「鑑みる」の意味や正しい使い方は?間違えやすい単語との違いは?
「鑑みる」という言葉を聞いたことはありますか。聞いたことがあっても意味や類語との違いまで説明できる人は少ないのではないでしょうか。知っているようで知らない「鑑みる」という言葉の意味や、由来や定義や英語の表現まで徹底的に詳しく紹介します。
目次
「鑑みる」の意味・読み方・由来・定義とは
「鑑みる」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。ビジネスなどで頻繁に触れる方にとっては馴染みの深い言葉かもしれません。今回は知っているようで知らない言葉「鑑みる」という言葉の意味、読み方、由来や定義などを詳しく紹介します。
「鑑みる」の正しい使い方
知っているようで実は知らない「鑑みる」という言葉。まずは、「鑑みる」の正しい使い方を見てみましょう。
「~を鑑みて」という使い方は間違い
普段「鑑みる」という言葉をどのように使っていますか。ビジネスの場などではよく、「考えて」という言葉のフォーマルな言い回しとして使用している人が多く見られます。しかし実はこれは間違いです。なぜ間違いなのかと、「鑑みる」の正しい使い方を見ていきましょう。
正しい使い方は「~に鑑みて」
正しい使い方を理解するために、まずは由来を確認しましょう。
「鑑みる」の「鑑」は一文字で「かがみ」と読みます。「かがみ」という読み方からわかるように、「鑑みる」の語源は同じ読み方である「鏡」です。鏡は、私たちが日常で身だしなみチェックなどに使っているミラーのことです。
「あの人は教師の鑑だ」といった使い方を聞いたことがあると思います。この「鑑」を動詞にした言葉が「鑑みる」です。つまり、「鑑みる」は他の物を手本や参考にして考えることを指します。
「鑑みる」の意味は、先例や規範に照らし合わせることで、他を参考にして考えることを指します。何かと比べ引き合いに出して考える際に使う言葉ですので、「~に鑑みて」と使うのが「鑑みる」の正しい使い方です。
「鑑みる」の例文集4選!
「鑑みる」という言葉はどのように使うのでしょうか。実際に例文を見ていきましょう。「鑑みる」という言葉を使った例文を紹介します。
・前例に鑑みると、今回は改善の余地がある。
・彼の取り組みに鑑みると、自分はさらに注力する必要がある。
・これまでの成績に鑑みると、彼は今後も活躍すると思われる。
・今回の事件は過去に鑑みて、公にしないことになった。
例文を見ると、鑑みる対象と、その結果どうするかが一文に述べられていることがわかります。このように先例や規範などの比較対象の有無が文中に登場していることがわかります。
間違いやすい単語①「鑑みる」と「考慮する」の違いは?
次から、「鑑みる」に似ている言葉を紹介します。
まずは、「考慮する」という言葉です。「鑑みる」と「考慮する」は似ているようですが、実は違います。「考慮する」の意味を確認しましょう。「考慮する」は考えの中に含める、気を使う、配慮するといった意味があります。私たちがよく日常で使う「考える」と同様の意味です。
対して、「鑑みる」は他の物を手本や参考にして考えることを指します。ですので、「鑑みる」と「考慮する」の大きな違いは、比較対象の有無です。比較対象がある場合は、「鑑みる」であり、比較対象がない場合は、「考える」、「考慮する」が正しい使い分けです。ビジネスの場などでは混同して使いがちですので正しく使い分けができると洗練された印象になります。
間違いやすい単語②「鑑みる」と「踏まえる」の違いは?
次に、「鑑みる」と「踏まえる」の意味の違いを見て行きましょう。「踏まえる」もプレゼンなどビジネスの場でよく登場する言葉ではないでしょうか。
「踏まえる」というのは、ある事を考慮に入れること、ある事を判断の根拠にすることを意味します。つまり、「前期の売り上げ成績の結果を踏まえると」など何かを判断するときに、基準や判断の根拠がある際に使います。対して、「鑑みる」は前例などを、手本や参考として照らし合わせて物事を考えることを意味するときに使います。よって、文脈登場するのが、基準や判断の根拠なのか、手本や参考なのかが使い分けのポイントです。プレゼンやミーティングなどビジネスの場で使ってみてください。
間違いやすい単語③「鑑みる」と「顧(かえり)みる」の違いは?
「鑑みる」と「顧みる」はどのように意味が違うのでしょうか。
「鑑みる」に並び、「顧みる」も知っているようで、きちんと意味を説明しようとすると難しい日本語ではないでしょうか。「顧みる」の読み方は「かえりみる」と読みます。「顧みる」は、過去のことを回想することを意味します。人や時代など、過ぎたことを振り返り考えに耽る際などに使います。対して、「鑑みる」は他の物を手本や参考にして考えることを指します。よって、文脈に時間軸があるかどうかが使い分けのポイントです。
「鑑みる」の類似9選!
次は、「鑑みる」に類似した言葉を紹介します。日常でよく使われている言葉から、あまり耳慣れない言葉まで、例文や意味を紹介しますので、言い回しの達人を目指してみてください。
【類語①】振り返る
「振り返る」は日常でもよく登場する言葉ではないでしょうか。
「振り返って後ろを見る」といった、体をねじるように後ろを見る物理的な動作を意味したり、「学生時代を振り返る」などのように過去のことを思い出す心理的な動作まで汎用的に使える意味を持つ言葉です。
【類語②】顧(かえり)みる
過去のことを回想することを意味します。前項で紹介した「振り返る」と同様に人や時代など、過ぎたことを思い出すことに加え、何かを気にかけて心配する意味も持っています。
例文を紹介します。
・過去を顧みると、彼は慎重に行動する必要があった。
・危険も顧みず、彼は行動を起こした。
例文のように、過去を振り返る以外にも、物事を気にかける意味でも使うことができます。
【類語③】念頭に置く
「念頭に置く」は慣用句としてよく使われる表現です。読み方は「ねんとうにおく」です。気に留めることや、常に考えることを意味します。
例文を紹介します。
・海外の市場を念頭に置いたビジネス展開が注目されている。
このように行動に起こす際に、気に留めることがある場合などに使用します。
【類語④】参考にする
「参考にする」は日常的に使う方も多いのではないでしょうか。考えたり決定する際の手がかりにすることを意味します。
「参考にする」という言葉は、日本語としては間違いではありません。しかし、相手によっては受け入れるかどうかわかりませんと受け取られてしまう場合もありますので、ビジネスなどで目上の方に使う際には注意が必要です。
【類語⑤】照らし合わせる
日常的に耳にすることも多い「照らし合わせる」という言葉、こちらは二つ以上のものを比べることを意味します。「去年と今年のアンケート結果を照らし合わせる」のように、見比べることや照合する際に使います。ビジネスの場でも使えそうな言葉です。
【類語⑥】慮(おもんぱか)る
「鑑みる」に並び、「慮る」も知っているようで知らない日本語ではないでしょうか。読み方は「おもんぱかる」です。
「おもんばかる」と読む人もいるそうですが、実はこれは間違いで、正しくは「おもんぱかる」です。一見難しい印象を受けますが、「思慮」や「遠慮」の「慮」であることからわかるように、考えることを意味します。深く考え想像することを指します。
【類語⑦】顧慮(こりょ)する
読み方は「こりょする」です。気にかけること、心配することを意味します。「世間体を顧慮する」や、「先方の状況を顧慮する」といった使い方をします。
【類語⑧】斟酌(しんしゃく)する
読み方は「しんしゃくする」です。相手の事情や心情を汲み取ることを意味します。
難しい言葉ですが、「斟」も「酌」も「汲む」を意味します。「汲む」は水などをすくいとることを意味しますので、イメージで覚えればわかりやすいですね。「利用者の個人差を斟酌する」のように使います。
【類語⑨】視野に入れる
「視野に入れる」は物事を検討する際に、考えに入れることを意味します。「海外への進出も視野に入れる」のように使います。
視野というのは、一点を見つめたときに見える範囲のことです。比喩的に意識や思考の範囲の意味を持つことがあります。そのように「視野に入れる」は、意識的に考えや思考に含める意味を持つときに使います。
「鑑みる」の英語表現・例文集も
次は、英語での表現を紹介します。「鑑みる」は英語で何と表現するのでしょうか。リンゴは"apple"と一単語で表現できますが、「鑑みる」そのものを意味する英語の単語はありません。英語では「鑑みる」を以下のように表現できます。
・in view of 〜
・When I take 〜 into account,
・Considering 〜,
・Looking back on 〜,
例文を紹介します。英語の下に和訳を記載します。
・In the view of her failure, I should work out another approach.
彼女の失敗に鑑みて、私は別の方法を提案すべきだ。
・Considering the heavy weather, we have decided to change the schedule.
今回の荒れた天候を鑑みて、私たちは予定の変更を決定した。
このように、英語の場合は、上記で紹介した表現の後に原因を述べてから、結果を述べています。直接的な表現を好む英語ならではの表現ですね。
意味を覚えて正しい「鑑みる」の使い方をしよう
いかがでしたでしょうか。「鑑みる」の語源は「鏡」であるということは驚きでした。語源を知ると使い方も自然に理解できますね。ぜひこちらの記事を参考に、「鑑みる」の使い方をマスターして言い回しの達人になりましょう。
「鑑みる」同様に、「考察」や「観察」など意味の違いが難しい言葉があります。論文やレポートを書く際に役立ててください。