『アウフヘーベン』の意味や使い方!例文付きで分かりやすく解説!
アウフヘーベンはドイツ語由来の言葉なんだそうです。小池氏発言から日本では哲学的弁証法由来の意味で広く知られていますがドイツでは日常的な使い方が一般的なようです。2017年流行語にノミネートされたアウフヘーベンの由来や例文など詳しくわかりやすくご案内します。
目次
『アウフヘーベン』の意味とは?
2017年のユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされた『アウフヘーベン』。東京都知事の小池百合子氏が多用したため日本の流行語に上ったわけですが、小池氏の発言や流行語として初めて聞いたという方も多いはずです。
小池氏の発言内容から何となく議論の時に使われるのかなという印象の『アウフヘーベン』という言葉の直訳と意味から探ってゆきたいと思います。
後で説明しますが、アウフヘーベンはドイツ語が語源の言葉で、直訳は「止揚」「揚棄」です。
この言葉も日常には使われない言葉ですね。止揚の意味を調べると「アウフヘーベン」と出ることもあるので、『アウフヘーベン=止揚・揚棄』と意味をセットで覚える方が良さそうです。
アウフヘーベンの意味は、
・そのものとしては否定するが、契機としてより高い段階で生かすこと
・矛盾する要素を発展的に統一すること
言葉で説明しようとすると、そんな難しい文が出てきました。難解ですね。
上のアウフヘーベンの意味をわかりやすく分解してゆくと、
・それそのものは使えないけど他で転用できるところは使って有用性あるものにする
・ぜんぜん違うものを多角的な考え方で上手くまとめてゆく
ということなのかなと思いますがいかがでしょう。
何だか難しい概念めいたい言葉『アウフヘーベン』ですが、ドイツの日常では違う使い方もされているようです。こちらでは、アウフヘーベンの語源をわかりやすく、提唱者やドイツ語での意味、使い方や例文などもわかりやすく説明してゆきます。
知的ストックの1つに『アウフヘーベン』いかがでしょうか。
『アウフヘーベン』の語源は?
アウフヘーベンの語源はドイツ語です。ドイツ語で『aufheben』と表記されます。
アウフヘーベンはドイツ語で、
・廃棄する、否定する
・保存する、高める
という意味もあります。
アウフヘーベンという言葉が相反する考え方を内蔵していることが、ドイツ語での意味からうかがえますね。
『アウフヘーベン』の提唱者はヘーゲル
アウフヘーベンの語源はドイツ語と分かりましたが、ただのドイツ語というだけではなく、ドイツの哲学者であるヘーゲルが提唱した哲学用語なんだそうです。つまり、アウフヘーベンの語源はドイツ語であり哲学用語とも言えます。
ヘーゲル・セレクション
ヘーゲルの顔写真を探してたどり着いた一冊です。世界史を取った方は見たことがあるかもしれませんね。ヘーゲル(=ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル)は、18世紀後半を生きたドイツ観念論を代表する思想家のようです。
アウフヘーベンの由来はヘーゲルの提唱した弁証法の中で出てくる言葉のようです。弁証法とは、問題解決のための考え方や議論方法のことのようです。小池氏発言もあり日本ではこの哲学的弁証法としての使い方がもっぱら知られているようです。
アウフヘーベンの語源であり由来であるヘーゲルの弁証法について、わかりやすく次の目次でご紹介します。
『アウフヘーベン』の前提には対立する2つの概念が必要!
ヘーゲルの弁証法の中で使われるアウフヘーベンを詳しく説明するために知っておきたい「テーゼ」「アンチテーゼ」「ジンテーゼ」という言葉があります。この3つのテーゼを詳しくわかりやすく説明してゆきたいと思います。
一つの概念「テーゼ」とは
テーゼとは定立・立てられた命題・指針と訳されます。ヘーゲル弁証法では、三段階発展の最初の段階のことを指します。
テーゼを他の言い方で説明すると、存在する・実在する・すでにある主張や意見です。すでにそこにある物事や肯定的主張とも言います。
ある意見や考え方や物事を受け入れる、または、好意的にとらえる考えや意見など主張をテーゼと言うわけです。
テーゼだけではわかりにくいですよね。次のアンチテーゼと一緒に考えるとよりわかりやすくなると思います。
もう一つの対立概念「アンチテーゼ」とは
アンチテーゼとはテーゼの反対です。わかりやすく詳しく説明すると、テーゼに対して反対の立場を取るとか、反対の意見や考え方や主義主張を持つとか、そういうテーゼに対する反対の意見や主張全般のことです。
テーゼを理解するには、アンチテーゼも一緒に考えた方が良いようです。テーゼとアンチテーゼはわかりやすく言うと『敵』とか『対立する意見や物事』のようです。
出てきた新しい統合概念が「ジンテーゼ」
ジンテーゼは、より本質的で発展した第3の答えです。簡単にわかりやすく説明すると、テーゼとアンチテーゼという主張や意見など対立する2つの事柄から導き出されるテーゼともアンチテーゼとも違う答えのことです。
わかりやすい例文は後の目次でご説明しますが、こちらではテーゼとアンチテーゼのみで説明をしてみます。
例えば、ある案件(=テーゼ)に対して、問題点(=アンチテーゼ)があるとします。この案件の結果を導く方法はいくつかあります。
・問題を解決する。
・中間的な着地点(=第三案=ジンテーゼ)を探す。
・別の案(=第三案=ジンテーゼ)を考える。
この際の『案件と問題点という対立する事柄から結果を引き出す』ことを『アウフヘーベンする』と言うようです。アウフヘーベンするとテーゼともアンチテーゼとも違うより良い解決案=ジンテーゼを導くことができるというわけです。
小池氏発言のアウフヘーベンとは、話し合って第三案を探そうよという感じなのかなと思いますがいかがでしょう。小池氏のアウフヘーベン後のジンテーゼは分かりませんが、哲学的弁証法の中のジンテーゼは、テーゼ派もアンチテーゼ派も納得できる第三の案ということのようですね。
『アウフヘーベン』は本国ドイツでは違う意味?
アウフヘーベンするという弁証法は難しい理論ではありますが、話し合って解決しようという積極的な考え方由来の言葉でもありますよね。こちらではドイツでのアウフヘーベンの使い方について解説してゆきたいと思います。
ドイツでは哲学用語としてだけではなく日常会話でも使われる
小池氏発言で流行語に選ばれたアウフヘーベンという言葉、つまり、流行語に選ばれるほど日本ではあまり馴染みがない言葉と言えます。折衷案を考えたり何人かの意見をまとめるという思考的作業はやっているけど、名前をわざわざつけていないような感じですよね。
日本では使い方の難しい言葉アウフヘーベンですが、ドイツでは日常会話での使い方があるようです。
日本でアウフヘーベンを検索すると必ずヘーゲルの弁証法がヒットするのですが、ドイツでは日常に使う動詞として使われています。
aufheben
動詞:持ち上げる・拾い上げる
動詞なんですねぇ。小池氏が使っているようなまたは日本で検索で出てくるような哲学的弁証法で使うアウフヘーベンとしてよりも「持ち上げる」「拾い上げる」という動詞での使い方がドイツでは主流のようです。
結構なドイツ人の方がこの意味で考える人が多い
小池都知事の豊洲移転問題をめぐる発言で話題となった「アウフヘーベン」。都知事はヘーゲルが提唱した「止揚」を言っていたと思いますが、アウフヘーベンは大使館員も含め大半のドイツ人にとっては至って普通の動詞です。意味は「持ち上げる・拾い上げる」。日頃色々なものをアウフヘーベンしてます。 pic.twitter.com/8ovCr96ysW
— ドイツ大使館 (@GermanyinJapan) June 26, 2017
ドイツ大使館のツイートから判断しますと、アウフヘーベンするというのは『持ち上げる』という意味が一般的なようです。この言葉の意味で使っている人の方が多いのではないのかなぁという印象ですね。
有名な『アウフヘーベン』の使い方と例文3選!
小池氏発言より哲学的弁証法由来の言葉として日本では流行語にノミネートされたアウフヘーベンという言葉の例文的な使い方やアウフヘーベンする弁証法の考え方的な例文をこちらでご紹介します。
こちらで紹介する例は、哲学的弁証法由来のアウフヘーベンの使い方です。ドイツ語の日常での使い方と違うということを豆知識として押さえておきましょう。
①いちご+大福=いちご大福
テーゼ:いちごが食べたい
アンチテーゼ:大福が食べたい
↓
アウフヘーベンして
↓
ジンテーゼ:いちご大福を食べよう
いちごが食べたいという人と大福が食べたいという人の両方の意見をアウフヘーベンして、イチゴ大福にしたら良いじゃないというジンテーゼが生まれたという例文です。
この例文の場合、いちご大福が嫌いかもしれないということが度外視されています。アウフヘーベンというよりは、両方を組み合わせただけという考え方もあるかもしれません。いちごとも大福とも違う第三案=ジンテーゼをいちご大福と仮定した場合の例文です。
②三角に見える+丸に見える=円錐(えんすい)
テーゼ:この図形は三角形
アンチテーゼ:この図形は丸
↓
アウフヘーベンして
↓
ジンテーゼ:円錐
三角にも丸にも見えることが同時に存在する図形とは……というクイズとして考えてみてください。そんな図形あったっけとアウフヘーベンすると答えが円錐と導くことができます。
柔軟な考え方を必要とする時の例文にもなりますね。物事には色んな側面があるという弁証法にも使うことができます。
③車+環境問題=エコカー
テーゼ:車は便利
アンチテーゼ:排気ガスは環境問題
↓
アウフヘーベンして
↓
ジンテーゼ:エコカー(電気自動車)
どんな物事にも賛否両方の見方や立場や見え方があります。自動車で言うと、便利ではあるけれど排気ガスが環境問題になっています。排気ガス規制だけではもう環境問題が深刻と分かっていても車を捨てる生活ができるかというと無理ですよね。そこでアウフヘーベンして、車で生活して環境問題を無くすことを両立させるジンテーゼがエコカーというわけです。
『アウフヘーベン』を理解して言葉を楽しもう!
アウフヘーベンしようと言うとなんて高尚なことを言う人だろうと思われるかもしれません。流行語にノミネートされたと言っても、あまり日常会話では使いませんよね。ですが、概念は使っています。
子ども2人がおもちゃを取り合っていたら順番に使う方法を提案したり個別に興味を持つだろう他のおもちゃで興味を引いたり、旅行の目的地を決める時にAとBという2案が出てしまったらAとB両方行くことにしたり夏と冬で分けて出かけたり、そんなやり取りはありますよね。ドイツ語が語源のアウフヘーベンという言葉は知らなくてもアウフヘーベンという思考はすでに持っているわけです。
どうしても意見がまとまらないという時に頭の片隅にアウフヘーベンの弁証法があると頼れる存在になるのかもしれません。アウフヘーベンを味方にしてより良いジンテーゼで日常に小さな楽しみが増えますように。