『女史』は差別・不快用語!?意味や使い方の注意点を徹底解説!
『女史』の意味は、相手の女性に対する敬意を表す言葉と考える方も多いです。しかし、近年になって差別や不快な用語として認識されだしています。『女史』の本来の意味から現代に至るまでの経過、言葉の使い方について注意すべき点を紹介します。
目次
『女史』の本来の意味とは?
『女史』は立派な女性を意味する敬称のイメージが強いです。しかし、『女史』は現代では不快な意味を持つ差別用語とされているので注意が必要です。『女史』は本来は決して不名誉な意味の言葉ではありませんでした。
本来はどのような意味があったのか、現代はどのような移り変わりを経て不快な差別を意味する用語となったのか説明していきます。『女史』について現代での意味を考えてみましょう。
『女史』:本来は宮中で働く女性の役職
本来の『女史』の意味は以下の通りです。日本と中国で『女史』という言葉は使われていましたが、ほぼ同様の意味で、宮中で働く女性の官職を表す言葉です。『女史』は、決して悪い意味の言葉ではありません。
・日本
700年代に制定された大宝律令や養老律令によって決められた、女官の役職の名前です。后などが住む後宮で文書を扱う仕事をしていました。
・中国
古代の中国で、皇帝や后の御礼の言葉や礼儀に関すること、宮中に関する記録を扱う役目を負った女官のことを言います。
『女史』はどのような意味を持つようになったのか?
『女史』は日中両国で、文書を扱う女性の役職だったということから、国語の知識が豊富で頭も良く、実力のある女性であったと思われます。現代でいうなら役職に付いていて、十分にキャリアを積んでいる優秀な女性を表すことになるでしょう。
主に学者や芸術家、評論家や政治家など、文化や社会で通用する力のある女性に敬意を表す意味を持ったと言われています。氏名や名字に付けて『○○女史』と呼んだり、文書に書く時に使われたりしました。小説の中でも、名声のある優秀な女性を褒める意味で、登場人物を『女史』と呼ぶ場面も出てきます。
『女史』は敬称ではない?現代のイメージとの違いは?
古来の役職の名前や、転じて使われた意味から考えると、女性への敬称と考えられても良いような感じがします。しかし、現代では『女史』は敬称を意味する言葉には当たらないのでしょうか。現代において『女史』から、不快な意味や雰囲気になるのはなぜか考えてみましょう。
『史』という字は名前にも使われるが
『史』という字は、「ふみ」・「あや」・「し」などの読みがあり、現代でも男性や女性の名前に選ぶ親御さんも多いです。『史』という漢字自体には、不快な意味やマイナスのイメージはありません。むしろ、本来は「出来事を記録する人」や「役人」の意味があるので、教養があり頭が良い・出世するなどのイメージから付けられることもあります。
『女史』が不快用語とされている理由とは?
各報道機関から「記者ハンドブック」が出版されています。正確な日本語による記事を書くために、適切な語句の意味や、用語の使い方が分かるように記載され、用字辞典としても利用できます。
「記者ハンドブック」には差別語や不快用語について注意喚起されています。特に注意をしたい言葉の中に性差別の項目があり、その中に『女史』が入っているのです。『女史』は性差別の表現の筆頭に挙げられ、「女性を特別に挙げる表現」・「男性を表す対語がない女性特有というの表現」は原則として使うべきでない、使う時には注意をするようにとされています。
ちなみに、『女史』が差別用語とされたのは、1997年発行の版からです。比較的新しく定められたので、知らずにいる人も多いと思われます。
2,052円
商品の購入はこちら男性と女性で性差を表すと差別に
「敬称」を意味する言葉を用いるなら、男性にも女性にも平等に敬える語句を使うべきだとなります。『女史』のように、女性のみを指す言葉を付ける必要はないということになるでしょう。
『女史』の反対語に『男史』という言葉はありません。『女史』の対語として一対になる意味の語句がないのなら、平等な表現にはならずに女性だけを区別した差別表現に繋がることになります。不快感を与える表現になるので、使わない方が良いという結論になったということです。
女性への悪口で『女史』を使う場合もある
残念なことに、『女史』をあざけりの意味の言葉として使う方もいます。近年では男女雇用機会均等法が制定され、女性も男性も差別なく働けるようになっていますが、未だに女性が男性と方を並べて仕事をするのを良しとしない向きもあります。
ばりばりと働いて、男性にもしっかりと物を言う女性に向かって「○○女史」とからかって呼んだり、陰口をきいたりする人も多いのが実情です。本来は優秀な女性を意味するはずの『女史』が、不快な意味の用語として転落してしまいました。
女性を意味する言葉で不快な差別用語でないもの
『女史』のように特に女性を意識する語句を使っている場合でも、不快な差別用語に当たらないことがあります。それは、『女史』のような性差を意味する語句でなく、固有名詞として付けられている場合です。
将棋などの競技で、女性の有段者を「女流名人」と呼ぶ時には固有名詞に当たるので、差別用語の意味には当たりません。団体名や「女子マラソン」などのように大会の名前が決まっている場合も同様です。女優などの女性が携わる固有の職業に関する名詞についても、現段階では差別には当たらないでしょう。
ただし、言葉の使い方や意味は世が進むにつれ変わる物です。『女史』の他に「女流」や「女子」など女性を分ける意味の言葉に関して、差別に当たると異議を唱える方も出てくるかもしれません。今後の使い方や意味合いについて注意する必要があるでしょう。
女性特有の職業名を見直された例
『女史』と意味合いは違いますが、女性特有の名前から職業の呼び名が見直された例もあります。
以前は「看護婦」と呼ばれましたが、現在は男性も女性も職業に就いていることから、「看護師」と呼ばれるようになりました。保育園の「保母さん」も、男性の方も就業するようになったため、「保育士」の呼び名が一般化しています。
女性にもビジネス文書で『貴殿』を使う
ビジネス文書をやり取りする場合でも、性差をなくす動きが出ています。
『貴殿』の意味は、本来男性同士(発信側も送信側も男性)が手紙をやり取りする際の相手を敬う敬称です。意味合いは「あなた」や「あなた様」と考えるといいでしょう。『貴殿に置かれましては』(意味:あなた様には)などの形式で書かれます。
しかし、ビジネス文書では女性宛てに送ることもありますし、女性から男性宛てに出されることもあります。女性の場合は『貴女』という敬称がありますが、手紙などであまり使われていません。
対になる言葉に当たらないことで、性差が出ることから相応しい意味合いの言葉ではなくなります。差別に繋がらないように『貴殿』を使っても問題がないとされるようになりました。
『氏』の代わりに『女史』を使うのは誤り!
『女史』の敬称に対応するのは、男性の場合『氏』でないのかと考える方もいます。しかし、『氏』に尊敬の意味があり、敬称に当たりますが、一般の人全てに『氏』が使えるので『女史』の対語にはなりませんので注意が必要です。
本来の意味であれば『女史』は女性特有の敬称になります。しかし、『氏』が男性特有の敬称という意味にはならないために対語にはならず、『氏』の代わりに『女史』を使うのは間違いなのです。やはり、『女史』は性差を意味するので差別用語に当たり、日常では避けた方が良い言葉になるでしょう。
男性も女性も敬称は『様』を!
『氏』も女性に使える敬称ですが、ビジネス文書などの書き言葉や相手に対して呼びかけるのに、敬称の意味で使うには向いていない場合があるでしょう。男女を問わず、敬称に『様』を付けるのが相応しいです。『女史』を使う必要はありません。
前項でビジネス文書の『貴殿』について述べました。近年では、女性の手紙の送信や受信に『貴殿』は失礼なのではという理由で、使用を控える会社も出てきています。差別用語に当たらない、誰にでも使える意味の敬称を用いた方が失礼にならないでしょう。
『○○様に置かれましては』というように、氏名や名字の下に「様」を付ける形にする企業も増えてきています。(『貴殿』が同等以上の男性に使う敬称という意味合いなので、相手に対する敬意が低いという意味に取られるという理由もあります。)
差別用語と言われても根強く残る!『女史』を使う人の言い分
現代では男性と女性と性差を表す語句は差別に繋がり、不快な意味の表現になります。『女史』を使うのは差別用語になるので、避けるべきと言われても納得ができないと言う方がいます。意味を説明されても『女史』を使おうとする方の言い分を紹介します。
『女史』を付けて実績のある女性を評価したい
素晴らしい業績を残した女性や、実績のある女性を正当に評価する意味で、『女史』を敬称として使いたいと考える方もいます。男性・女性を問わず多い意見です。あえて『女史』を使い、男性と区別することで優秀さを表したいと考えるようです。
企業はまだ男性を中心とした所が多く、その中でも頑張って成果を上げてきた女性に対して努力を認めたい、後に続く女性のために道を切り開いてきた所を褒めたいという意味で、『女史』を使いたいと考える方もいます。
歴史のある『女史』という言葉と意味を大切にしたい
『女史』という言葉には、本来は女官の官職名であったという歴史があります。差別用語ではなく、有能な女性を称える意味で、由緒ある言葉を大切に使った方が良いのではないかという意見もあります。
『女史』は差別的な言葉!使い方には要注意!
確かに『女史』は古来は、役職についた優秀な女性を指す意味合いの敬称でした。しかし、現代では男性と女性と性別の違いで差を付けるのは差別的な言葉に繋がると考えています。
古来の言葉を大切にしたいとか、特定の女性の偉大な業績を称えたいという気持ちは分かります。しかし、相手の気持ちや立場を考えて使い方に注意したり、避けたりした方が良いでしょう。