2021年07月01日公開
2021年07月01日更新
曜変天目茶碗を再現!長江惣吉が作ったレプリカの値段や作り方とは?
世界に3つしか現存しない「曜変天目茶碗」の再現に取り組む愛知県瀬戸市の陶芸家、9代目長江惣吉さんは、父親の代から 二代にわたって曜変天目茶碗の再現に取り組んでいます。そんな長江惣吉が作ったレプリカの値段や作り方とは?
目次
- 1曜変天目茶碗とは
- 2「曜変天目茶碗」が最近よく話題にされる理由
- 3九代目長江惣吉さんについて【曜変天目茶碗を再現!】
- 4鑑定団に出品された曜変天目茶碗と長江惣吉さんの曜変天目レプリカ
- 5なんでも鑑定団に出品された曜変天目茶碗
- 6なんでも鑑定団に出品された曜変天目茶碗の値段
- 7長江惣吉が作った曜変天目のレプリカ【曜変天目茶碗を再現!】
- 8長江惣吉が作った曜変天目レプリカの値段【曜変天目茶碗を再現!】
- 9長江惣吉さんにも負けない出来!林恭助が作った曜変天目のレプリカ
- 10長江惣吉が作った曜変天目レプリカの作り方【曜変天目茶碗を再現!】
- 11九代目長江惣吉さんのプロフィール【曜変天目茶碗を再現!】
- 12九代目長江惣吉さんの個展【曜変天目茶碗を再現!】
- 13まとめ
曜変天目茶碗とは
「曜変天目茶碗」って、最近テレビなどでよく耳にする機会が増えたような気がします。
焼き物や骨董にあまり興味が無い人も、一度や二度は"曜変天目(ようへんてんもく)"という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか?
「曜変天目茶碗」とは
「曜変天目茶碗」とは、天目茶碗の最上級の品質とされるもので、単に「曜変天目」と呼ばれることもあります。
じつは、現存する「曜変天目茶碗」って世界で3つしか残っておらず、
その3個すべてが日本国内で保存されているってご存知ですか!
(もちろん世界のどこでも販売されていません。)
「天目茶碗」とは
ちなみに、「天目茶碗」とは、お茶の葉の産地だった中国の天目山一帯のお寺で使用された茶道具のことを意味し、建窯(現在の福建省南平市建陽区にある)で作られたものが有名です。
「天目茶碗」の中には「曜変天目茶碗」の他に、「油滴天目」(ゆてきてんもく)や「灰被天目」(はいかつぎてんもく)、「禾目天目」(のぎめてんもく)、「木葉天目」(このはてんもく)、「文字天目」(もじてんもく)、「鸞天目」(らんてんもく)などがあります。
再現困難な「曜変天目茶碗」が、天目茶碗の最上級とされる理由
「曜変天目茶碗」が、天目茶碗の中でも最上級とされる理由は、数の少なさです。
完全な形で現存する「曜変天目茶碗」は、世界中でたった3つしか無く、そのすべてが日本国内で保存されていて、3個のすべてが国宝に指定されています。
中国で作られた「曜変天目茶碗」が、何故本国の中国には残っていないのか?なぜ日本にしか残っていないのか?という理由は、今も謎とされています。
ただし、割れたりヒビが入ったりして完全な状態ではない「曜変天目茶碗」は本国の中国国内でも発見されています。
※不完全なものは販売されているのか不明です。
再現困難な「曜変天目茶碗」が保存されている美術館等
現存する「曜変天目茶碗」が保存されている美術館は下記のとおりです。
・藤田美術館(大阪市):大阪市都島区網島町10番32号
・静嘉堂文庫美術館(東京):東京都世田谷区岡本2丁目23番1号
・大徳寺龍光院(京都市):京都府京都市北区紫野大徳寺町14
「曜変天目茶碗」が最近よく話題にされる理由
「曜変天目茶碗」って、最近テレビなどでよく話題にされる機会が増えたような気がします。
これは、おそらくですがテレビの人気番組「なんでも鑑定団」が関係していると思います。
どういうことかと言いますと、2016年12月に放送された「開運!なんでも鑑定団」の中で鑑定された茶碗が
「国宝の曜変天目と同じもの」と鑑定され、なんと鑑定結果2500万円もの価値があると紹介されたんです。
鑑定を担当した「なんでも鑑定団」の人気鑑定士である中島誠之助さんも「まるで宇宙の早雲をみるようだ」と絶賛していました。
この「なんでも鑑定団」での鑑定結果を受けて、茶碗の所有者の地元の徳島県教育委員会は茶碗の文化財指定を視野に入れて調査開始に向けて動き出すなど、
世間で大きく話題になり、もてはやされました。
その一方で、番組を見ていた視聴者の中の複数の専門家(陶芸関係者や大学教授、学芸員など)が、中島誠之助さんの鑑定結果に対して、疑問を呈します。
この、疑問を呈した複数の専門家の中の一人に、陶芸家の九代目長江惣吉さんがいました。
九代目長江惣吉さんについて【曜変天目茶碗を再現!】
九代目長江惣吉さんは、1963年の愛知県生まれで、江戸時代から続く窯元の家に生まれました。
父親である八代目長江惣吉さんの代から曜変天目の作り方の研究を続け、父が亡くなった後に九代目長江惣吉として父のライフワークであった「曜変の再現」の研究を引き継ぎました。
「曜変天目茶碗」が実際に焼かれた中国の建窯を27回にもわたって調査し、その研究成果は2010年に「曜変における光彩の再現研究」としてまとめられ発表されています。
九代目長江惣吉さんは、現在も宋代と同じ形式の窯とわざわざ中国から輸入して取り寄せた原料を使用して、曜変天目の再現制作、作り方の研究に精力的に取り組んでいます。
また、制作や研究の一方で個展などを開催して、長江惣吉さん自身が作成した曜変天目を再現したレプリカの発表もしています。
また長江惣吉さん自身が作成した曜変天目の作り方も一般に公開しています。
鑑定団に出品された曜変天目茶碗と長江惣吉さんの曜変天目レプリカ
素人には難しくてよく分からない点が多い、焼き物や美術品などの骨董の世界ですが…。
今回「なんでも鑑定団」に出品された「曜変天目茶碗」とされる茶碗と、九代目長江惣吉さんが再現した「曜変天目茶碗」のレプリカを見てみましょう。
(どんな見た目の違いがあるのでしょうか?)
なんでも鑑定団に出品された曜変天目茶碗
「なんでも鑑定団」に出品された国宝級の「曜変天目茶碗」と鑑定された茶碗です。
なんでも鑑定団に出品された曜変天目茶碗の値段
「なんでも鑑定団」の名物鑑定家である中島誠之助氏が、
「国宝の曜変天目と同じものに間違いない。(中略)まるで宇宙の早雲をみるようだ」
と絶賛し、出品された茶碗に2500万円という値段が付けられました。
ただし、この2500万円という値段については、評論家の山田五郎氏などが
「2500万円という鑑定額は安すぎ。もし本物なら、最低でも1ケタ~2ケタ金額が違うはず。」
と指摘しています。
また、九代目長江惣吉さんもテレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」の中で、
「本物の曜変天目の値段は100億円」と述べています。
確かに、世界に3つしか現存しない国宝級の茶碗の値段が2500万円というのは、少し安すぎるような気もしますね。
一部の間では、国宝級の「曜変天目茶碗」に値段をつけるなら、過去に取り引されていた値段を参考にすると、約20億円程度ではないか、と言われているそうです。
長江惣吉が作った曜変天目のレプリカ【曜変天目茶碗を再現!】
九代目長江惣吉さん自身が作成した曜変天目を再現したレプリカの茶碗です。
(販売されていません。)
長江惣吉が作った曜変天目レプリカの値段【曜変天目茶碗を再現!】
九代目長江惣吉さん自身が作成した曜変天目を再現したレプリカの茶碗は、じつは販売されていません。
なので、九代目長江惣吉さん作成の曜変天目を再現したレプリカ茶碗の値段は不明です。
じつは、九代目長江惣吉さんの他にも、曜変天目茶碗の再現を試みている人はたくさん居られるようで、
岐阜県土岐市在住の陶芸家「林恭助」さんも「曜変天目茶碗」のレプリカを作品を発表しています。
ちなみに、林恭助さんが再現した「曜変天目茶碗」のレプリカ茶碗は、審査が厳しいことで知られる中国の美術館で「永久展示、永久保存」が決定する程の出来なんだそうです。
ただし、林恭助さんが再現した「曜変天目茶碗」のレプリカ茶碗も販売されていませんので、曜変天目を再現したレプリカ茶碗の値段は不明です。
長江惣吉さんにも負けない出来!林恭助が作った曜変天目のレプリカ
長江惣吉さんにも負けない出来!林恭助が作った曜変天目のレプリカ
林恭助さん自身が作成した曜変天目を再現したレプリカの茶碗です。
(販売されていません。)
長江惣吉が作った曜変天目レプリカの作り方【曜変天目茶碗を再現!】
九代目長江惣吉さんが作成する曜変天目を再現したレプリカの茶碗の作り方には、22年間もの長い研究の間に蓄積された技法の集大成ともいえるノウハウが詰まっています。
その技法にたどり着くには、28回も中国福建省の建窯を訪問したり、合計80トンもの原料の輸入が必要でした。
その一部紹介すると、
・曜変天目茶碗の内側にきらめく光彩は、偶然の産物ではなく蛍石という鉱石による酸性ガスで生まれる。
・酸性ガスは先代である8代目が着目して採用した技法で、蛍石自体は建窯で目にしている。
・窯が最高温度に達した後に冷却段階で蛍石を投入することで酸性ガスが発生し、釉面に微細な凸凹や薄膜が形成され光彩が生まれる。
とのことです。
このノウハウ自体、販売すれば売れるかも知れませんね!
九代目長江惣吉さんのプロフィール【曜変天目茶碗を再現!】
・1963年、愛知県生まれ。
・曜変天目の研究を八代目長江惣吉より引き継ぐ。
・論文: 「曜変の再現研究」、「宋代建盞の光彩の研究」、「曜変の光彩の再現研究」など
九代目長江惣吉さんの個展【曜変天目茶碗を再現!】
九代目長江惣吉さんの個展は、今まで地元の瀬戸市美術館などで開催されています。
(個展でもレプリカは販売されないようです。)
・瀬戸市美術館企画展での個展「曜変・長江惣吉展」」(2017年06月03日 ~ 07月30日)。
・金沢市本町のギャラリー「玄羅アート」では、北陸では初めての個展を開催。
九代目長江惣吉さんの個展が、次はいつ開催されるのかは分かりません。
まとめ
世界に3個しか現存しない「曜変天目茶碗」の再現に挑む九代目長江惣吉さんですが、近くで個展が開催されれば、是非一度一度見てみたいです。(販売されてませんが、作り方とか興味あります!)
ただ、九代目長江惣吉さんの個展以上に気になるのが、テレビ「なんでも鑑定団」の名物鑑定家である中島誠之助氏が、
「国宝の曜変天目と同じものに間違いない。(中略)まるで宇宙の早雲をみるようだ」
と絶賛し、2500万円という値段が付けられた茶碗が本当に国宝に相当する「曜変天目茶碗」なのかということです。
昨年から続く、真贋論争にいい加減終止符が打たれるといいのですが…。