタイプが存在します。
有名な孔子の「論語」により年代についての区分が、30代は「独立」の年代、40代は「安定」50代は「天命を知る」というものがあります。
こうしたものも、理想論であったりしますが、この考えより30代になれば「30歳にもなるのに結婚もしていない。」などと言うのは、意識の中にこのステレオタイプが存在すると考えられますね。
⑩文系or理系
文系や理系といった、学習面で個人の得意分野によってもステレオタイプが存在します。
例えば、「文系だから、本をよく読んでいる(好きだ)」「文系だから数字に弱い」や「理系だから計算が早い」「理系だから説明が下手」というものになります。
『ステレオタイプ』は使い方によっては褒め言葉にも!
ステレオタイプの言葉の使い方は、どうしても偏見や差別的な言葉になることが多く、ネガティブな意味になりがちです。
しかし、使い方を変えれば「褒め言葉」となります。例えば、イギリス人は、”堅苦しい”というステレオタイプなイメージも、表現を変えると「礼儀正しく、所作が美しい」というように言えます。
ステレオタイプのメリット&デメリット
ステレオタイプは、デメリットばかり注目されがちですが、ステレオタイプにもメリットとデメリットが存在しています。
ステレオタイプのメリット
ステレオタイプが存在する理由は「認知資源の制約」と言われています。
人は、五感で様々なことを感じ、常に膨大な情報に囲まれています。すべてを瞬時に一つずつ処理するには、人間の脳の容量(認知資源)では、足りなくなってしまうのです。
そこで、脳は、入ってきた情報を必要なものとそうでないものに分類して処理をします。この、ステレオタイプがあることで、膨大な情報を一定の型にはめて分類できるので、認知資源の節約につながります。
例えば、車の運転中に子どもが視野に入った場合を考えてみましょう。
ほとんどの人は、「子どもは、未熟であるから危険かどうか判断がつかないため、思いがけない行動をするもの。」というステレオタイプの認知をすることで、子どもの近くを通る時は、注意してゆっくり走行します。
もし、このステレオタイプの認知ができないと、「女の子だ、身長は低い、年齢は、髪の毛は長い、飛び出してこないか、こちらに気付いているだろうか。」などと様々な情報を網羅し、処理するのに脳が必死になりすぎて、いつまでも判断ができないことになってしまいます。
適切な判断を瞬時に行う際にも、正しいステレオタイプの存在は必要でメリットだと考えられます。
ステレオタイプのデメリット
人は常日頃から、何かをステレオタイプにはめ込んで認知することによって、その何か、人やものを単純化してしまうことがあります。そうしたことで、元々持っているその人やものの特性や性質を見逃してしまうことがあります。
その誤解や誤認をしたまま、否定的な感情を抱いたり、否定的な評価をくだしてしまうこともあります。そこから、偏見や差別が生まれる危険性をはらんでいます。
ステレオタイプを変える方法は?
ステレオタイプは、生まれ育った環境で出来上がった個人の思考や認知、社会や集団の中で無意識のうちに出来上がったもので変えることは容易ではありません。
しかし、そうしたステレオタイプの認知も変えることができることがわかってきています。
例えば、自分とは異なる社会的カテゴリーに属する人々と直接的に接することで、そのカテゴリーに対するステレオタイプや偏見が低減されると考えられています。
例えば、黒人の友人を作り、実際に仲良くなることで、彼らに対する固定観念や思い込みがなくなります。ただ、対等な立場で関わること、協力関係などいくつかの条件があると言われています。
『ステレオタイプ』をよく理解して!使い方に気を付けよう!
ステレオタイプについて、例文も含め説明してきましたがいかがでしたでしょうか?
自分には、ステレオタイプが存在していると自覚された方もおられるのではないでしょうか。
しかし、厄介なのは、人間には意識とは別に自然な無意識の心の働きがあり、自分が自覚していないステレオタイプや偏見が態度に現れることがあるということです。そして、知らず知らずのうちに、他人を傷つけていることが多くあります。
そうなる前に、マスメディアやSNSの情報をそのまま鵜呑みにせず、本当にその情報が正しいのかを考えることや、一人一人が自分の思考や捉え方を見つめて固定観念を修正すること、また、ステレオタイプの使い方に気を付けることが大事になってくるでしょう。そうして偏見や差別のない社会を築いていきたいものです。