2021年07月01日公開
2021年07月01日更新
病身舞とは?朝鮮の伝統芸能とそこから見る朝鮮の文化の特徴
韓国に古くから伝わっているとされる伝統芸能「病身舞」、この「病身舞」は障害者を差別し見世物にしている舞だと言われています。しかしこれは本当なのでしょうか? 今回は「病身舞」の歴史や現状とともにそこから見る朝鮮文化の特徴についてご紹介します。
目次
韓国の伝統芸能である「病身舞」
ネットで「病身舞」と検索すると、韓国嫌いの右翼の人々による韓国攻撃が非常に目に付きます。情報を探してみると韓国の伝統芸能の一つであることが分かりました。しかし、その内容が日本人から見るとこの伝統芸能の持つ意味合いが差別的に映るため、右翼の人々から格好の攻撃対象となっているようでした。しかし、「病身舞」というのは、本当に差別的な意味を持つ舞踊なのでしょうか?
今回はそんな「病身舞」について詳しくご紹介します。
病身舞とは?
上の動画が「病身舞」です。病身舞とは、身体障害者や骨格異常者など体のどこかに障害を抱えている人、もしくはハンセン病の患者の姿をまねて踊る(身舞)、朝鮮に伝わる民間伝統芸能の踊りと言われています。祭日などに皆が集まって舞うようです。
こちらは、朝鮮学校での様子を映した映像です。確かに朝鮮学校の生徒たちが病身舞を踊っているように見えます。朝鮮学校の講師のような方も見えますので、おそらく授業の様子を写した動画に間違いないかと思われます。
韓国人が病身舞をどのように捉えているかは別としても、確かに病身舞は朝鮮学校で教えられるような伝統的な見舞であることが分かりますね。朝鮮学校ではどこでも教えているのでしょうか?
病身舞の「病身」の意味
この病身舞の病身の意味については、日本語では単純に病にふせっている人を指す言葉ですが、朝鮮では違う意味合いを持つようです。ネットを探ってみたところいくつかの情報を見つけました。病身の意味について出てきた情報は以下の通りです。
1.完治できない身体的障害を持った人
2.霊が入っている体
大まかにはこのような情報が出てきました。1については後述しますが、2については慶尚南道という地域の密陽という場所で行われている仮面をつけて踊る舞踊の中でそのように表現されているようでした。確かに、霊が入っている動きにも見えます。ただし、右翼の影響が大きいのだと思いますが、情報としては先ほど病身舞の説明にもあった様に身体的障害者を表す意味合いが圧倒的に多く存在しました。
病身舞に対する右翼側の意見
さて、まずは右翼側の意見について、ある程度理論的に展開されている意見がありましたので、そちらを少しご紹介したいと思います。ただし、あくまで右翼側からの意見であることを念頭において読むことをおすすめします。
病身舞の「病身」は差別用語?
先ほどの1で出てきたように、病身は韓国では身体障害者を表す言葉として使用されているとの情報がありました。詳しく見てみると、韓国では病身とは障害者を差別する用語として使われているようで、日本と韓国のチャット上でも日本人を病身と呼んでいる人がいたそうです。
韓国では蔑むことを笑いに変える?
韓国では「笑う」ということはイコールで「蔑み笑い」もしくは「嘲り笑い」を指すのだと言います。例えば韓国のバラエティで俳優が、「悪いことをする時は自分は日本人だと名乗る」と発言した動画が一時期話題になったですが、この発言で会場では笑いが起こっていました。これは、日本人が悪いということを笑いに変えているのだといいます。
つまり、韓国人にとっては日本人は絶対に悪い人々で、それを蔑むことで笑いに変えた、という考えのようです。またそれと同様に風刺画でも同じように日本が蔑まれていることが多いのだそうです。
韓国では病身は蔑んで笑う対象?
韓国では「病身」は異形のものであり、自分たちとは違う存在であると認識しているため、「病身」を差別して見世物にするような踊りを見舞って笑いを誘ったとしても、韓国人はそれは特に問題のある行動だと認識されていない、やってはいけない行為だと考えていないのだそうです。
そもそも病身は同じ人間ではないのだから、好きや嫌いなどの感情を持つ相手ではないと韓国人は考えているのだそうです。そのため、1998年のソウルパラリンピックにおいて、手足がない人たちがスポーツをするのが気持ち悪いという視聴者からの抗議が起こり、いくつかの競技が中継の途中で終了してしまったそうです。
韓国人が「病身舞」を止めない理由
韓国では日本の植民地となっていた時代に、日本側から病身舞を舞うのを辞めるように言われ一時期行われていない時期がありました。しかし、日本が敗戦となり、植民地から解放された韓国は、再び病身舞を舞うようになったそうです。
なぜ病身舞を再び舞うようになったのか、それは「病身」が我々と同じ人間ではないという思考を持っているために、差別をしているという罪悪感や意識がないからなのだそうです。
以上が右翼側の意見です。
右翼側の意見にも事実は含まれているが・・・
さて、つらつらと右翼側の意見をかいつまんでご紹介しました。まず始めにお伝えしたいのは、以上の意見は全てデマはありませんが、多分に主観的な目線で印象操作が行われているということです。
例えば、韓国のバラエティでの発言はデマではありません。実際に現在でも検索すればyoutubeなどで見ることができます。
しかし、この動画を調べていくと、一連の流れは、女性アシスタントが「イタリアと韓国がサッカーの試合をして韓国が勝ってしまって、イタリアにいじめられるのが嫌だったから日本人のふりをした」という発言に対して「(じゃああなたは)悪いことをするときは(いつも)日本人という(の?)」というようなニュアンスで話された、という話も出ていました。勿論、実際にこの方がどのような気持ちでこの発言をしたかというのを知ることはできませんが、この話を聞くと、この話がたとえデマでなくとも全く違った見方に変わってこないでしょうか?
ただ、日韓関係のニュースを見ても分かるように韓国人の方の中にも日本人をよく思っていない人が一定数いることも事実であり、病身という差別用語もあるようです。ソウルオリンピックでの抗議もデマではなく実際に起こったことで、韓国では障害者に対する差別が根強く残っているのだそうです。それでは次に韓国側の意見や、日本国内での擁護側の意見を見て、その原因などを探ってみたいと思います。
病身舞は障害者を笑う踊りではない
出典: http://ganref.jp
病身舞について調べてみたところ、いくつか右翼側とは違う意見が出てきました。まず、病身舞の説明にも出てきましたが、そもそも病身は現在韓国で差別用語として使われている病身ではなく、霊が憑依している体を病身と呼んだ、という説です。こちらは日本から発売されている朝鮮文化に関する書物に記載されているようです。元々の病身舞は病身を真似ているのではなく、霊を慰め鎮魂するための舞いだったということのようです。
もう一つは、病身舞の動画元であるyoutubeのコメントで韓国人の方も仰っていたものなのですが、病身舞は時代と共にその意味合いが変化し、李氏朝鮮という朝鮮での最後の王朝時代に特権階級だった両班という人々を、被支配階級だった貧しい人々が皮肉り、バカにするための踊りに変化したのだそうです。また、その後孔玉振(コンオクチン)という女性が一人舞台として病身舞を舞ったことにより、韓国中で知られる芸能になったそうです。
日本政府は戦時中「病身舞」以外の朝鮮文化も禁止した
右翼側では日本政府が差別になるから「病身舞」を禁止し、日本の敗戦後韓国が復活させてしまったとの意見を出していました。もちろんこれもデマではありません。しかし、これについては皆さんも歴史の授業などで習った記憶もあるかと思いますが、そもそも日本は韓国を植民地として支配していた時代には朝鮮文化に関連するものは全て禁止させ、無理やり日本文化を学ばせていました。その中の一つに「病身舞」が入っていた、それだけのことなのです。
韓国側からすれば禁止されていた自分たちの伝統文化を復活させたかっただけなのではないでしょうか?朝鮮学校での授業の動画についても、どのような意図で行われていたかが朝鮮学校側の意見は出てきておらず、勝手に右翼側が批判しているだけなのです。しかし、上のような背景を考えれば純粋に伝統芸能を継承させようという朝鮮学校の授業の一環で行われたと考えることもできるのではないでしょうか?
韓国の地方新聞の記事によれば・・・
最後に韓国の地方新聞で、病身舞で有名な孔玉振(コンオクチン)さんという女性が亡くなったという記事を見つけました。その記事によれば、孔玉振さんは自分の舞を病身舞と呼ばれることを嫌っていたのだそうです。なぜなら孔玉振さん自身の弟も言語障害を持っており、甥も骨格の病気で障害を持って苦しんでいたのだそうです。
その新聞によりますと、2012年に亡くなった孔玉振さんがみんなに愛された舞踊家であることを伝えていました。
この内容を見ると、病身という言葉が差別用語であるという右翼側の意見がデマでないことが読み取れます。
それと同時に、孔玉振さんが身内に障害を持った人がいても病身舞を舞ったことから、現在では病身舞が差別の意味ではない純粋な伝統芸能になっているという考え方もできるのではないでしょうか?
病身舞まとめ
さて、病身舞について様々な意見を紹介させていただきました。もちろん、右翼側の意見もデマではない事実もたくさんあります。擁護側の意見も事実でないものもあるかもしれません。反日感情を抱いている方が一定数いることもデマではなく事実ですし、韓国での障害者に対する差別が強く根付いているのも事実です。因みに、これは儒教の「障害を持っている人は前世で悪い行いをした」という教えの影響が強いからのようでした。
しかし、では日本は障害者に対して全く偏見を持っていないのでしょうか?持っていないのであればなぜ障害者を見世物にするような長時間のチャリティー番組が毎年行われているのでしょうか?他国の文化を貶める前に、自国を見つめ治すことから始めたいものですね。