「エレファントマン」と呼ばれたジョゼフメリックの実話

映画エレファントマンの予告編(英語版)私が見たエレファントマンは鮮烈で、白黒なのが、逆に良かった映画だったと思います。
見た時が中学1年生の時で、今でも鮮明に覚えているのです。
特にラストを。
ジョセフ・メリックって人は、多分映画以上の目にあってたんだと思います。

出典: https://pin.it

フレデリック・トレヴィス医師

ジョセフ・メリックの噂を聞いて、彼を見に来た外科医。
ジョセフ・メリックの27年の人生の中で、唯一自分を理解しようとしてくれた無二の親友。

ジョセフ・メリックと医師フレデリック・トレヴェスが出会ったのはイギリスのホワイト・チャペルロードで興行していた見世物小屋でした。
ジョセフ・メリックにとって主治医で無二の親友となるフレデリック医師は、エレファントマンの噂を聞きつけてやって来ました。
この出会いがフレデリック医師にとっても、ジョセフ・メリックにとっても運命の出会いとなります。

メリックに救いがなく、見世物小屋で亡くなっていたかも知れません。
メリックは、医者にかかる事もなく、原因不明の病気で片付けられて悲惨な結末で、終わっていたのかも知れないし、プロテウス症候群の発見が遅れた可能性も否定出来ません。これは、フレデリック医師とメリックの奇跡の実話なのです。

出典: http://anima.x51.org

ジョセフ・メリック

生まれた時は健常だったが、徐々にこぶが出来、こうなってしまった。

ジョセフ・メリックはイギリスのレスターで生まれています。
生まれた時は健常児でした。
突然の異変は、まだ赤ちゃんの頃に出て来たみたいです。
最初は口の異変から始まり、段々顔や身体がこぶやイボでいっぱいになり…
小さい頃に転倒して、頚椎を痛め杖なしでは歩けなくなりました。

出典: http://anima.x51.org

ジョセフ・メリックの絵

ジョセフ・メリックを描いた絵

ジョセフ・メリックは、公立の学校を卒業した12歳の時に、葉巻工場に就職しましたが、手が動かしにくくなり、葉巻工場を辞め、行商人資格をとり、行商を始めました。
が段々顔がひどくなって、怖がれるようになり、行商人資格を剝奪され、
就労不能として自らレスター救貧委員会に出頭、レスターユニオン救貧院に収容されます。

ジョセフ・メリックは、父ジョセフ・ロックリー・メリック母メアリー・ジェーン・メリックの長男として生まれています。
母メアリーは、生まれつき障害があり、公立学校を卒業後メイドで生計を立てます。
ジョセフ・ロックリーは倉庫で働いていました。
メアリーは、日曜は、日曜学校の教師をしていました。
出会いは教会ではないかと思われます。
2人は結婚し、長男が誕生します。
長男の名前も教会で付けてもらったみたいです。
ジョセフ・ケアリー・メリックと名付けられた子は、元気な健常児でした。

上の画像は
フレデリック医師の妻に母の写真を見せる映画のシーンです。
本当に母メアリーは美しい人だった様です。

異変は生後21ヶ月後に起こります。まず口元に大きな腫れ物が確認され、どんどん広がって行くのです。
メアリーは4人の子をもうけますが、次男、三男は天然痘と猩紅熱で夭折し、長女
マリアン・イライザも障害があったといいます。

ジョセフ・メリックは、幼少期に転倒し、腰を痛め、同時に関節炎も発症し、歩行困難のハンデも背負ってしまいます。
子供が2人夭折し、残った子供には障害がある…
メアリーは、悲しみの中にいました。

メアリーは、悲しみを打ち消す様に、洋品店を切り盛りします。
ジョセフ・メリック11歳の時…
メアリーは、過労による気管支肺炎を発症し、亡くなります。
まだ36歳の若さでしたが
後にジョセフ・メリックは、母メアリーについてトレヴィス医師に美しい人だったと語っています。

ジョセフ・ロックリーは家を売り払い、メリック一家は、下宿生活を始めます。
下宿の女主人のエマ・ロック・アンティルとジョセフ・ロックリーは恋仲になり、子持ちのエマと再婚し、再び家に戻り、洋品店を始めました。
 

出典: http://purebands.blog136.fc2.com

エレファントマン

やがてジョセフ・メリックはエレファントマンとして生きる事になる

ジョセフ・メリックは、12歳で公立学校を卒業後、葉巻工場へ就職します。
これがジョセフ・メリックの最初の自立への活動となります。

2年後…
手の変形が進み、葉巻工場を退職します。
これが最初の挫折です。

葉巻工場を退職したジョセフ・メリックは、父ジョセフ・ロックリーの支援により、行商人資格を取得。
実家の洋服等を売り始めます。
でもジョセフ・メリックの病気はどんどん悪化して行きます
後にプロテウス症候群と判明しますが、彼の死後の事になります。

顔を見ただけで、逃げて行く人も増えていき、行商人資格を剝奪されます。
これがジョセフ・メリックの2度目の挫折になります。

行商人の頃…継母エマとの不仲が原因で、叔父のチャールズ・メリックの元に身を寄せます。
やはり、彼の容姿が気に食わなかったと言う感じでしょうか？
妹のマリアン・イライザも公立学校を出た後は勤めに出て自立しています。
エマは、障害児の継母にはなれない性格だったのでしょう。
ジョセフ・メリックとマリアン・イライザは父の再婚で幸せにはなれなかったようです。

仕事が出来なくなったジョセフ・メリックは、決心してレスターの救貧法委員会に労働不能を理由に救済を求めます。
本意ではなかったと思いますが、働けない事の負い目もあったのでしょう。
救済が受理された事により、ジョセフ・メリックはレスター・ユニオン救貧院へと入所する事になりました。
これもジョセフ・メリックにとっては挫折だったんだと思います。

ジョセフ・メリック若干17歳の事でした。

 

出典: http://fromvictorianage.blogspot.jp

イギリスの救貧院

ホームレスや障害者や身寄りの無い子供等が収容され、仕事も与えられたが環境は劣悪で、流行病や結膜炎とにかく誰かが病気で、ノミやシラミにも悩まされた。

出典: http://peoplesstorm.hatenablog.com

メリックが生きたヴィクトリア朝時代の救貧院の様子

救貧院はいつも満員でこの様に棺桶の様なベッドがあるだけましである。
仕事は与えられたが、糸紡ぎや薪割りやお金にならない仕事ばかりで、自立には繋がらなかった。
子供は公立学校の義務教育を受けさせねばならない決まりだったが、義務教育を受けさせてもらえなかった
メリックが義務教育を終えないまま救貧院に行っていたら、フレデリック医師も知能の遅れと誤解したままだったろう。

イギリスのどこの救貧院でもありがちな
・不潔で臭う
・伝染病の蔓延
・ノミ、シラミが蔓延
・病死か餓死か仕事を見つけて出所するか
・逃げると罰が与えられる

ジョセフ・メリックが入所したレスター・ユニオン救貧院も例外ではなく、慢性的に結膜炎が流行り、ノミやシラミに悩まされ、簡素な食事が少し出るのみで、労働をさせられた。
流石にジョセフ・メリックも我慢出来なかったのか、救貧院を脱走しますが、
行くあてもなく2日で救貧院に戻ります。

出典: http://kimageru-cinema.cocolog-nifty.com

オリバー・ツイスト

映画や舞台やテレビドラマやミュージカルにもなっているチャールズ・ディケンズの小説である。
主人公のオリバーが救貧院で食べ物のおかわりを要求しただけで、追い出される。
イギリスのヴィクトリア朝時代は大体弱者はそうだった。
メリックがよく5年も辛抱したなと感心させられた。

20歳になったジョセフ・メリックは、レスター施療院で上顎にあった20cm程の腫瘍の手術を受けます。食べるのも、喋るのも困難になった為だと言われています。
ジョセフ・メリックはこれ以降更に2年救貧院で過ごす事になります。

上の映像を見て欲しい。
プロテウス症候群は、色々な症状を起こします。
トリさんと言う少女は、ダウン症で生まれ、後にプロテウス症候群と診断され
今に至ります。
自分の力では生きて行けません。

プロテウス症候群は、今も原因が掴めない病気です。
わかっているのは、遺伝子の異常であるのと、先天性である事。

ジョセフ・メリックは、大いなる遺産を残しています。
遺骨です。

今もジョセフ・メリックの遺骨からDNAを抽出して研究が行われていますが、
没後128年…DNAの劣化が激しくなかなかDNAを抽出出来なくなっていますが、医学も進歩して、今もジョセフ・メリックは、全てのプロテウス症候群の人達の希望なのです。

プロテウス症候群の死亡事例で献体を希望する人は今のところいません
ジョセフ・メリックも好きで献体したのではありませんが…

128年前に死んだ人の遺骨からしか、今のところ研究出来ないのです。

上の映像はプロテウス症候群でメリックよりも若くして亡くなった青年です。
外出したのは生涯で4回。
病気の事が完全に解明されて、少しでも治す術が見つかる事を祈るばかりです

上の文章はWikipediaから引用したものですが、上の通りです。
ジョセフ・メリックは救貧院で5年過ごした後22歳で奇形者を出演させる興行師兼コメディアンのトム・トーの存在を知り、自分の身の上を切々と書いた手紙を認め送って、トーは実際ジョセフ・メリックと面会し、ジョセフ・メリックを見世物興行の世界に入れる事を決め、やっとレスター・ユニオン救貧院から出る事が出来たのです。
救貧院での5月は長かった事でしょう。

サム・トーは、実業家のサム・ローパーとJ・エリス、奇形者の世界興行を手掛ける。
トム・ノーマンにジョージ・ヒッチコックこの4人で、マネジメント団結成!!
ジョセフ・メリックは彼等によって「半人半象・エレファトマン」と言うキャッチフレーズで売り出す事に…
こうしてエレファントマンは誕生しました。

出典: https://dic.pixiv.net

エレファトマン

エレファトマンとなったジョセフ・メリックは出歩く時はいつもこの格好だったと言う。
見世物小屋に出る時もこの格好で、マスクを外した姿が見世物になってしまった。

エレファントマンがデビューした時は大盛況でした。
ジョセフ・メリックの自伝と言うパンフレットも作られ売れました。
これはジョセフ・メリックが書いたとの触れ込みだったのですが、多分ジョセフ・メリックをプロデュースしている4人の誰かが書いたと思われます。
向上を読み、エレファントマンの登場を促していたのは、トム・ノーマンだと言われています。

映画の酷い興行師はトム・ノーマンでかなり酷い事もしますが、実際は、あまり暴力を振るったりはしなかったみたいです。
一応見世物ですからね。
興行が出来なくなったら結末は、なぶり殺し…
実際、興行主に逆らって、殺された見世物もいたようです。

興行主が盛り上げる為の口上です。

『彼の母親が彼を妊娠中五月祭で町を訪れた移動動物園のパレードに行ったところ誤って行進して来た象の足元に転倒強い恐怖を味わった事が原因で生まれて来た象男』

こんな言葉で煽ってエレファントマンを呼び込み公開していました。
あまりの恐怖に泣き叫ぶ女性もいたそうです。

フレデリック医師は、その姿を見て涙したそうです。

ジョセフ・メリックは、フレデリック医師の診察や他の医師の診察等を、受ける事になります。
フレデリック医師は、ロンドン病理学会で、ジョセフ・メリックの症例を発表し、ジョセフ・メリックは標本として病変を見せています。

3ヶ月後に再びフレデリック医師は、病理学会にて写真を元にジョセフ・メリックの病変を説明しています。
これを元にロンドンのユニバーシティ・カレッジの内科医ヘンリー・ラドクリフ・クロッカーはジョゼフを「皮膚弛緩症および神経腫性象皮病」と診断しています。

まだプロテウス症候群って病気が発見されなかった頃の見立てで、この頃は多分遺伝子学も発展してなかっただろうし…
 

プロテウス症候群と呼ばれ始めたのは、1979年と歴史は浅い。
エレファントマンが公開される2年前になります。
(日本公開が1981年、全米公開が1980年）

DNAを調べる技術と破壊される遺伝子がAKT1と言う遺伝子だと言う事が解ってるのみの難病です。

結構、英語の物がYouTubeでは多いですが…
映像見ただけで状態が解ってもらえると思います。
いくら珍しくても、いずれは飽きられて行くのです。

エレファントマンも、芸をする訳でもないので段々見世物小屋で飽きられ、小屋は営業不振に陥っていきました。

出典: http://purebands.blog136.fc2.com

見世物小屋でのエレファントマン

裸で人前に出され、ジョセフ・メリックはどう思ってたのだろうか…
何故裸で裸にならねばならなかったのか…

出典: http://itpatsuya.blogspot.jp

ジョセフ・メリックの頃の見世物小屋の様子

奇形の人達は見世物小屋で、見世物になるしかなかった。
人身売買がごく普通に行われていたのがジョセフ・メリックの時代である。

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アイヌ人

アイヌ人はアイヌ人だからと言って、内地で見世物小屋に売られることもあった。

経営不振は、どうしようもなくなり、興行師のトム・ノーマンは、ジョセフ・メリックをオーストリア人に売り飛ばしてしまいます。
勿論マネジメントをしていたトム・トーやその他の人達も早々に去っていき、エレファトマンはオーストリア人興行師と共にヨーロッパ中を回る事になったのです。

エレファントマンはヨーロッパ興行に出ます。
けれど、興行はことごとく失敗します。
そしてとうとう、オーストリア人興行師は、ベルギーのブリュッセルで、イギリス行きの乗船券だけを渡してエレファントマンを置いて去ったのです。
ジョセフ・メリックは捨てられたのです。

ジョセフ・メリックは、ブリュッセルからオスデンテまで無けなしのお金で向かい、船に乗ろうとしますが、乗船拒否されてしまいます。
原因は、わかりますけどね…
マスクを被って、黒いコートに帽子…
怪しい人に見えるのは、わかります。
でもマスクを外したら、もっと乗せてもらえないでしょう。
確かに姿は怪しいですが、乗船券も持っているのに…
ジョセフ・メリックが途方にくれた時に奇跡は起きます。
 

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メリックが被っていたマスクと帽子

今も大切に保存されている。

勿論、ジョセフ・メリックは途方に暮れるます。
途方に暮れていたジョセフ・メリックに助言してくれた人がいます。
ウォーデル・カーデュー…
彼がいなかったら、ジョセフ・メリックはイギリスには帰れず野垂れ死にしてたかも知れません。
彼の助言で、ジョセフ・メリックは、アントワープから船に乗って、イギリスハリッジに向かいました。

後にウォーデル・カーデューは友人の俳優への手紙にこう書いています。
『オスデンテでこの上もなく痛ましい患者を見た』
カーデュー氏は医療関係の人物だと言われてますが、詳細はわかっていません。

 

イギリスハリッジに到着したジョセフ・メリックは、リバプールに向います。
手元にはフレデリック医師の名刺を持って、それを頼りに、ジョセフ・メリックは、フレデリック医師の元に向かっていました。
エレファントマンからの脱出はすぐそこに迫っていました。

ジョセフ・メリックは、フレデリック医師を探して、保護を申請します。
ジョセフ・メリックには行く場所がなかったからです。
彼は26歳になっていました。
もう救貧院には行きたくないのが本音だったと思います。
ジョセフ・メリックは、特例でロンドン病院収容される事になりました。

4年もの間、エレファントマンとして生きたトラウマは払拭なかなか出来ないもので、
ジョセフ・メリックはなかなか人に心を開く出来ず、看護婦さんを見ても怯える感じであったと言います。
勿論看護婦さんも怯えて、初めて見た人は悲鳴をあげたと言います。

フレデリック医師や看護婦さん達は、口があまり開かず聞き取り難いジョセフ・メリックの言葉を聞き取る努力をしました。
話を聞いてくれる人達がいる事で、ジョセフ・メリックはだんだん心を開いていきます。
フレデリック医師は、忙しい中週1回は必ずメリックの元を訪れ、話を聞いたと言います。

ジョセフ・メリックは、専用の部屋を与えられ、手厚い介護をしてもらっていたのですが、デヴィッド・リンチ監督作品だけあって、オリジナルの悪キャラも出て来ます。
病院の夜警のジムで、メリックの部屋に、人を呼んで見世物にしていました。
メリックの嫌いな鏡を見せて、嫌がるメリックに小銭を渡して自分も楽しんでいたり、映画エレファントマンでは､かなりのインパクトのある役だったと思います。
もしかしたらもっと酷い目にもあってるのかも知れないのだけど、やっぱり、完全に幸せになるのは、難しかったのではないかと思いました。
閑話休題のつもりで、エレファントマンの映画のストーリーの中のメリックが保護申請し、ロンドン病院に入ったあとに現れた悪役について書いてみました。

ロンドン病院での、ジョセフ・メリックの滞在費用が病院経営を圧迫し始め、限界になろうとした頃…
院長のフランシス・カー・ゴムが、イギリスの雑誌タイムズで、ジョセフ・メリックへの寄付を募る記事を寄稿したのです。
カー・ゴム氏の思惑通り、寄付金や激励の手紙が届き始めます。

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メリック全身

正常なのは、当時は、生殖器だけだと言われて来た。
実は内臓も脳も正常であった。
どうしてこうなったのか128年経っても原因は不明である。

フレデリック医師は、最初のに診察した20代前半の頃は、知能は遅れているだろうと思っていた。
メリックがあまり話さないのもあったのでしょう。
彼は元々義務教育を留年なし(昔はヨーロッパは留年制度があり、一定以上の成績が取れないと留年させられた。アルプスの少女ハイジのペーターは母国語のアルファベット(ドイツ語だからアルファベットとは言わないが）ペーターはハイジと同じ学年で勉強している。ハイジ8歳ペーター14歳である)で卒業している普通の知能の持ち主なのです。
フレデリック医師がその事に気がついたのは、メリックが聖書の一節を暗唱していたのを聞いてからですから、かなりあとになります。
それ以降ポツリポツリと自分の事を話すようになっていきます。

メリックは、カー・ゴム氏のタイムズ誌の寄稿により、会いたがる名士が多くなります。
高名な女優マッジ・ケンドールが会いに来た事をきっかけに、ますます、名士が会いたいと言うようになっていきました。
ケンドールとフレデリック医師の友人の若き未亡人とはメリックが亡くなるまで交流があったみたいで、若き未亡人には御礼の手紙を送っています。
それが今でも残るメリックの筆跡となっています。

出典: https://pin.it

ジョセフ・メリック直筆の手紙

メリックが若き未亡人に出した御礼の手紙。
これが現存するメリックの唯一の手紙。

女優マッジ・ケンドールが頼んで男爵夫人の特別席をメリックの為に用意した様です。
ケンドールはメリックに蓄音機を送ったり、籠細工に興味を持ったメリックに先生を派遣してくれたりしました。

名士の招待で、いい席で初めてメリックは観劇をします。
映画ではオペレッタだったみたいですが、実際はパントマイムだと言われています。
メリックは1年の間に色々な経験をします。
そして穏やかな日々を送って行きました。

メリックは、初めて、自分の療養の為にノーザンプトン近郊のフォースリーパークに名士の夫人の好意で6週間田舎の生活を経験します。
初めての経験で、メリックはメリックなりに楽しい時間を過ごしました。
メリックは、名士の慈善活動にはついてどう考えていたのでしょう?
メリックの病気を名士達はどう思っていたのでしょうか?

メリックは、この頃宗教に傾倒、ロンドン病院付きの牧師トリストラム・ヴァレンタインの影響によりイギリス国教会の教義を受けプロテスタントパプテスト派からイギリス国教会に改宗します。
窓から見える教会がイギリス国教会の教会だったからだと言う話もありますが、メリックは、一生懸命色々な事を勉強して行きます。

映画での最後は、自分で作った窓から見える大聖堂の模型が完成し…
終わった…そう呟いて…
幸せそうに寝ている少年の絵を見て…
座って眠れる様に積み上げていた枕をどかし始める…
そして亡き母の幻を見ながら永遠の眠りへと就く…
エレファントマンのラストリアルタイムで見に行った私にはこの幸せなのか、悲しい最後なのかわからない結末にとめどなく涙が溢れました。
この結末が実話だとどうなるのでしょうか?

1890年4月…
メリックはすっかり身体が弱くなり、起きる事もままならない程になっていました。
10:00とか正午に目を覚ますのが当たり前になっていたのです。
その日…
担当看護婦さんが巡回した時は、異常なしでした。
メイドがいつでも食べれる様に食事を置いて行った時も寝息が聞こえたそうです。
午後3:00頃…
定期回診で来たフレデリック医師付きの研修医が仰向けに寝て息をしていないメリックを発見。
メイドが置いていった食事も手を付けずにそのままで…
研修医ホッジスが、先輩研修医アッシュを呼びこの2人で死亡確認を行い正式に死亡が確認されました。
享年27歳でした。

メリックの本人確認は叔父のチャールズが呼ばれ確認しました。
実の父や継母や妹は来ませんでした。
妹のマリアン・イライザはメリックの死の翌年亡くなっています。
父ジョセフ・ロックリーはメリックの映画の死の7年後に亡くなっています。
体調が悪かったのかも知れません。

出典: https://pin.it

エレファントマンのポスター

色々なところでグッズが作られ、全額奇病に苦しむ人達に寄付された。

この死と言う結末は色々な説が未だにささやかれています。
まずは自殺説…
デヴィッド・リンチ監督は、結末を綺麗に描いていますが…
デヴィッド・リンチ監督は、死の原因を自殺である様に描いています。
実話と言っても、メリックが語った事では無いし、自殺だとしても、遺書は遺されていないです。
メリックの死の原因と真相は誰にもわからないのですが、デヴィッド・リンチ監督の解釈はこうだったと思いながら映画を見るとまた違って来るのではないかと思います。

実話ではあるのですが、本人が遺したのは、自分の身体と自分が羽織っていたコートとマスクだけです。
誰かが、枕をわざと外しての事故死に見せかけた他殺説…
死の原因がわからないだけに色々な憶測が出ます。

これが一番のスタンダードな考え方ではあるのですが。確かに一番信憑性はありますね。実話って言うのはこう言うもんかとそれなりに納得出来ます。

自分が寝やすいポジションに移動しようとして、滑っての窒息死、または頚椎の脱臼が原因と見て間違いないって言うのが見方です。

結末ってそう言うものなんですよね。
デヴィッド・リンチ監督の映画の様に綺麗な結末って実話では、想像しないと駄目ですからね…

死の際のメリックは、映画の様にはもう動けなかったみたいです。

これは、メリックの死後ロンドン病院の院長カー・ゴムがタイムズ誌に寄稿しています。メリックの死の原因や寄付金を寄せてくれた人達への御礼等を書き最後は、メリックへの莫大な寄付はロンドン病院で使わせてもらう旨書いています。
メリックの様な人々の病気の基金を設立したり、恵まれない人達やまともに医療を受けられない人達の為に使うとかすれば、カー・ゴム氏の株はもっと上がったんでしょうけど、王立病院だからそんな訳にも行かなかったのでしょうか?
メリックは、皇太子共交流があったメリックだったのに…
まぁ現実はこんなものでしょう。

ロンドン病院に入る際にメリックは自分の死後は自分の身体を献体するのに同意しています。だからメリックは、保存される事になったのです。
今は大英博物館にひっそりと保存されていますが、当時は、皮膚や病変部等も保存されていたのですが、戦争で消失してしまいます。
遺骨を残す事に成功した大英博物館のお陰で、今もプロテウス症候群の病気の研究が出来るのです。
本当にメリックの遺骨はメリック最大の遺産ではないでしょうか。

メリックの遺骨をCTにかけたり、先端医療でメリックの研究が行われました。
それが上の映像です。既に100年超の遺骨です。
DNAも取り難い感じになっています。でも今は、メリックの遺骨しか無いのです。
プロテウス症候群の患者が少なくせいもありますが、献体してくれる家族がいないのです。
メリックは、環境がそうさせただけなのです。
研究材料が足りないのです。
それだけにメリックの遺骨は保存状態をきちんとしてくれてる大英博物館に感謝せねばならないでしょう。

こう言う病気を持つ子の親は、昔はメリックの様に見捨てられていたのが、今は、親が一生懸命育てるか、施設で育っても、本人の意思確認無しで亡くなったからと言って、
献体には出せません。
本人の意思確認が必要なのです。
それか家族の了承が必要になるのでなかなか献体しますって言う家庭がないのが現実でしょうか…
メリックは知能は普通でした。
でもプロテウス症候群の人の中には、ダウン症や違う遺伝子構造の病気を併発してたりして知能が低い人も少なく無いのです。
メリック以後プロテウス症候群の献体がないのは、そんな理由でした

結末を先に言うと、いたと思います。
ただ日本の場合異形の者や知能が遅れてる者や精神疾患者は隔離したり、山奥に捨てたり、死ぬまで倉で暮らした者もいたそうです。
もっと悲惨な事もあったみたいですが…
じゃがいも女と言う見世物があり、それがエレファントマンに似ていたと言う話もあります。
じゃがいも女の画像は残念ながら無かったので、日本のヘレン・ケラー見世物芸人から作家になった中村久子さんの映像を。
結末は、自分次第で変えられるのです。
メリックも、救貧院に行ったのも自分で、救貧院の生活が絶えられなくて、見世物小屋に手紙を書いて、見世物小屋に飛び込んだのも、フレデリック医師に保護を申請したのも、メリックが切り開いた人生なのです。

プロテウス症候群と言う病気の発見に貢献したのが一番大きいのではないでしょうか？
彼の遺骨が残って無ければ、遺伝子の病気だったって事もわからずにいたでしょう。
本当にメリックの功績は大きかったし、メリックは27歳の若さで、死という結末を迎えてしまったけれど、遺骨を遺してくれたお陰でプロテウス症候群の患者の希望の星に今もなってます。
私が、映画エレファントマンを見に行ったのは、中学生の頃でした。
ラストでぼろ泣きしました。
メリックがいなければ、私がデヴィッド・リンチ監督の作品なんて見たのかどうか…
そして今は飾ってあるのか謎の美術で生涯で2度目の賞を獲得した、エレファントマンのリトグラフを作ったかどうか…
筆者にもかなり影響を与えているのです。
かなり筆者の贔屓目も入っていますが。

出典: https://www.pen-online.jp

デヴィッド・リンチ監督のリトグラフ

デヴィッド・リンチ監督は、版画家であり画家でもある。
作品展が最近渋谷ヒカリエで行われた。エレファントマンの世界観に似ている作品も多い。エレファントマンは長編映画監督作品としては2作目である。

エレファントマンでハマって、ツイン・ピークスで不思議な世界観を見せてくれたデヴィッド・リンチ監督。
デヴィッド・リンチ監督がいなかったら、ジョセフ・メリック(映画ではジョン・メリック)は埋もれてたのではないでしょうか?
プロテウス症候群が1979年に病気として認定されて、本当に歴史が浅い病気です。
多分この映画が作られなければ、興味ある一部の人達しか知らなかったんじゃないでしょうか?
結末をああしてくれたお陰で、メリックは報われたと思います。
遺骨を122年後に、CTにかけられたのも、エレファントマンの影響だと思います。
映画エレファントマンは、実話とフィクションを上手く融合させた作品だと思います。
デヴィッド・リンチ監督のプロテウス症候群についての貢献は計り知れない物だと思います。

出典: https://blogs.yahoo.co.jp

エレファントマンその真実の記録

残念ながら今は絶版になっている。
図書館か古本屋で読めるかも知れない。
実話である。

メリックを実話に忠実に書いた書籍です。Wikipediaのジョセフ・メリックの項に書いてあるのは、殆どがこの書籍の引用となります。実話にしてみるとかなりリアルですけどね。
リアリストのミステリー好きの方は、絶版になってるので、Amazonか古本屋か図書館で探して読んで見るのもいいかも知れません。
結末を知ってて何度も読むと面白いですよ。

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