カイコガ(蚕蛾)がかわいい!飼育方法や画像まとめ
貴重な絹が取れることで知られる蚕。成虫となったカイコガの真っ白な姿や仕草がかわいいと人気を呼んでいます。カイコガは野生では生きられないという珍しい昆虫ですが、その生態はどのようなものなのでしょうか。今回は蚕のかわいい動きや飼育方法をご紹介します。
目次
かわいいと人気のカイコガ(蚕蛾)って、どんな昆虫?
最近インターネット上でかわいいと評判のあるカイコガですが、どのような生き物なのでしょうか。
蚕はチョウ目カイコガ科の昆虫で、カイコやカイコガ(蚕蛾)と呼ばれます。別名シルクワームという名もあり、蚕の幼虫はシルク(絹)の材料である絹糸を作り出します。
幼虫や成虫の時期も脚の力は弱く、葉や枝にしがみ付いても風で落ちてしまうこともあります。しかも寿命は短く、一生を通じて体は灰色や白色で目立ち、野生に戻そうとしても簡単に捕食されてしまう弱々しい生き物です。
幼虫は桑の葉を食べ成長しますが、成虫は口吻が退化して餌や水分を取ることもありません。
また成虫のカイコガは翅(はね)はありますが飛ぶことはできず、ばたつかせる程度です。
蚕は品種改良の末に唯一家畜化された、野生には存在しない珍しい昆虫なのです。
人間の世話がなければ生きていけないことが、逆にペットとしては飼育しやすいという点もあり、その可愛らしい容姿もあって人気となっています。
野生の蚕は存在している?
蚕によく似た昆虫クワコ
野生の蚕は存在しませんが、蚕によく似たクワコ(桑子)という虫がいます。
クワコの成虫は茶色がかっていますが、触覚や体全体の作りが蚕とよく似ている野生の昆虫です。けれども、クワコからは絹糸を採取することはできません。
クワコは蚕の祖先という説が有力ですが、どうやってクワコから野生回帰能力の失われた蚕へと品種改良したかは現在でもわかっていません。
蚕と養蚕業の歴史
蚕から繭を取る作業
絹を作る養蚕業の起源は中国にあり、紀元前2800年には製糸業が行われていました。
日本へは西暦200年ごろ(弥生時代)に伝来したと推定され、明治維新以降に全盛期を迎えます。
しかし、第二次世界大戦後の不況や化学繊維に取って代わられ現在では下火となっています。
シルクは古代ローマでも上流階級の衣服に用いられるなど、各国への交易も盛んに行われました。
中国からインドやペルシャに渡るシルクロード(絹の道)の語源でもあります。
カイコガのかわいい画像
繭の上で休むカイコガ
I want a chill, fuzzy moth friend. pic.twitter.com/mcmp6h0YOH
— Fuzzy Pickles! (@CosmicCandyCorn) March 17, 2016
手乗りで遊ぶかわいいカイコガ
指にしがみ付くカイコガ
指に乗る2匹のかわいいカイコガ
グルーミングするカイコガ
カイコガが動くかわいい動画
グルーミングする様子は何とも可愛い虫ですね。見てると癒されます。
2匹のカイコガがじゃれ合っているように見えます。
飛ぶことはできないですが、かなり翅をバタつかせるようです。
指で突かれても抵抗する様子もなく、なつくようですね。
やはり野生の本能は感じられません。
かわいいカイコガの育て方
これから蚕を飼育しようかとお考えの方もいるかもしれません。
そこで蚕の生態やどうやって飼育するのかといった、押えておきたいポイントをご紹介していきます。
①卵から幼虫になるまで
蚕の卵
卵のサイズは1.5mmほどで、温度を27℃前後・湿度80%に保つと、10日間ほどで孵化します。
このときの注意点は、直射日光に当てないことと、乾燥させないことです。
気長に待ちましょう。
孵化したらすぐに桑の葉や人口の餌を食べ始めますので、事前に用意しておきます。
なお、孵化してから初めに脱皮するまでの期間を1令(または齢)といい、脱皮後から2回目の脱皮までを2令と数えます。
②幼虫からさなぎになるまで
蚕の幼虫(4令)
蚕の幼虫は、卵から孵ってから合計で4回脱皮を繰り返して5令まで成長します。
5令の幼虫は食欲が旺盛で、一生の食事のうちの80%以上をこの時期に摂ります。
そして体長は8cmほどまで大きくなり、体重は生まれたての頃より1万倍にまで増えま
す。
注意点としては桑の葉を多めに用意することと、糞を沢山するのでこまめに掃除することです。
できるだけ寿命を延ばすにはストレスを避けたいところです。
5令となってから約7日経つと全く食事をとらなくなり、繭を作る段階に入ります。
蔟(まぶし)に蚕が繭を作る
このころには繭を作りやすいように、蔟(まぶし)と呼ばれる区切られた部屋に蚕を入れます。
蔟は販売もされていますが、方眼紙や段ボールなどでも井の字に組むことで簡単に作れます。各部屋の大きさは繭のサイズの一回り大きい縦横高さ各4cm程度が良いとされています。
蚕が気に入った部屋に入ると絹糸を吐き始め、丸3日かけて完成となります。
完成した繭の絹糸の長さは1500mにもなるそうです。驚きですね。
③さなぎからかわいい成虫になるまで
繭から羽化したカイコガ
繭の中で蚕の幼虫は、次第に姿をサナギに変えていきます。
そして成虫のカイコガとなって繭から出てくるまでには、10日から2週間ほどかかります。
幼虫のイモムシの状態から翅の生えた成虫になるので時間がかかるのは当然ですね。
羽化したカイコガは繭を溶かして外へ出てきます。
出てきた後は体や翅を乾かすために、30分~1時間ほど動かずにいます。
そしてようやく成虫のカイコガが誕生するのです。
なお、蚕は寒さに弱いため、飼育全体を通じて25℃以上を保つとよいでしょう。
カイコガの寿命はどのくらい?その一生
蚕の一生
蚕は卵から孵化して脱皮を繰り返し、約40日で成虫(カイコガ)となります。
そして成虫となってから数時間から2日ほどで交尾や産卵を始めます。
成虫となったカイコガの寿命は10日ほどしかなくあまり長くは生きられません。
卵から孵化してから通算して50日~60日程度の寿命とされています。
そのため、1匹だけを育てるよりも成長度合いの違う個を並行して育てた方が、成虫の様子を長く見ることができます。
野生にはいない蚕はどうやって手に入れる?初期費用はいくらか?
成長の様子は分かりましたが、野生にいない蚕をどうやって手に入れることができるのでしょうか。入手方法をいくつかご紹介します。
①蚕を飼っている人から譲ってもらう
この場合は費用もかからず、飼育方法のアドバイスも教えてもらえるかもしれませんね。
けれども、飼っている人が周りにいる場合に限られます。
②爬虫類のペットショップが生餌として販売している蚕を購入する
蚕の幼虫は餌としての栄養価も高いため、ペットショップでも利用されています。
販売されているのは1令から5令まで様々で、1令の場合は1匹当たり数円から。
そして5令サイズになると1匹100円程度で販売されているネットショップがあります。
安く入手できるペットショップですが、餌としての蚕はあまり良い環境では育てられていないため、寿命も短かったり、中には病気の幼虫も混じっている場合もあるそうです。
とにかくあまり費用をかけずに購入したい場合は、選択肢の一つとなる方法です。
③蚕の専門店から購入する
蚕を取り扱うサイト例
初めて蚕を飼う場合は、飼育方法を熟知した専門店で買うのが安心です。
例えばネットショップの「カイコ飼う(株式会社 高原社)」では、3令幼虫が1匹当たり12円~20円で販売されています。
またセット販売では、3令カイコ20頭+飼育箱+人工えさ500g+まぶし+解説書付きで、2500円(送料別)で販売されています。
初心者には手間もかからず便利だと思います。
もちろん他にも販売会社は多くありますので、興味のある方は調べてみてください。
※2017年11月現在の価格ですので、変動にご注意ください。
かわいいカイコガへとなるまでの飼育費用はいくらか
人工飼料として主に使用されるシルクメート
蚕の飼育に最も費用がかかるものは餌代です。
蚕は基本的に桑の葉しか食べませんが、乾燥してしまった桑の葉は食べないため、鮮度を保ったまま常備しておく必要があります。
桑の木が近くにあればよいですが、葉を購入しようとすると費用がかさみます。
それに比べ比較的容易に給餌できる、シルクワームと呼ばれる人工飼料があり普及しています。
病気の予防や寿命を延ばすための十分な栄養が含まれています。
シルクワームは1本1000円程度で購入でき、1本で約20匹を育てることができます。また、ソーセージ状になっており保管も容易です。
ただし注意点として、人工飼料だけを与えて成長した蚕は桑の葉に切り替えても食べますが、逆に桑の葉だけを食べてきた場合は人工飼料は食べないそうです。
沢山の蚕を育てる場合は人工飼料にかかる費用が膨らむので、食欲旺盛になるまでは飼料を与え、その後は桑の葉に切り替える方法がよくとられます。
かわいいカイコガの繁殖方法とは
カイコガには雄雌があり、雌のフェロモンによって雄が誘われ交尾が行われます。
そして数時間ほどで産卵を始めます。
産卵する数は個体差がありますが、500個から700個ほど産みます。
そのまま孵化する段階に入る卵もありますが、一度冬を越すものもあります。
産卵後のカイコガは1週間から10日ほどで短い寿命を終えます。
蚕の出す糸は多彩な色をしている
多彩な色がある蚕の繭
実は蚕は世界中で品種改良されて数百種もの品類が存在し、作り出す繭の色もオレンジ色やピンク色、黄色など様々あります。
なぜこのように色に違いが出るかというと、蚕自体の種類による影響と、餌となる桑の葉が含むカロテノイド色素に由来するという研究結果が出ています。
色々な桑の葉を食べさせて、色の違いを見るのも面白いかもしれません。
まとめ:かわいいだけでなく、昔から人に貢献してきたカイコガ
皇后陛下も蚕を大事にされている
いかがでしたでしょうか。蚕は過去に日本の産業を支え、「お蚕さま」「おしらさま」と呼ばれるほど大事にされてきました。
皇居内の紅葉山御養蚕所では、皇后陛下が蚕をわらなどで編んだ網に移す「上蔟(じょうぞく)」の作業もおこなわれています。
蚕はおとなしく、飼育も難しくはありません。
興味のある方は、カイコガのかわいい姿を見るために飼育を始めてみてはいかがでしょうか。