ブラジルのスラム街「ファベーラ」とは?治安や日常について

「ファベーラ」とはブラジルにあるギャングが牛耳る世界屈指のスラム街のこと。日本ではまだ馴染みの少ないファベーラについて、その背景、実際の治安や人々の暮らしなどを紹介します。最近では宿もあり、気軽にファベーラを訪れることが可能になったようです。

ブラジルのスラム街「ファベーラ」とは?治安や日常についてのイメージ

目次

  1. 1そもそもファベーラって何?
  2. 2ブラジルについておさらい
  3. 3ファベーラの歴史
  4. 4ファベーラの規模
  5. 5ファベーラの暮らし
  6. 6ファベーラの治安
  7. 7ファベーラには絶対に行ってはダメ?
  8. 8ファベーラを舞台にした映画
  9. 9ファベーラのまとめ

そもそもファベーラって何?

ファベーラとはブラジルの公用語であるポルトガル語で、貧民街やスラム街を総称する意味の単語です。アルファベットでは"favela"と表記します。ですから、「ファベーラ」=「ブラジルにあるスラム街」という理解で良いかと思います。

このファベーラは世界有数の規模を誇るスラム街として有名です。スラム特有の貧困、不衛生、ギャングによる凶悪犯罪といった治安の問題を抱えており、昔からブラジルの大きな社会問題の一つとなっています。

出典: https://matome.naver.jp

ファベーラ

世界有数の規模を誇るスラム街として知られるブラジルのファベーラの画像。丘の斜面を覆い尽くすように家が密集しています。ブラジルらしく、カラフルなペイントの家も見られますね。

ブラジルについておさらい

ブラジルの基本情報

ブラジルは地球儀で言うとちょうど日本の裏側にある南アメリカの大国です。国土は日本の約22.5倍あり、約2億人の人口を抱えています。かつてはポルトガルの植民地であったことから、公用語はポルトガル語です。多くの日本人が移民として入植した歴史もありますので、日系人も多いです。日本ではサッカー、コーヒー、サンバなどでも馴染みのある国である一方で、世界で7番目の経済規模を誇り、中国やインドと並んで有力新興国としての印象はまだ薄いかもしれませんね。

出典: https://coffeemecca.jp

ブラジルといえばコーヒー

有力新興国とされるブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の頭文字をとった言葉。2003年秋にアメリカの証券会社ゴールドマン・サックス社が、投資家向けリポートの中で用いて以来、マスコミなどで取り上げられるようになった。このリポートでは、今のまま経済が発展した場合、2039年にはBRICs4カ国のGDP(国内総生産)の合計が、米日独仏英伊6カ国のGDP合計を抜き、2050年にはGDPの国別順位が、中国、アメリカ、インド、日本、ブラジル、ロシアの順になると予想している。

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ブラジルの抱える貧富格差

ブラジルは豊かな国ではありますが、その富の配分は非常に不均衡です。一説によると、国の富の90%は人口のたった2%の裕福層によって寡占されているとか。

国民の60%もの人々が、その所得が国民平均所得の2分の1にも満たない貧困層に属しており2)、さらには、毎月最低賃金(70ドル程度)の半分以下の収入で生活している極度の貧困者数は、国民の32.1%に相当する5400万人にのぼります3)。

月70ドルの半分以下の収入での生活って想像できますか? 当然、家賃や光熱費、水道代なんて、まともに払うことができません。それゆえ、貧困層の人々はスラムで生活するしか方法がないのです。そして、その数たるや国民の3割以上ですから、大規模なスラム街としてファベーラが出来上がったのも納得です。

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ファベーラの歴史

ファベーラの本当の意味

ブラジルのスラム街を意味する言葉として有名になったファベーラですが、実は、元々はブラジルに生息する植物の名前だったそうです。正式には「Cnidoscolus phyllancatus」という学名があり、緑の葉と大きなトゲをたくさん持った植物だそうです。では、なぜ、この植物の名前がスラム街の代名詞となってしまったのでしょうか。

出典: http://xd.globo.com

植物としてのファベーラ

元々、ファベーラにはスラム街という意味はありませんでした。
画像では分かりにくいでうがトゲがいっぱいある植物です。

行き場のなくなった人々の受け皿

遡ること、1895年、ブラジル北東部のバイーア州で、当時の政府に反発した人々が勝手に「カヌードス」という町を作ってしまったことがきっかけで、政府とカヌードスの人々の間で戦争が起こりました。この戦争には元奴隷であった黒人が政府に雇われてカヌードの鎮圧に向かいました。彼らは無事任務を終えて、当時の首都であるリオデジャネイロに戻ったのですが、戦争の終結とともに職を失った兵士たちは、住むところさえなかったのです。そこで、彼らはリオの丘に自分達で家を建てて集落を作り住むようになったのです。彼らが誇りを持って戦い、勝利を収めたカヌードスの地にはファベーラが生い茂っており、やがて、彼らはその植物に因んで、「ファベーラの丘」と名づけたそうです。これが、「ファベーラ=スラム街」の意味となった始まりです。

出典: http://www.larepublica.ec

現在のブラジル兵

国旗とい、軍服といい、カラフルでかっこいいですね。

ファベーラの規模

ブラジル国内どこにでもあるファベーラ

ブラジルのほぼすべての大都市および中規模都市の郊外には、ファベーラが存在しているそうです。その数はリオデジャネイロだけでも1,000はあるのではと言われています。ブラジル国内全体ではどれくらいの数のファベーラがあるのかは想像もつきません。また、元々、公共の土地を不法に占拠している場合が多く、政府としても法的には存在を認めていないとか。そうなるともう、いくつのファベーラが存在するかなんて誰も把握できないのが現状でしょう。

出典: https://style.nikkei.com

見渡す限り広がるファベーラの景色。リオデジャネイロでは人口の約25%がファベーラに住んでいると言われている。

出典: https://style.nikkei.com

ファベーラらしい風景。勾配の急な斜面に所せましと家が密集している。狭い通りには露天、車、バイク、歩行者がひしめき合い、ファベーラならでわの猥雑さを醸し出しています。

拡大するファベーラ

ファベーラの人口は今も増え続けているようで、ブラジルの人口の約6%がファベーラに住んでいるのではと見積もられています。大規模なファベーラを抱えるリオデジャネイロでは、状況はもっと深刻で、は4人に1人はファベーラに住んでいるのではと推測されています。

出典: https://matome.naver.jp

リオデジャネイロの観光名所「コルコバードの丘」。
リオはかつてブラジルの首都でした。キリストが見下ろす町には大規模なファベーラが広がっているのです。

ブラジル最大のファベーラ「ホシーニャ」

リオデジャネイロには「ホシーニャ」と言う、ブラジル最大規模のファベーラがあります。その人口は政府の情報だと8万人ですが、現地の人によると30万人住んでいるのではないかと言われています。ずいぶん数字に差がありすぎて統計の意味があるのかとツッコミたくなりますが、いずれにせよ、誰も正確に実態が把握できないモンスター級のスラム街なのは間違いありません。画像を見る限りでもその規模の凄さが分かりますよね。

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ファベーラの暮らし

ファベーラの生活水準

ファベーラの暮らしの程度を一律に語ることは難しいです。なぜなら、ファベーラにも、貧しいファベーラと富めるファベーラの差が存在するからです。ですが、どのファベーラにも共通して言えるのは、インフラが整っていないことです。つまり、電気、水道なのどのライフラインがまともに整備されていません。電気は盗電、水はタンクに貯めて確保するのが一般的なのだとか。当然、ゴミ収集や下水も整ってはいないため、衛生面に問題を抱えています。しかし、ファベーラ内には飲食店や商店もあるため生活はファベーラ内で完結でき、インフラを除いた生活の不便さは意外に少ないようです。

出典: http://waooh.jp

何の画像か分かりますか?
盗電のために張り巡らされた電線の画像です。

ファベーラはタックスヘブン!?

社会インフラの恩恵を受けていないことがファベーラの一番の弱みなら、一番の強みは税金がかからないことです。正確には、税金を納めていないという方が正しいです。現状、ファベーラの人口も把握できないのですから、彼らに税制度なんて無意味ですよね。最近ではそこに目をつけた裕福層が、節税目的でファベーラの不動産を買い漁っているというのですから驚きです。

出典: http://www.asahi.com

タックスヘイブンについて

ファベーラとギャングの関係

ファベーラとギャングは切っても切れない関係にあります。ファベーラがコミュニディとして存在できているのも、ギャングによってファベーラ内の秩序が守られているというのが大きな理由です。ギャングは主に麻薬取引で資金を稼いでいますが、稼いだ資金の一部をファベーラ内の整備のために還元しているのだとか。そのため、ファベーラの住人は比較的ギャングには肯定的なのだそうです。しかし、ギャング同士の縄張り争いなど抗争が絶えないのもまた事実。ひとたび抗争が起これば血で血を洗う争いに発展するのです。

出典: https://matome.naver.jp

ファベーラの治安

ファベーラの治安はやっぱり悪いの?

やはり、基本はスラム街ですので、治安は悪いとしか言いようがありません。よそ者の観光客が興味本位で足を踏み入れることは厳禁です。怖いもの見たさで入ったはいいですが、問答無用で銃撃にあったり、強盗やレイプの被害に会ったツーリストも後を絶ちません。現地人でさえ身の危険を感じる場所ですから、日本の感覚でうろうろするのは危険行為です。近年、特にリオデジャネイロオリンピックの前から、警察の介入などファベーラの治安を改善しようとする動きはあるようです。

出典: https://matome.naver.jp

警察も本気モードですね。どれだけファベーラのギャングが危険なのかが伺えます。

リオのスラム街を警官1000人が制圧、犯罪追放作戦の一環 写真8枚 国際ニュース:AFPBB News

ファベーラには絶対に行ってはダメ?

ファベーラは危険なので行くなと言われれば言われるほど、行ってみたくなる人もいるかと思います。そんな人たちにオススメの方法があります。

ファベーラを安全に観光する方法

治安の悪いファベーラに行くのに一番安全な方法は、正式な訪問者となることです。最近は、現地ガイドによるファベーラを観光するツアーが提供されており、観光客に大人気だそうです。ファベーラを訪れるのであれば、こういったツアーに参加するのが一番でしょう。一本路地を間違えただけでも命の保証が無くなるような場所もあるので、調子に乗って、単独で行ってはいけません。

ファベーラには泊まれる宿がある!?

また、最近は、ファベーラに観光客用の宿ができ宿泊ができるようになったらしいので、地元の人々の暮らしやリアルなブラジルを感じたいという強者はファベーラ宿にチャレンジしてみるのも良いのではないでしょうか。また、日本人が経営しているファベーラ宿もあるようです。ブラジルは基本ポルトガル語しか通じないので、日本語が通じる宿であれば治安が悪くても不安は随分少なくなりますよね。ファベーラ宿の画像を見る限り、小ぎれいなアパート感覚で泊まれそうな宿に見えます。

ファベーラを舞台にした映画

ファベーラを題材とした映画もあります。日本の裏側ですし、実際に行くのは難しいですが、ファベーラについてさらに深く理解できますので、是非見てみてください。

「シティ・オブ・ゴッド」

ファベーラの存在をこの映画で知った人も多いと思います。1960年代から1980年代にかけて実際に起こったストリートチルドレン達の抗争劇を描いています。尚、タイトルの「シティ・オブ・ゴッド」とは実在するファベーラーの名前の英訳で、「神様の町」という意味ですが、なんとも皮肉なタイトルです。

出典: http://tsutaya.tsite.jp

「ファベーラの丘」

銃や暴力でなはく、音楽やダンスを通してファベーラに希望と平和をもたらそうと奮闘する活動家、アンダーセン・サーの姿を追ったドキュメンタリー作品。ジャケット画像に写っている子供の表情が何とも言えません。

出典: http://tsutaya.tsite.jp

「シティ・オブ・メン」

タイトルが「シティ・オブ・ゴッド」と似ていますが全く別のストーリーです。こちらはギャングの抗争劇よりも、ファベーラで暮らす人々の日常にフォーカスを当てています。ファベーラで幼い頃から一緒に育った少年二人の友情の物語です。ジャケット画像の銃を持ちながら白い歯を見せて笑う少年がシュールですね。

出典: http://tsutaya.tsite.jp

ファベーラのまとめ

ファベーラとはブラジルのスラム街のことで、その規模は世界屈指のものです。その背景にはブラジルのすさまじい貧富の差が存在しています。また、ギャング同士の縄張り争いや、ギャングと警察の抗争などがあり、決して治安の良い場所ではありません。

出典: https://matome.naver.jp

ファベーラの子供達の笑顔

たしかに、ファベーラの環境は劣悪で、暮らしは貧しいものかもしれません。しかし、そこに住む人たちは、明るく、逞しく、エネルギッシュに生きています。 ファベーラに暮らす彼らの生き方に触れることで、我々日本人も多くの学ぶことができるでしょう。

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