問題解決学習とはどんな教育方法なの?取り入れる長所や短所も!
今注目されている問題解決学習というのはどんな学習方法で、どんな授業をしているのでしょうか。問題解決学習によってどんな能力を伸ばすことができるのかなど子供への影響や問題解決学習を学校の授業に取り入れた場合の長所・短所もご紹介します。
目次
注目の学習方法「問題解決学習」について知ろう!
幼いころから英会話を始めたり塾に通ったりするよりも、もっと効率がいい方法を発見できるとしたら、それがどんな学習方法なのか気になりますよね。ここでは、最近注目されている学習方法で、子供の「問題を解決する力」を高めていく「問題解決学習」とはどんな学習方法なのか、どんな効果があるのかや長所・短所についてご紹介します。
問題解決学習とは?
「問題解決学習(PBL・Project Based Learningの略)」とは、子供が自分で問題を発見し、実験や話し合いなどを繰り返して課題を解決する能力を養うための方法として最近注目されている学習方法で、アメリカの教育学者のジョン・デューイの学習理論です。問題解決学習の例としては、子供が与えられたテーマについて自分達で話し合いなどを通して課題を発見し、仮説を立てて問題を解決したり、必要であれば実験や調査などを用いた方法で問題を解決していく学習方法です。
問題解決学習の目的
問題解決学習とは、歴史や英単語の暗記といった「正解があるものを覚える」という子供が受け身になるような教育学習ではなく、日常に起こりうるリアルな問題や課題について積極的に考えたり実験・検証したりすることで子供の問題解決能力・思考力・自発性・能動性を引き出すことを目的としています。
課題解決学習とも呼ばれる
「問題解決学習」は「課題解決学習」とも呼ばれていることがあります。問題解決学習と課題解決学習は同じ意味で使われている場合がほとんどです。しかし、一部では「課題解決学習」は「問題解決学習」と、この後紹介する「系統学習」というものを合わせて新しい形にしようと開発されたものだという考えもあります。問題解決学習と系統学習には次のような長所や短所があり、それぞれを補う形になっています。
問題解決学習について
長所:子供の能動性や実践的知性を育てるのに有効
短所:系統的な知識の習得に弱い
系統学習について
長所:系統的科学的知識の習得に効果を発揮する
短所:子供の心理的実践態度をおざなりにしてしまいがち
学習理論のそれぞれの違いと特徴を解説
次に、これまで行われてきた様々な学習方法の違いについて詳しくご紹介します。ここでは、問題解決学習・発見学習・完全習得学習という3つのメジャーな学習方法についてそれぞれの学習理論の内容をご紹介します。
①問題解決学習
問題解決学習とは、答えがある問題や解き方を教え込む「系統学習」とは違い、人との話し合いや実験などを通して問題解決の過程を経験させる学習法です。「日常生活の中で出会う具体的な課題」を子供が自分で考えて仮説を立てたり実験をしたりして、自分たちで能動的に解決しようと取り組みます。課題を解決する過程を通して、法則の理解や科学的思考の方法・能力の習得を学ぶ学習方法で、今の社会に出て必要な能力を得ることができます。
②発見学習
発見学習とは、学習する子供自身が「発見」「気付き」を経て新しい知識や課題を解決する方法を学び取ったりする学習方法です。発見学習といえばブルーナーという人が有名で、発見学習というのは学び方次第では幼稚園児にも高校生・大学生にも同じ勉強を理解させることができるという考え方に基づいた学習方法です。そして学習内容を理解するための構造を学ぶ時教師が教え込むのではなく「発見」によって子供自身が学び取ることが大事だとブルーナーは考えました。
③完全習得学習
完全習得学習とは、子供達の目標達成状況に応じた治療的な指導です。そのうちの一つである「診断的評価」は、学習を始める段階での評価のことです。これから学習する内容について、その準備(前段階)ができているかどうかをチェックし、その後の指導の計画を立てます。
形成的評価というのは学習の過程での評価のことで、子供の発言やノートなどから理解度を探ったり、小テストを行ってチェックしたりします。総括的評価は、一通りの学習が終わった後のまとめの評価のことで、単元テストや期末テストなどが総括的評価にあたります。
問題解決学習が注目されている理由
今、問題解決学習が注目されている理由はなんなのでしょうか。問題解決学習が必要とされる時代背景や、幼いころから自分で問題を解決することができるというスキルを身に付ける必要性についてご紹介します。
アクティブ・ラーニングが重要となる時代背景
アクティブ・ラーニングとは、能動的学習のことです。アクティブ・ラーニングが重要だとされる時代背景は、近年のグローバル化や少子高齢化、その他社会問題といった環境・構造の変化が主な要因としてあげられています。
今までの日本の社会では、与えられた条件のもとで指示されたことをいかに早く正確に取り組めるかが問われてきました。しかし、今では日本よりも労働単価の安い発展途上国が世界の工場として機能し、さらにはITやAI、ロボットといったテクノロジーの発展により、世には無い新しい製品をいち早く生み出さなければいけない社会になってきました。
そこで、問題解決学習の話し合いや実験などを使った授業によって自分で問題を解決する力をつけることが、子供達が将来を生き抜く上で必要となっています。
幼いころからスキルを身に付ける必要性
問題を解決する力は幼いころから必要です。何かできないことがある場合に、子供が小さいうちから問題解決学習により自分で課題を解決するためには何が必要なのかを発見したり、成功するための実験や検証をする力がついていれば、子供が大きくなってなにかの壁にぶち当たった時に、自分でどうすればいいのかを解決していくことができます。
例えば、現代では「仕事がない」という大きな問題があったりますが、そんな時も「今のスキルにあう仕事をとにかく探すしかない」という選択肢だけではなく「自分がやりたいことに必要なスキルはなんだろう」と考え、そのスキルを身に着ける段階で起こった問題を実験や検証を繰り返しながら次々と解決し、自分のものとしていくことができます。
あらゆる能力を養うことが期待できる
問題解決能力が身に着けば、自分が身に着けたいと思ったスキルを身に着けやすくすることができます。つまり、他の子供達が塾や英会話教室に通っている間に、問題解決能力を高める授業を受けていれば、最初は他の子よりも勉強や英語ができなくてもそのうち追い付くことができます。課題を解決していく能力があれば自分で実験と検証を繰り返すことができ、そのうちグングンとあらゆる能力を身に着けて、他の子と差を付けるということもできるようになります。
問題解決学習の2つの教育法
問題解決学習には「チュートリアル型」と「実践体験型」の2つの学習方法があります。問題解決学習で授業を行う場合、基本的にはこの2つの手法のどちらかの方法で学びます。
①チュートリアル型
問題解決学習のチュートリアル型とは、例えば仮説のストーリーを用意して、教室内で作ったグループでそのシチュエーションを設定し、グループ同士で話し合いや実験をしたりする授業方法です。この方法は、外部の企業などへ協力を要請したり、実地研修を行ったりしなくてもできるので、学校の授業で行われる問題解決学習はチュートリアル型が主流となっています。
②実践体験型
実践体験型というのは、実際に社会と連携しながら授業をする問題解決学習です。「社会」というのは、民間の企業や地方自治体、団体などのことを指します。本物の社会で観察や実験を用いた授業をするため、とても実践的で効果的な授業方法です。実践体験型の問題解決学習では、責任感や知識、統率力など社会に出てから必要なスキルを学ぶことができます。ただし、社会の企業などと連携する必要があるため、準備や連携をする手間があり、実施するのが大変な学習方法でもあります。
問題解決学習の5つの長所
問題解決学習とは、自分の力で問題を解決していく能力を伸ばす学習方法だとご紹介してきました。学校の授業で問題解決学習を行うことは、次のようなさらなる5つの長所があります。
①思考力が磨かれる
問題解決学習には、子供の「思考力」や「創造性」を伸ばすことができるという長所があります。たとえば、算数の足し算・引き算・割り算などの計算式や、歴史や地理などの正解がある系統的な問題は、覚えれば誰でも解くことができます。問題解決学習によって、すべてのことに疑問を持つ癖が習慣的に身につき、物事を深掘りしたり最後まで諦めずに考え抜く思考力が磨かれていくのです。
②表現力を豊かにする
また、問題解決学習には表現力を豊かにするという長所もあります。問題解決学習には、ディスカッションやディベートといった相手との意見を交換する授業が中心となります。最初のうちは「間違っていると思われたらどうしよう」「意見が被ったらどうしよう」といった不安と恥ずかしさから、なかなか自分の意見を発言できない子供ももちろんいます。しかし、回数を重ねるごとに緊張もほぐれ、自発的に自分の意見や考えを主張できるようになります。同時に、参加メンバーを不快にさせない言い回しや表現力も磨かれていくでしょう。
③実践的な問題解決力が身に付く
実践的な問題解決力が身に付くというのも問題解決学習の長所の一つです。実践的な問題解決力は、社会に出て仕事をする上でとても大切な能力となります。仕事で問題が発生した時に、逃げたりあたふたしたりせずにきちんと向き合い、自分で考えて解決する方法を探すことができるようになる能力です。
④社会性を養う
社会に出て働く場合に必要になるのが「社会性」です。問題解決学習では、この社会性を養うことができるという長所もあります。例えば、社会性とはなにかというと「他の人を信用して認めることができる」「集団の中で協調的に行動できる」などです。社会性という能力を養うことで、仕事をする上でとても役に立つ能力とでしょう。
⑤自発的な学習を促す
問題解決学習を行っている子供は、自発的な学習ができるようになるという長所もあります。問題解決能力が備わってくると、「その時になにが必要なのか」を考え、自分で発見することができるので、自分がやりたいことやなりたいものがある場合に必要な学習を自分で進めることができるようになります。
問題解決学習の5つの短所
しかし、一方でやはり問題解決学習が抱える5つの短所についてもご紹介します。この短所を補うような問題解決学習の取り組み方をするのが1番効果的だと言えるでしょう。
①教師に時間と労力がかかる
問題解決学習の授業をする際、教師が問題を探すのに労力と時間がかかるという短所があります。子供が授業で話し合うための問題や環境を用意するのも大変ですし、問題解決学習の授業では先ほどご紹介した「チュートリアル型」の授業が多いですが、「実践体験型」の授業になると、社会との連携や準備などがとても大変で、教師に負担がかかってしまいます。
②授業に時間がかかる
問題解決学習では、ディベートなどの話し合いなどが多くなるため、子供達がそれぞれの意見を出し合うことで授業に時間がかかるという短所があります。また、意見や実験して検証みたいことが多くなるとどうしても指導に時間がかかるので、全ての授業で問題解決学習を取り入れるのは難しいとされています。
③系統的な知識や基礎的な技能が習得しにくい
問題解決学習は、系統的に並べられた学習内容ではなく、日常にある身近なテーマの問題を解決していく方法を発見していくという授業方法です。そのため、指導者側が用意したドリルや暗記などの授業方法で得られる系統的な知識や基礎的な技能を習得しにくいという短所があります。問題解決学習だけに力を入れるのではなく、子供が受け身になる授業も一緒に行うのがいいでしょう。
④理論的な面がおろそかになる
問題解決学習には系統的な知識や基礎的な技能が習得しにくいという短所があるので、理論的な知識がおろそかになりがちです。この短所を克服するためには、問題解決学習と並行して計算式やマナーなどの系統的な知識も学習していくといいでしょう。
⑤集団的な学習では優秀な子供が独占してしまう
学校の授業で問題解決学習を取り入れる際には、課題の解決方法を発見したり実験検証するのが得意な優秀な子供ばかりが発言して、消極的な子供は問題解決学習の授業をしても傍観ばかりになってしまうという短所もあります。この場合、消極的な子供でも全員参加していけるような工夫を取り入れる必要があります。
問題解決学習の目的を理解して効果的に取り入れよう!
問題解決学習の目的は、自分で考える力をつけて目の前に現れる問題を発見し、実験や検証を繰り返して解決していく能力を育てることです。問題解決学習と合わせて系統的な知識なども上手に取り入れ、子供が今の社会の中でも通用していけるような能力を伸ばしていきたいですね。