2021年07月01日公開
2021年07月01日更新
コラ半島超深度掘削坑の謎。世界一深い12kmの穴から聞こえた声とは?
ロシアのコラ半島超深度掘削坑をご存知ですか。1970年にロシアで掘られた世界一深い穴といわれています。この穴の底から聞こえてくるという謎の音は地獄からの声とも呼ばれ都市伝説として残りました。今回は世界一深いコラ半島超深度掘削坑と謎の音についてご紹介します。
目次
ロシアの世界一深い穴、コラ半島超深度掘削坑
世界一深い穴があるといわれているロシアのコラ半島超深度掘削坑をご存知ですか。
コラ半島超深度掘削坑は1970年に旧ソ連が掘った掘削坑なのですが、その深い穴の底から謎の音がしたという都市伝説があります。
今回は、世界一深い穴の謎とそれにまつわる都市伝説についてご紹介します。
ロシアのコラ半島超深度掘削坑とは
コラ半島超深度掘削坑は、ロシア(旧ソ連)が地球の地殻がどのような構造をしているのかを調べるために1970年から1992年にかけてコラ半島で掘削した穴の跡です。
コラ半島では研究のためにたくさんの穴が掘られ、一番深いもので約12㎞の深度になりました。
コラ半島超深度掘削坑の歴史
ソ連だった頃のロシアは、様々な科学分野で大規模な研究や観測が行われました。特に宇宙空間への進出技術や核反応によるエネルギー、コンピューターからレーダーまで、様々な技術が開発され発展していきました。その背景には冷戦中の兵器開発がありますが、20世紀にロシアが生み出した科学技術は現代でも応用され、幅広い分野で活躍しています。
1970年に始まったコラ半島での地殻調査もロシアの大規模な研究計画のひとつでした。
地球の構造は地上から順に地殻、マントル、外核、内核と分けられます。地殻は陸地でます。地殻とマントルは構成している岩の性質で区別されます。
ロシアが掘削を始めた頃は実際に地殻がどれくらいの厚さなのか、地球内部がどのような構造になっているのか解明されていませんでした。今では地震波の測定からマントルに流動があることや地球内部に硬い層と柔らかい層があることなどが分かっていますが、それでも地球の内側がどうなっているのかについて決定的な根拠のあるデータは現在も存在しません
ロシアが掘った世界一深いコラ半島超深度掘削坑での発見
コラ半島での研究計画は途中で断念されてしまいますが、それでも発見はあるました。
まず、掘削坑の深部に水分があることが分かりました。これは地下から湧き上がる水とは違い、地殻を構成している岩石の中に含まれる水素と酸素によってつくられた水ではないかと考えられました。
しばらく掘り進めるうちに単細胞でできたプランクトンの化石が出る層に突き当たりました。発見された化石は24種類で、地底の深部にある高温高圧の層によって化石のまま残されていました。
当初15キロメートル掘る予定だったロシアが、12キロメートルで掘削を断念した際にも発見がありました。掘削坑の深部の温度は予想よりもはるかに高くなっていました。12キロメートルの時点でなんと180℃。
地球は内部に進むにつれて高温になっていくことが予想されていましたが、実際に計測されたのは世界で初めてのことでした。
コラ半島超深度掘削坑の稼働中止
1992年に、それまで断続的に続いていた研究が中止されました。掘削坑深部の高温に対処する技術不足が主な理由でしたが、ちょうどその頃ソ連が崩壊し今のロシアとなったことで生じた世界的混乱も原因のひとつと考えられます。
コラ半島に残された掘削坑は、現在は建物で覆われ、廃墟と化しています。今では訪れる人も少ないそうです。
ロシアの世界一深い穴の謎
現在では廃墟になってしまっているコラ半島の掘削坑ですが、掘削当初から様々な噂や都市伝説がありました。そのひとつがシベリアン・ヘルサウンドと呼ばれる、掘削された穴の深部から聞こえたとされる謎の音です。
シベリアン・ヘルサウンド、地獄からの声
掘削に当たっていた研究者の証言では約14キロメートルまで掘り進めていた時のことだったそうです。記録では掘削は最大で12キロメートルほどであったため公式には話されませんでした。
この研究者の話では、突然掘削に使っていたドリルが軽くなり、地層の密度が低いか、あるいは空洞になっていることを予想したそうです。深部にマイクを下ろし、地殻の動く音を捉えようとしました。
しかし、実際にマイクが捉えたのは人の叫び声のような音でした。それも何十人、何百人もの叫び声に聞こえたそうです。
掘削時の温度は2000℃近く、掘削によって地獄の扉を開いてしまったのだとか。
この時に聞かれた音をロシアではシベリアン・ヘルサウンドと呼ぶそうです。
このシベリアン・ヘルサウンドは都市伝説として扱われていますが、キリスト教でも地面の下には死者の住む地獄があるとされているので長い間語り継がれてきたのではないでしょうか。
世界一深い穴から聞こえた音の謎
では、この地獄からの声といわれている叫び声のような音は一体何だったのでしょうか。
地獄にいる死者の声なのでしょうか。それとも地底に住む生き物のたてた音だったのでしょうか。
シベリアン・ヘルサウンドの正体
シベリアン・ヘルサウンドは録音があります。聞いてみるとたしかに地獄からの人の叫び声のような気もする……と思うのですが、様々な議論の後に、この音は1972年にイタリアで公開された『バロン・ブラッド』というホラー映画の効果音で作られたものだと分かりました。
地底に文明があるという話や地殻の熱のことを考えるとシベリアン・ヘルサウンドはわくわくするお話だったのですが、どうやらデタラメだったようです。とても残念。
シベリアン・ヘルサウンドの他にも地面から音がするという地下文明や地獄に関する都市伝説はたくさんあります。地中からのうめき声とか、海溝から聞こえる音もあるそうですよ。
最近ではアポカリプティックサウンドと呼ばれる世界が終わる音が話題のようです。
世界が終わる音といわれると地獄からの声と呼ばれるシベリアン・ヘルサウンドよりも怖いような気がします。
ロシア以外にも?世界各地にある深い穴
ここまでご紹介してきたのはコラ半島の掘削坑でしたが、ここからは世界各地にある深い穴について見ていきたいと思います。
ビンガムキャニオン銅山(アメリカ)
アメリカ、ユタ州にあるこの鉱山は宇宙からもはっきり分かるほどに大きな穴が開いています。直径は約4キロメートル、深さは1.2キロメートルほどだそうですが、今も稼働を続けているので、今後さらに穴は深くなると予想されます。
採掘によって人工的に空けられた穴は世界中にあり、公害や近隣住民とのトラブルが深刻な問題となっています。
自然に生まれた穴
掘削により掘られた穴の他にも、自然によってできた穴もあります。
トルクメニスタンの「地獄の門」
トルクメニスタンにあるダルバザにある天然ガスが眠るとされていた場所で、落盤事故が起きぽっかりと空いてしまった炎の穴です。深いかどうかは不明ですが、地獄の門という呼称にふさわしいくらいの迫力があります。
アメリカのユカタン半島にあるグレートブル―ホール
こちらは海の穴です。ブル―ホールは陸地にあった洞窟などの空洞が海に沈むことで形成されると考えられています。ユカタン半島のベリーズにあるブル―ホールは直径が313メートル、海底から200メートルほど深いといわれています。
上空から見ると水の色が違って、地獄の門とは違う怖さがありますね。
これらの他にも、地盤の沈下によりできた穴や、ダムの放水ように作られたダムホールなど、地球上には様々な種類の穴が存在します。
地盤沈下によりできた穴
各国がロシアよりも深い穴を掘らない理由
コラ半島超深度掘削坑が世界記録といわれてからまもなく30年になります。なぜコラ半島の掘削坑が世界一深い穴のままなのでしょうか。
コラ半島超深度掘削坑が世界一といわれ続けるわけ
地殻を掘り進めると、温度はどんどん上がっていきます。12キロメートルまで掘り進めたロシアも途中で諦めたように、地殻の高熱、高密度に耐えられる掘削技術を人間はまだ開発できていません。
世界一深い穴を目指して
日本における、研究のために掘り進められている研究で有名なのは、地球深部探査船「ちきゅう」による掘削です。まだ具体的なプロジェクトは進行していないようですが、これまでの掘削方法と異なる方式の装置を持っているため、世界で初めてマントルまで到達するのではないかと期待されています。
深い穴の怖さと魅力
世界一深い穴、いかがでしたか。
シベリアン・ヘルサウンドはとても残念でしたが、穴の底はどうなっているのだろうとわくわくしますね。