2021年08月02日公開
2021年08月02日更新
『ランリュック』って?京都がランドセルを廃止→リュックサックに!
小学校で使用する定番の学校カバンと言えばランドセルですが、実は京都などを中心とした近畿地方では、ランドセルの代わりにランドセルのようなリュック「ランリュック」が特定の地域で普及しています。ではそのランリュックとは一体どのようなものなのでしょうか?
目次
京都ではランドセルより定番の「ランリュック」
出典: http://www.randoseru-report.com
ランドセル
こちらは通常の赤いランドセル
皆さんは小学校で使っている学校バックと言えば何が思い浮かぶでしょうか?多くの方はランドセルを思い浮かべるのではないでしょうか?しかし京都など近畿地方の特定の地域では、ランドセルよりも多く普及している学校バックが存在しています。
「ランリュック」と呼ばれるそれは、ランドセルのような形をしているリュックであり、京都市内で製造されています。ではそのランリュックとは一体どのようなものなのでしょうか?詳しく調べてみました!
方言チャートに使われるほど浸透した「ランリュック」
出典: http://ssl.japanknowledge.jp
方言チャートの画像
出典元のサイトに飛ぶと方言チャートを体験できます。
ランドセルのようなリュック「ランリュック」は、関東などでは馴染みのないものですが京都で非常に認知度が高いため、方言チャートの中で京都出身かどうかの判別に使用されています。
方言チャートとは、方言に関する質問に答えていくだけで自分の出身都道府県が当てられてしまうというもので、東京女子大学の教授とそのゼミ生によって生み出されました。
出典: http://ssl.japanknowledge.jp
方言チャート100PLUSⅡ
都道府県方言チャートから更に細分化させて地域の絞り込みが楽しめるものです
方言チャートは辞典などを使用せず現地で実際に使われている方言を基に作成されているためその完成度の高さが話題となり、延べ700万人を超える人が利用したそうです。そんな方言チャートの中で京都出身かどうかの判断に使われている「ランリュック」とは一体どのようなものなのでしょうか?
ランドセルのようなリュック「ランリュック」とは?
出典: http://ranrick.com
ランリュック
ランリュック特大サイズバージョン
ランリュックとは先ほども少し触れたように京都府の南部地域から滋賀、大阪、奈良の一部地域まで小学校で利用されている通学用カバンで、ランドセルのような革素材の重いものでなく、布製のリュックサックのような形をしています。値段もランドセルと比べると非常に安価で入手することが可能です。
ランドセルの欠点を補うランリュック
出典: http://ranrick.com
ランリュックの裏側
ベルトには反射材が織り込まれている
ランリュックの特徴は、ランドセルよりも軽く小学校に通う子供の体に負担が少ないことと、布製でできているためランドセルよりも安く入手できることにあります。
また、元々がリュックサックの形をしているので小学校への通学以外にも遠足などでそのまま使用することができ、ポケットには校章を入れることができるのでどこの学校か一目で判断できます。
出典: http://maemukiblog.com
ランリュック3タイプ
現在はこのカラー3種類が主流
ランリュックはベルトの調整機能がついているため体に合わせて大きさを変化させることもできますし、ベルト部分には反射材を織り込んであり小学校への通学に際した交通安全にも配慮されています。また、近年は色のバリエーションも展開されていてお洒落なものも増えているそうです。
ランドセルとランリュックの比較
出典: http://www.pikachan.com
では次にランドセルとランリュックについてそれぞれの特徴を比較してどれくらいの違いがあるのか見てみましょう。
ランドセル ランリュック
材質 牛革・合革など 布製(防水加工)・ポリエステル
重さ(g) 870~1300 670~850
価格(万円) 4~7 0.4~1
機能性 6年間持つ丈夫さ 形が変わるので物が多く入る
比べてみると、ランリュックの方が圧倒的に軽く、安く、機能性もいいことが分かります。特にこの重さの違いについては小学1年生の小さな体には大きな違いとなるのではないでしょうか。
ランドセルのような「ランリュック」の開発経緯とは
出典: https://wedding.gnavi.co.jp
先ほども少し触れたように、ランリュックは京都市内にあるマルヤスという会社で製造されています。ランリュックはマルヤスの元社長で今は亡き鈴木正造という方が開発されました。販売が開始されたのは約50年前で、元々は洋服などを扱う会社でしたが、とある小学校からの相談を受けて当時社長だった鈴木さんがランリュックの開発に乗り出します。
ランリュックはランドセルが買えない子供のために作られた
出典: https://petr.jp
小学校の校長からの相談された内容とは、保護者から「経済的な理由で高価なランドセルが買えず、仕方なく豚革のランドセルを子供に買ってあげたら、他の子にお前のランドセルは穴が開いている、豚革だからだとその後ずっとブタ、ブタとからかわれてしまった。
元々学校が好きだった子供が学校に行くのを嫌がるようになってしまった」という話を聞き、より安いランドセルのような通学カバンが作れないか、というものでした。
出典: http://www2.town.shingu.fukuoka.jp
交通事故に関する資料のイメージ画像
このような資料が生地と共に多く発見されたそうです
社長の鈴木さんはその相談を受け早速試作を色々作り始めたそうです。また、ランリュックは当初から価格の問題を解消するという目的以外にも、「子供を交通事故から守る」という願いが込められており、当時小学生の交通事故に関する調査資料や新聞記事が生地の見本と共に発見されています。
出典: https://withnews.jp
その後1968年にランリュックは販売を開始し、発売当時の新聞にも高評価を得ています。発売当初は依頼を受けた小学校にのみ販売されていましたが、その安全性や価格の安さから次第に噂が広まっていき、1980年代のピーク時には採用する小学校が300校を超え年間2万個を売り上げていました。
ランリュックの名は勘違いから生まれた
出典: https://blogs.yahoo.co.jp
※ 画像はイメージです
ご家族の話によれば、ランリュックを開発した鈴木さんは、頑固者で勉強熱心でした。何かに打ち込むとご飯を食べるのを忘れるくらいで、やると決めたら突き進むタイプだったそうです。
出典: http://ranrick.com
ランリュックⅡ
よりランドセルに近い形のランリュックⅡ
ランリュックの元の名称は「ランリック」であり、こちらの名前で認識しているひとも多いそうなのですが、この名前は鈴木さんがリュックサックを「リック」と呼び勘違いしていたことから「ランリック」という名前が付けられたのだそうです。鈴木さんは2015年の6月に88歳がんで亡くなっており、現在は次男の大三さんが社長を務めています。
ランドセルのようなランリュック、女子高生なども使用
出典: http://www.seizanso.com
京都・宇治灯り絵巻
京都の南部地域にある宇治市で10月中旬に行われるお祭り
現在ランリュックは少子化などの影響もあって販売数は減少していますが、それでも年間約1万個近くを京都の南部地域から滋賀、大阪、奈良などの地域に販売しています。
出典: https://news.goo.ne.jp
さらに現在は昔ランリュックで育った子供が大人になり、自分の子供にも持たせたいと買いに来るお客さんが増えてきているといいます。また、女子高生やサラリーマンが通学通勤に使いたいと購入する事例や、遠方のお客からの需要が増えていることもあり、会社では今後更にネット販売を展開していく予定だそうです。
ランドセルのようなランリュック、子供たちはどう感じている?
出典: https://corp.allabout.co.jp
では実際に使っている子供たちはランリュックについてどのように感じているのでしょうか?ALL ABOUT(日本最大級の総合情報サイト)のランリュックに関する記事の中でランリュックを使う子供たちのコメントが載せられています。
出典: https://ameblo.jp
その記事によれば、「たくさん入るから手荷物がなくなっていい」「軽くて楽」「ランドセルよりデザインがかっこいい」「遠足にも使えて便利」など肯定的な意見が多く聞かれたそうです。中には「ランドセルの方がおしゃれ」という意見もあったようですが、これは海外の女優やセレブ達がファッションとしてランドセルを取り入れていることなどの影響も考えられるようです。
出典: http://agodasigen-fx.hatenablog.jp
ズーイー・デシャネル
ハリウッド女優で、歌手としても活動しているズーイー・デシャネルがランドセルを愛用したことで一気に人気が出たそうです
しかし、元々ランドセルにはその価格の高さについて以前から賛否が分かれています。貧困に苦しむ家庭で経済的理由からランドセルを購入できない子供に対しては、格差社会の現実を教えることもまた一つの教育であるという意見をする人も存在しますが、そこに子供の気持ちというものは含まれていません。
出典: https://blogs.yahoo.co.jp
ランリュックはランドセルに比べて価格も安く、機能性も高く、ランドセルに比べて利点が多く存在しています。ランドセルの利点としては高級感や丈夫さなども存在しますが、丈夫さに関しては、ランリュックの価格が安いために何度か買い替えてもランドセルよりは安く収まります。
また、元気に遊ぶ子供にとって高級感がある、という利点は利点とはなりえません。今一度他の地域でも導入の検討が行われてもいいのではないでしょうか?
ランドセルのようなリュック「ランリュック」まとめ
出典: https://minorihagukuminet.com
ランドセルのようなリュック「ランリュック」について調べてみたところ、小学校で実際に起きたランドセルを買えないという経済的理由が原因で起きたいじめがきっかけで開発されたことが分かりました。
また、ランリュックは元々小学生を交通事故から救いたいという願いも込められており、安全性や機能性も非常に優れている商品でした。
関東などではランドセルが当たり前の文化として根付いていますが、ランリュックの認知度が広まり関東でも採用する小学校が現れてほしいですね。